この記事では、四角大輔さんとTABIPPOが一緒に作り上げた話題の新書籍、「The Journey 自分の生き方をつくる原体験の旅」の中から、旅のエピソードを抜粋して紹介していきます。
今回ご紹介するのは、NHKディレクター・倉崎憲さんのエピソードです。
人生を追求する14人の「時代の疾走者たち」による原体験
自分らしい生き方をつくる「手段」として旅がある!「人生」を追求する14人の“時代の疾走者たち”による「原体験」としての「旅」のストーリーをまとめた一冊。「旅に出て人生は変わるのか?」をテーマに、高橋歩、山川咲、西野亮廣、村上萌×著者(四角大輔、TABIPPO)とのスペシャル対談も収録。
「The Journey 自分の生き方をつくる原体験の旅」は「自由であり続けるために20代で捨てるべき50のこと」の著者、四角大輔さんと長い時間をかけて一緒に作り上げた、話題の新刊であり「旅」と「生き方」をつなげる1冊となっています。
旅に出ると視野が広がり、自分がいかに狭い世界で生きていたかを思い知らされる時があると思います。
旅とは何か?自分はこれからの人生をどうやって生きて行きたいのか?この本を読んで今一度自分の心に問い掛ける時間を作ってみてはいかがでしょうか。
ゾクゾクする生き方を見つけた旅|倉崎 憲/NHKディレクター
僕はこれまで「ちゃんと」生きられていなかったんだ
サッカーボールを蹴り上げると、子どもたちがワッと集まってきて、ボールの蹴り合いが始まった。敵も味方もない。ただ、だれかが蹴ったボールを全員で追いかける。無我夢中で走り回っていたとき、「あー、生きてる!」と思った。
心がパーンと開き、幸せな気持ちで満たされていく。何もかも恵まれていたはずの日本の大学生活では得られなかった感覚だった。「僕はこれまで、ちゃんと生きられていなかったんだ」と、その瞬間になって気がついた。
今でも思い出す、大学1年生のあのラオスでの1日。意味のない退屈な大学生活から抜け出すために中学から大学までエスカレーター式で上がった僕の頭を占めていたのは、「いかに大学生活を謳歌するか」。
サークルに4つ入り、毎日違うスポーツをしてはアフターと呼ばれる集まりに行き、アフアフと呼ばれるボーリングやカラオケ、花火や夜景ドライブを楽しみ、女の子ともにゃもにゃしながら過ごしていた。
でも、そんな生活が半年も続くと、ふとしたときに何ともいえないモーレツな虚無感、焦燥感に襲われることが増えていった。
「きっと今の生活のルーティンを続けても、これ以上の感動や楽しさは得られない」。そう気づいてから、溜まっていた鬱憤が小さく爆発した。もうこんな退屈な毎日は嫌だ!ここではないどこかに行きたい!意味のない退屈な大学生活から抜け出すために、僕は旅に出た。
超ハッピーな笑顔と拍手で「コープチャイ!(ありがとう!)」
1年半後、ついに学校が完成した。開校式の日は団体のメンバー30人ほどで現地に行った。小学校に近づくにつれ、村人たちと子どもたちが僕らの両脇を挟み、花道をつくってくれた。
その真ん中を歩いてみんなを見ると、超ハッピーな笑顔。「コープチャイ!(ありがとう!)」。
鳴り止まない拍手の中で、数えきれない人たちが声をかけてくれた。花道を進んでいくと、建ったばかりの小学校が見えてきた。ここで子どもたちが勉強するんだと思うと、鳥肌が立った。
開校式には、小学校に通う子どもたちはもちろん、村人やラオスの教育省関係者も参加していた。はじめに教育省の方から「スピーチを」と満面の笑みで言われ、断るわけにもいかず、マイクを受け取った。
前に出て、ゆっくりとみんなの顔を見た。今まで一緒に学校建設という目標に向かって走ってきた仲間たちが僕を見ている。日本では見せたこともないような、いい顔しやがって。なんだか泣きそうになったけれど、みっともないからなんとか堪えて、たどたどしい日本語でスピーチをした。