ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリなど。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

旅行業界が大きく転換期を迎えている昨今。これまでの消費的な旅ではなく、むしろ再生産していく旅のカタチに目が向けられています。

例えば、ワーケーションやステイケーション、マイクロツーリズムなどがその具体例です。今回私は、奈良県吉野町と株式会社Huber.が手がける「遊ぶ広報」というプロジェクトに参加し、2泊3日で吉野を満喫してきました。

桜が有名すぎる吉野で、あえて閑散期の初夏に訪れてみたところ、充実感でいっぱい。吉野の新たな表情も垣間見ることができました。

また地の魅力だけでなく、”人”の魅力もたっぷりと味わうことができたので、振り返りながらレポートしてみたいと思います!

コロナ禍に適応!「遊ぶ広報」プロジェクトとは?

photo by Ran Tonosho
昨今、奈良県の各自治体と連携しながら、旅行事業を手がけてきた「株式会社Huber.」。その内容は、訪日外国人向けガイドで得た知見を、自治体にフィードバックしつつ、受け入れ環境の整備や観光PRを強化する、というものでした。

photo by Yuhei Tonosho
しかしコロナ禍を経て、訪日外国人がまったくいなくなってしまいます。そこで、今回紹介するリモートワーカー向けの「遊ぶ広報」プログラムへと舵を切ることになったのです。

「遊ぶ広報」プログラムとは、地域で数日間過ごしながら、その内容をSNSに投稿。プロジェクト終了後にアンケートに答えれば、滞在の補助が得られるというもの。

既に奈良県では、今回参加をした吉野町のほか、十津川村や下北山村で行われており、奥大和地域で広域連携が進んでいます。※現在、すべての地域で受付は終了しています。

吉野で過ごした一日のタイムテーブルをご紹介

今回は2泊3日で吉野を訪れたのですが、その2日目に株式会社Huber.の社員さんに、吉野をアテンドしていただきました!とても特徴的な一日だったので、タイムテーブル形式でご紹介したいと思います。

6:30 / 金峯山寺で勤行体験

photo by Yuhei Tonosho

窓に差し込む日の光で目を覚ましたら、宿から徒歩10分の「金峯山寺(きんぷせんじ)」で約40分の勤行体験。

信仰と自然が融和する、修験道の聖地ならではの内省のひとときを過ごしました。世界遺産を独り占めできる機会は、なかなかないのではないでしょうか?

7:30 / 花矢倉展望台から雲海鑑賞

photo by Ran Tonosho

勤行後は車で吉野を一望できる「花矢倉展望台」へ。桜の頃は賑わうこの場所も、初夏はとても静寂。前日の雨の影響で、眼下には幻想的な雲海が広がっていました!

緑に抱かれるような清々しさと、ふっと肩の荷が下りる癒やしの時間は、心に潤いをもたらしてくれます。

10:00 /吉野山のお店巡り

photo by Yuhei Tonosho

宿でゆったりと過ごしたら、株式会社Huber.のお二人(原崎さん・品川さん)に吉野を案内していただきます。まずは吉野山のお店巡りから。

少しシャイな吉野の方々ですが、アテンドを通じて一気に壁がなくなりました!人が魅力の吉野を早速楽しみます。

photo by Yuhei Tonosho

吉野山には柿の葉寿司のお店がたくさん。柿の葉寿司とは、鯖や鮭の押し寿司を柿の葉で包んだものです。お店によって少しずつ特徴があり、好みが分かれるのだとか!

