ライター
桃(Momo) フリーライター

書く人・エッセイスト。アメリカ・イギリスでの短期語学留学、ヨーロッパ鉄道周遊ひとり旅など経て、新卒でベンチャーの旅行会社に就職。現在は複数メディアにてフリーのライター兼編集者。趣味は英語で、映画は洋画を中心に年間150本を鑑賞。渡航国数は23ヶ国。

どうして私はここにいるんだろう?

そんな毎日を過ごしていくうちに、様子が変だということに気づいた。いつまで経っても、だれからも活動の説明がないのだ。

「HIV/AIDS に対する啓蒙活動」「地域でのラジオの活動」「子どもたちの支援」…要請書に書かれていたどの活動も、今のところされている様子はなく、だれかに聞こうとしても、だれがNGO のスタッフなのかもわからなかった。

しばらくの私の日課は、町を散策したり、村への予防接種の巡回についていくこと。その巡回さえ、毎週行くと言われていたのに、何週間も出ないことが普通だった。

お金儲けのためにつくられたNGO

それでも、ひとたび村に行くと、村人たちは予防接種を心待ちにしているんだとわかる。

ここには、1日を1ドル以下で過ごす「貧困」と言われる人たちがたくさんいて、問題も山積み。いったい自分は何ができるのか、何から手をつけていけばいいのか。わからないけれど、時間を持て余している今の状況が歯がゆかった。

 

「協力隊としてここに来ているのに、何もしていない自分。なんで私はここにいるんだろう? いったい何をしているんだろう?」。「退屈は人を殺す」と言うけれど、本当にそのとおり。活動するぞ!と意気込んでいたモチベーションは、みるみるうちにしぼんでいった。

あとで教えてもらったことだが、実はアフリカのNGOでは、先進国に要請書を送るだけ送り、実際は活動していない団体もあるという。要請が通れば、多額のお金が入るからだ。私の派遣されたNGOも、まさしくお金儲けをするためだけにつくられたNGOだった。私はいきなり、「国際協力」の闇にぶつかった。

 

これといって何もすることがないまま 3 カ月が過ぎたころ、NGOや地域開発でアフリカに関わる人が集まる勉強会に参加した。そこで出会ったのは、公立の学校さえも通えない子どもたちのために学校を建てたり、HIV/AIDSの患者さんのケアをしたり、孤児の受け入れをする活動をしている牧師(パスター)さん。

もう一度、自分にできることを思いっきりやってみよう

話し込んでいると「事務所に遊びに来てよ!」と誘われた。行ってみると、事務所というよりは彼の家。金銭的に余裕がないことは一目瞭然だった。聞けば、協会で集めたお金や、自分のポケットマネーを使って活動しているらしい。何もない中でできることをしようとするパスターの熱意に、冷めきっていた心が動かされた。

 

「私、パスターと一緒に活動したい!」。それから、HIV/AIDS の患者さんの家を訪問したり、パスターの建てた小学校で先生をしたりした。学校の校舎は泥でつくられていて、いつ壊れてもおかしくないくらいボロボロ。

給食はトウモロコシの粉をお湯でドロドロに溶かしたものだけ…。超がつく貧乏学校だったけれど、ここで勉強をしている子どもたちは、真っすぐないい顔をしていた。

パスターとの出会いは、ここにいる意味を見出せずにいた毎日に、パッと光が差した瞬間だった。1 人では知りえなかったウガンダの村や人を知ることができ、もう一度、自分にできることを探す原動力とチャンスをもらった気がした。

前に進むために、やめる

たぶん、もうずいぶん前から結論は出ていた。「私は、青年海外協力隊を辞める」。2年間の任期を全うせずに帰ったら「失敗したんだ」とか「途中で投げ出したんだ」と言われるかもしれない。それが怖くて、これまで決断を遅らせていたけれど、もうそんなものは関係ないと思えた。

「日本に帰って、自分ができることを探そう、違う方向に進もう。前に進むためにやめるんだ」。 帰国した私は、すぐにピースボートのスタッフになることを決意した。初めてピースボートに乗ったときから、いつか自分の仕事にしてみたいと思っていた。

 

前までの自分だったら、「私には何も語れる経験がないから…」と弱気になっていたと思う。でも「協力隊を辞めた」ということが「自分の思う方向へ、自分で人生を進めていくしかない!」という活力になった。

悩み尽くして自分で出した答えだから、だれが何と言おうとこの答えを大切にしたいと思った。

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今回ご紹介した山下夏沙さんは、自分から何かを見つけ進んでいくことで、自分の人生は自分で進めるということを学んだそうです。

旅は思わぬ形でこれからの人生を見直す機会をくれるもの。ぜひいろんなことを吸収して素敵な人生にしてくださいね。

 

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桃(Momo) フリーライター

書く人・エッセイスト。アメリカ・イギリスでの短期語学留学、ヨーロッパ鉄道周遊ひとり旅など経て、新卒でベンチャーの旅行会社に就職。現在は複数メディアにてフリーのライター兼編集者。趣味は英語で、映画は洋画を中心に年間150本を鑑賞。渡航国数は23ヶ国。

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