アッサラーマアレイコム!これはアラビア語で「こんにちは」という意味です。アラビア語は中東を始めとする国々で広く使われており、イスラム教の聖典コーランで使用されている言語でもあります。
みなさんはイスラム教の国と聞くとどのようなイメージを抱きますか?イスラム教というと女性は髪をスカーフで覆わないといけない、または男性は4人の女性と結婚することができるなど、男女関係に関して様々なルールがあるという印象を持つ方も多いのではないでしょうか。
そんなイスラム教の国を旅行するときは観光客でも決まりに従わないといけないのか、特にカップルで旅行するときは、「手を繋いだりしても捕まらないのか」など少し心配になりますよね。
「郷に入ったら郷に従え」という通り、その国の文化や習慣に従っていれば、思わぬトラブルに巻き込まれることなく楽しく旅ができるはずです。
イスラム教の国でもルールはそれぞれ
photo by Shoko_Jyaiko カタール人の正装。
私は今まで中東諸国に計14年暮らしていて、イスラム教というものをとても身近に感じています。イスラム教は規律正しくより良い生活の規範となる教え説いていて、とても美しい宗教であると思っています。
しかし、イスラム教を主な宗教とする国と言っても、その国によって決まりや戒律の厳しさはそれぞれ。
現在、イスラム教徒は世界中で4人に1人(約25%)いると言われていますが、国や個人の思考によって従うべきルールは様々です。
例えば、サウジアラビアでは女性は外国人でも外出時は髪の毛をスカーフで覆わないといけません。しかしエジプトやレバノンなどでは、外国人はもとよりイスラム教の女性の方でも髪の毛を覆わないという選択ができます。
そのためイスラム教の国を旅行するときは「必ずこうしなくていけない」であるとか「絶対にやってはいけない」などと言い切れるものはありません。
今回の記事では、私が住んでいるカタールや近隣の湾岸諸国について主に書いていきますが、ここで述べることが他の国にも全て当てはまる訳ではないため、「イスラム教の国ではこんな文化や習慣があるところもあるのか」という参考にしていただけたらと思います。
1.露出が多い服装は注目を集めるのでNG!
photo by Shoko_Jyaiko ライトアップが美しいMuseum of Islamic Art。
イスラム教の国が多い中東地域は「暑い」というイメージがありますよね。そんな国を旅行するとなると、タンクトップや短パンなど身軽な洋服を持っていけばいいと思われるかもしれません。私が住んでいるカタールでは真夏は50度近く上がります。
しかし、そんなサウナのような暑さの中でも、膝上丈の短パンやスカートを履いている人は(特に女性では)ほぼ皆無!ダンスクラブやホテルの中以外、ほぼ見たことがありません。
男性であれば真夏に短パンを履いている外国人も見かけます。女性もタンクトップや袖なしのシャツなどを着ている人は見かけます。しかし、足元は膝下丈で出かけた方が安心です。
photo by Shoko_Jyaiko 色々な恰好をした人が集まるSouq Waqifの様子。
警察に捕まることはありませんが、特に女性が肌の露出が多い服装をして外出をしているとものすごく注目を集めることになってしまい、あなた自身が居心地が悪くなってしまうこと間違いありません。
また、ドレスコードがある公共の施設もあります。例えば私が以前カタールの代表的な美術館であるMuseum of Islamic Artにノースリーブのロングワンピースで行った際に、係員の人に「スカーフで肩は隠してください」と注意されました。ホームページにもこんな記載があります。
photo by Shoko_Jyaiko このような恰好だと入場を断ることもあります、と書かれています。
公共ビーチがあるKatara Culture Villageでもビキニで日向ぼっこ……ということはできません。しかし、ホテルの中のビーチやプールではもちろんビキニになることはできるので、行く場所に応じてどのような服装をするべきなのか、判断をすることになります。
photo by Shoko_Jyaiko モスク見学時。
また、外出時に髪の毛をスカーフで隠す必要はありません。しかし、モスクの中を見学する際には髪の毛を覆うように言われます。
真夏のカタールでは、外はサウナのように暑いですが、レストランやモールの中では冷房がガンガンきいていて寒いので、このような理由からもスカーフを1枚持って外出すると安心です。
2.ハグも挨拶まで!長い抱擁はNG!