私は少し塩っ気があるものが好きです。購入してから1日ほど寝かせるとおいしいという情報も、お店の人とのコミュニケーションならでは。

11:00 / 吉野杉の家

photo by Yuhei Tonosho

2016年に建設が行われ、東京で開催されたHOUSE VISION2016東京展にてお披露目された「吉野杉の家」。現在は、吉野町とAirbnbの共同運営で、宿泊施設として一般利用されています。

吉野川のほとりの、自然と暮らしの近さが垣間見えるロケーションも素敵でした。

11:30 / 津風呂湖でシーカヤック見学・散策

photo by Ran Tonosho

初夏の吉野でお勧めしたい場所とおっしゃっていた、「津風呂湖」へ。昔バイクのツーリングで来たことはあったものの、ここまで緑が美しい場所だとは思いませんでした。

当日は、子供達がシーカヤックの活動中!カヤックのボートや道具についても丁寧に説明していただきました。なんと来年、世界大会が開催されるのだとか。

photo by Ran Tonosho

中でもお気に入りになった場所が「みかえり橋」。湖の中央近くにある全長約150メートルの大きな吊り橋で、歩いて渡ることができます。

津風呂湖は巨大なバスが釣れることでも有名で、ボートに乗る釣り人の姿と、水面に映り込む美しい新緑の景色を楽しみました。

13:00 / 古民家カフェ「くにす食堂」でランチ

photo by Yuhei Tonosho

ランチは金土日に開かれる「くにす食堂」へ。地域おこし協力隊だった方が、地域のお母さんたちと一緒に運営しています。地元のありのままを、地元の人の手で協力しながら提供する、何ともほっこりするお店です。

年季の入った古民家はとっても風情ある面持ち。個人的には、古民家に添えられるコンクリート塀や自転車がたまりません!

photo by Yuhei Tonosho

日替わりランチは、地元のお米や野菜をふんだんに使った家庭料理です。どこか実家に帰って来たような安堵感を感じつつ、優しい味付けの料理を堪能。お腹も心も満たされました。

デザートの自家製チーズケーキやプリンも絶品!食後のコーヒーを飲みながら、ゆったりと談笑に耽ります。本当に落ち着く空間です。

13:45 / 梅谷醸造元・宮瀧醤油

photo by Yuhei Tonosho

豊かな自然をバックグラウンドに、さまざまな産業が盛んなのも吉野の特徴です。”宮瀧醤油”で親しまれる「梅谷醸造元」もその一つ。

私たちが訪れた日にも、たくさんのお客さんが名物のポン酢醤油を求めて出入りしていました。おっとりとしたお父さんの雰囲気にも和みます。

14:30 / 櫻木神社

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吉野はさまざまな歴史が層となっているのも特徴です。よく知られているのは、後醍醐天皇や西行、豊臣秀吉といった人物ですが、この櫻木神社には、飛鳥時代に壬申の乱で勝利した大海人皇子(のちの天武天皇)が祀られています。

かつて皇子が潜幸したというひっそりとした雰囲気をそのままに、境内には見上げるほどの杉の巨樹。象の小川の清らかな流れも印象的です。

15:00 / 高滝ハイキング

photo by Yuhei Tonosho

櫻木神社からもっと山奥に。道の終点から徒歩10分ほど進むと「高滝」に到着します。高さ15メートルとやや小振りながら、滝の下流には苔むした岩々が転がり、どこかジブリのような世界観!

その一方で、周囲の森と一体になり、絶え間なく水が流れていく、生命と循環を感じさせるそのたたずまい。修験道が根付く吉野ならではの雰囲気ともよく合致している場所です。

16:00 / 吉野山で夕ごはんのお買い物

photo by Yuhei Tonosho

宿に戻る前に、吉野山で夕ごはんの調達。朝に顔つなぎをしてもらえたため、お店の人とのコミュニケーションを楽しみながら、充実したお買い物となりました!

職人気質の柿の葉すし「たつみ」、朗らかな老夫婦が営む「青木酒店」、ざる豆腐が絶品だという「林とうふ店」などなど。

18:00 / 宿のお部屋で夕ごはん

photo by Ran Tonosho

そして宿に帰って来たら、購入したご飯やおつまみを日本酒と一緒に。質素な雰囲気ですが、食べ進めてみると、とっても豪華!豆腐ってこんなに甘かったっけ?

また他のお客さんやゲストハウスのオーナーさんからおすそ分けもいただき、夜までワイワイと賑やかなひと時を過ごしました。

ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリなど。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

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