ライター

大学卒業後、世界一周の旅に出発し、1年半かけて45カ国を周る。帰国後、株式会社アマナに入社。2016年よりフリーランスとなり、想像もできない風景を多くの人に届けるために世界中の極地、僻地を旅しながら撮影を行なっている。 近年はヒマラヤの8000m峰から水中、南極まで活動範囲を広めており、2021年にはエベレスト(8848m)を登頂した。 受賞歴 2017年 Canon "SHINES" 2017 品川一治選 書籍 2018年 写真集「Ama Dablam」 2022年 写真集「空と大地の間、夢と現の境界線 -Everest- 」 2022年 新書「エベレストの空」 写真展 2019年 キヤノンギャラリー銀座、名古屋、大阪 「Ama Dablam」 2020年 キヤノンギャラリー品川、大阪  「Manaslu」 2022年 代官山蔦屋書店「空と大地の間、夢と現の境界線 -EVEREST-」

こんにちは。写真家の上田優紀です。旅人憧れの場所と言えばウユニ塩湖。ここ数年はメディアでの登場も増えてきて、世界一の絶景とも言われています。いつかは行きたい!なんて思ってる人も多いのではないでしょうか?

そんな素敵なウユニ塩湖に僕、実は4回も行っているのです。3回は旅人として、そして昨年、写真家としてはじめてウユニを訪れました。

今までは旅だったので普通に現地の日帰りツアーに参加していたのですが、その時はお仕事。旅人のみんなと同じようにしてても、見慣れた写真しか撮れません。そこで、頭の中にひとつの悪魔的ひらめきが。

塩湖の中にずっといればいいんじゃない?

ずっと中にいれば、普通ではなかなか撮れないウユニの写真も撮れるはず!そう考えた僕は、塩湖内にテントを張って生活をしながら撮影することを決めました。あんなに辛いなんて考えもせずに…

そこで今回はウユニ塩湖のなかで40日滞在した僕だからこそ気づいた、ウユニ塩湖についてご紹介したいと思います!

過酷!とにかく過酷!!

photo by yukiueda

ウユニ塩湖はとにかく過酷な場所でした。標高は富士山の頂上と同じくらい。夜中はテントが吹き飛んでいきそうな風が常に吹いてます。何回かウユニ塩湖の中を転がる僕のテントを走って追いかけたこともあります。

唯一自然にある水分は、海水の5倍ほどの濃度。地面は塩で覆われてほとんどの動物や植物は生きていけません。もう神様も住んじゃだめ!って言ってるようなものです。

それだけでも過酷なウユニですが、テント生活をしていて、最も辛かったのが日差しでした。植物のないウユニ塩湖の中には当然、影もありません。日中、日射病を避けるためにテントの中に入るのですが、空気がこもって室温は35度を超えています。

そんなテント内に30分もいれば、汗が止まらなくなります。そうすると次は脱水症状になってくるので、風の当たるために外で体を冷やす、しばらくすると日差しが我慢できずにまたテントに入る、また外にでるという行動を何度も繰り返さなくてはいけませんでした。

持っている水分にも限りがあり、いくらでも水が飲めるわけではありません。これが身体的にも精神的にも、さらに追い討ちをかけて状況を悪くしていきました。

1番怖いのは雷

photo by yukiueda
とにかく過酷なウユニ塩湖でのテント生活ですが、1番怖かったものは雷でした。ツアーに参加していても遠くで雷が鳴っている場面に遭遇することはありますが、1ヶ月以上も塩湖の中にいるとその雷がテントの近くに落ちることもあります。

ウユニ塩湖は世界で最も平坦な場所と言われており、考えてみると1番高いものは僕のテントでした。テントに落ちたら無事ではすまないことは間違いなかったので、テントから50mほど離れた場所に三脚を1番高くした状態で立てて、避雷針にすることにしました。

風が強く、何度も倒れるのでそのたびに、立て直しにいくはめに。朝になって、晴れた時には生きててよかったと強く実感できました。

塩はそんなにおいしくない

photo by yukiueda
持っていける食料にも限りがあり、その中で1日に必要な栄養を摂取していかなくてはいけません。少しでも栄養を補給するために、野菜や果物の種や皮までしっかりと食べる徹底ぶり。

ただ、何もないウユニにもたった1つだけ食べ物があります。そう、ここは塩湖。塩は文字の通り山ほど、地平線の向こうまでたっぷりと広がっています。

塩といえばナトリウムやマグネシウム、カリウムなどのミネラルの塊。もはや遭難者となっていた僕が見逃すはずがありません。

健康のためになめていたのですが、そんなに美味しくはありませんでした…なんかちょっとすっぱいし、汚いし、いっぱい食べるのはおすすめしません。胃腸の弱い人はお腹壊しちゃうかもしれません。

さすが奇跡と言われる絶景。なかなか姿を現さない。

photo by yukiueda
今では様々なメディアによって目にすることも多いウユニ塩湖の絶景ですが、あの有名な水鏡が現れるのには多くの条件が重なる必要があります。

まず、塩湖全体に水がたまる程の雨が降ること。それから晴れて風が全くないこと。細かく言うと、ウユニが綺麗に見えるには太陽や雲や月などもっとたくさんの気象的な条件がからむ必要があるのですが、僕がテント生活をした2016年の雨季は最悪な状態でした。

何はともあれ、雨が降らなければ何もはじまりません。なのに、その雨が降らない。雨季にもかかわらず、水不足で村の水道が止まってしまうほどでした。村人に聞いてもこんなのは初めてと話すレベル。

当然、塩湖は乾季のように乾いた世界。僕もテントを張って最初の10日間、1枚もシャッターをきることがありませんでした。僕にできるのはただひたすら待つだけ。

ライター

大学卒業後、世界一周の旅に出発し、1年半かけて45カ国を周る。帰国後、株式会社アマナに入社。2016年よりフリーランスとなり、想像もできない風景を多くの人に届けるために世界中の極地、僻地を旅しながら撮影を行なっている。 近年はヒマラヤの8000m峰から水中、南極まで活動範囲を広めており、2021年にはエベレスト(8848m)を登頂した。 受賞歴 2017年 Canon "SHINES" 2017 品川一治選 書籍 2018年 写真集「Ama Dablam」 2022年 写真集「空と大地の間、夢と現の境界線 -Everest- 」 2022年 新書「エベレストの空」 写真展 2019年 キヤノンギャラリー銀座、名古屋、大阪 「Ama Dablam」 2020年 キヤノンギャラリー品川、大阪  「Manaslu」 2022年 代官山蔦屋書店「空と大地の間、夢と現の境界線 -EVEREST-」

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