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日本人同士ではなかなかしませんが、外国人との挨拶といえばハグですよね。ではイスラム教の国では、外国人のカップルが公共の場でハグをしてもいいのでしょうか。
正解は、挨拶程度ならOKです。これも「必ず守らなければいけないルール」という訳ではありませんが、イスラム教の国の文化を尊重するとこのような答えになります。
私が住んでいるカタールでは、カタール人の恋人や夫婦が公共の場でハグや手を繋いだりしているのを見たことはありません。挨拶で男性同士がハグをしているのはよく見かけます。外国人のカップルが手を繋いだり、腕を組んでいるのも街中でたまに見かけます。
しかし、挨拶以外の長い抱擁というのは公共の場では避けた方がいいでしょう。実際に私もカタールのとある公園で、とてもロマンチックな夕焼け時に外国人カップルが肩を抱き寄せ合ってくっついていたのですが、セキュリティの係員に注意されていたのを目にしました。
日本やヨーロッパ諸国等では考えられないことかもしれませんが、この湾岸諸国の国では通常の習慣です。
3. キスはNG!
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ハグについて説明したところでもうお分かりかもしれませんが、キスはもっとNGです!挨拶程度にほっぺに軽くするキスならOKですが、ヨーロッパなどで道端でよく見かける恋人同士の熱ーいキスは、ここカタールや他の湾岸諸国のほとんどでもNGでしょう。
実際に私もここカタールに住んでいて、今まで公共の場でキスをしているカップルは見たことがありません。ここの習慣に慣れてしまった今、ヨーロッパや日本でも恋人たちが外で堂々とキスをしているのを見るとビックリして、なぜか自分が恥ずかしくなってしまいます。
昔はそうも思っていなかったのに、慣れというものは不思議ですね。
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ちなみにここアラブ諸国でよく目にする水タバコ(シーシャ)を男女の間でシェアすることはOKです。
4. 同じホテルに泊ってはいけない場合もあるので要注意!
イスラム教の教えが厳しい国で注意しなくてはいけないことは、未婚のカップルがホテルで同じ部屋に泊ることができない場合もあるということです。中には予約時のホームページに「婚姻証明書の提示を求めることもある」と記載されているホテルもあります。
しかし、実際ふたを開けてみるとそこまで厳しくないようで、私の友人カップルがカタールに来た際には何事もなく同じ部屋にチェックインできていました。これもホテルによってケースバイケースのようですね。
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ちなみに少し話がそれてしまいますが、カタールでは「未婚の母」という概念はありません。外国人でも未婚の状態で妊娠が分かった際は、「即カタールから出国させられる」「牢屋にいれられる」なんて噂も耳にしたことがあります。
5. 外でお酒は飲めない!
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私が以前住んでいたエジプトでは、普通のレストランでもお酒を提供するところは多々ありました。しかしカタールでは「お酒を提供してもよい」というライセンスを持った外資系のホテルでしかお酒を飲むことができません。
「カタールに住んでいる人はスーパーなどでお酒を買うことはできないのか」と疑問に思いますよね。答えはNOです。普通のスーパーにはお酒は置いていません。
国内に1軒だけ酒屋さんがあるのですが、ここでも誰でもお酒を買うことができる訳ではなく、駐在外国人でお酒の購入許可証を持った人しか買い物をすることはできません。また、お給料によって1人につきいくらまでという購入制限もあります。
つまり、カタールでお酒を飲むことができる場所は、外資系のホテル、もしくは購入許可証を持っている人の家の中だけということになります。外で飲んでいたら警察に捕まるので注意しましょう。
日本のように、電車や道端でお酒を飲む……なんて光景はここでは有り得ないのです。
郷に入っては郷に従え
photo by Shoko_Jyaiko
ここまで読む「とカタールやイスラム教の国は厳しくてなんて住みにくい場所なんだ」と思う方もいるかもしれません。しかし、実際に住んでいて特に煩わしいと思うことはありません。これらの習わしは周囲の人を気遣い、皆が気持ちよく暮らしてくための規範なんだと思うようになりました。
カタールには皆それぞれ異なった宗教や文化を持ち合わせている外国人がたくさん生活しています。そのような人々が自分勝手に行動や生活をしていたら、きっと国の中がめちゃくちゃになってしまいますよね。
photo by Shoko_Jyaiko
例えば、日本に置き換えると、電車に乗る時には降りる人が先で、乗る人は後から乗るという暗黙のルールがあります。この暗黙のルールを知らない外国人が、降りる人より先に電車に乗ろうとしたら、周りの日本人は皆不快な思いをしますよね。
このように、カタールでも他の国でもそれぞれ習慣があり、それを「尊重」していくことが、現地の人やそこに住む人を不快にさせず、旅行をしているあなた自身も不快な思いをせずに過ごすことができる鍵となるのでしょう。
旅先の宗教や文化、習慣を「尊重」する。このことを頭に入れておきながら、気分良く、そして楽しく旅に出かけましょう!