日本国内で、距離にして735キロメートル、25時間の船旅ができる航路をご存じでしょうか。鹿児島と沖縄をつなぐ、奄美大島をはじめとする奄美群島を経由する航路です。
奄美の島々はそれぞれ違った魅力を持っており、アイランドホッピングを楽しむのに最適です。沖縄とも鹿児島とも違う奄美の魅力を船で満喫する旅計画を立ててみてはいかがでしょうか。
今回は、その航路で実際に奄美群島の船旅をした筆者が、島々の魅力と共に、船旅のメリットやデメリットもご紹介します。
奄美群島を南北につなぐ航路を有効利用
photo by Daiki Okamoto
奄美大島や与論島など、主に8つの有人島から成る奄美群島。今回ご紹介するのは、そんな奄美群島を船で巡る旅の形です。
奄美群島には、奄美大島(あまみおおしま)・徳之島(とくのしま)・沖永良部島(おきのえらぶじま)・与論島(よろんじま)の4つの島に立ち寄りながら、丸一日をかけて鹿児島港と那覇港をつなぐ航路があり、北向きと南向き、それぞれの港から毎日船が出ています。
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その航路を利用すれば、奄美群島でのアイランドホッピングもできます。とはいえ、一日一便しか動いていないため、基本的に、船を降りる=その島に泊まる、となることは覚えておきましょう。
なお、この航路で船を運航しているのは、「マルエーフェリー」と「マリックスライン」の2社があります。毎日どちらかの船が運航していますが、サイトは分かれているので、情報収集の際には混乱しないよう注意してくださいね。
個性溢れる奄美群島の島々
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まずは、奄美群島の島々の見どころをチェック。同じエリア内の島とはいえ、大きさも違えば、それぞれ独自の文化があって、異なった魅力を持っています。アイランドホッピングをすると、その違いを発見できるでしょう。
世界自然遺産に登録間近の「奄美大島」
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奄美群島最大の島、奄美大島。群島内で最も大きいだけでなく、日本全国で見ても、観光できる離島としては、沖縄本島と佐渡島に次いで3番目の大きさを誇ります。
起伏に富み、半島のように突き出る陸地が多い入り組んだ地形で、海の美しさだけでなく、雄大なマングローブ原生林や動物の多様性など幅広い自然を楽しめる島です。
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その生物多様性は、世界遺産の登録基準をクリアしていると認められ、2021年7月には正式に世界自然遺産に登録される見通し。今後、その注目度もどんどん上がっていくことでしょう。
また、この地の文化を楽しめるスポットも豊富。大島紬などの伝統工芸や、奄美の自然を愛した日本画家「田中一村」の美術館など、広い島のあちらこちらに見どころが点在しています。
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島の南には加計呂麻島(かけろまじま)・請島(うけじま)・与路島(よろじま)、東には喜界島(きかいじま)があり、奄美大島を拠点にして他の島に行くことも可能です。
特に加計呂麻島は、島の南部にある古仁屋(こにや)港から約20分、360円で渡ることができるので、多くの観光客が訪れる人気の島となっています。
バラエティ豊かな自然が揃う「徳之島」
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徳之島も奄美大島同様、生物多様性の点から注目されている島で、世界自然遺産に登録される予定です。闘牛文化が長く続いている土地でもあります。
ただ、徳之島では、バラエティ豊かな自然美にもご注目。海側には断崖絶壁、内陸部には樹齢300年を超えるガジュマルの巨木など、見どころに溢れています。奄美大島に比べれば半分もない面積の徳之島ですが、ドライブしながらさまざまな絶景を楽しめますよ。
鍾乳洞とクジラが人気の「沖永良部島」
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沖永良部島は、島内に200〜300もの洞窟や鍾乳洞がある、「洞窟の聖地」とも呼ばれる島です。鍾乳洞の中をガイド付きで楽しむ、ケイビングなどのアクティビティが人気となっています。
地底探検は、日常では触れられない発見の連続で、冒険心を満たしてくれること間違いなし。
沖永良部島では他にも、海のアクティビティとしてホエールウォッチングが人気です。奄美大島などでもクジラが見られることはありますが、特に沖永良部島ではホエールウォッチングが盛んに行われています。
映画のロケ地としても有名な「与論島」
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最も沖縄側にあるのが、与論島です。奄美大島と同じくらい高い人気を誇る与論島は、美しい海を堪能するのに最適な島。
映画『めがね』のロケ地としても登場した「トゥマイビーチ」や、島の繁華街から歩いて行ける「ウドノスビーチ」など、どこをとっても青の絶景を楽しめます。
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さらに、島の東側に位置している「大金久(おおがねく)海岸」の沖合には、潮の満ち引きで現れる神秘的なビーチがあります。「百合が浜」と呼ばれ、出会えるチャンスは月に数日のみ。しかも、現れたとしても、数時間経てば消えてしまうのです。
百合が浜が現れるスケジュールに合わせて島を訪れる人もいるほど。とても人気の場所なので、訪問の際には見られるチャンスがあるか、チェックしておきましょう。
船旅のメリット・デメリット
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実は先日、筆者はこの航路で実際にアイランドホッピングをしてきました。那覇港を出発し、それぞれの島で宿泊、最後には奄美大島から加計呂麻島に渡って1泊。延べ10泊の旅程となりました。
そんな船旅をしてみて感じたメリットとデメリットを、最後にご紹介します。まずはメリットから。
とにかく安い!でも、それだけじゃない
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やはり船旅だと移動の料金を安く抑えられるのが大きな魅力。2021年5月現在は「奄美・沖縄交流割引」や「奄美群島間割引」が適用され、那覇港から与論港は(通常は4290円のところ)2870円でした。
群島の中でも最も安く、与論港ー和泊港(沖永良部島)に至っては670円と、電車に乗って出かけるくらいの感覚で気軽に船旅を楽しむことができました。
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奄美大島へはLCCが就航しているので、タイミングによってはかなり安いチケットが手に入りますが、他の島はなかなかそうはいきません。
そのため、直接行くより奄美大島や那覇を経由して船を利用する方が、旅全体の移動費自体は安く済ませられる可能性が高いと言えます。
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他にも、船ならではの魅力といえば、港での「お見送り」です。船から紙のカラーテープをのばし、それぞれの端を持って別れを惜しむ、というシーンを映画などで見たことがある方も多いことでしょう。奄美群島では、あの慣習が今も残っています。
また「観光客を迎える」「旅立つ人を見送る」など、いろいろな人が集まってくるため、船の着岸・出港時はかなり港が賑わいます。
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筆者が船旅をしていたタイミングが、ちょうど春の旅立ちの時期と重なっていたこともあり、そんな場面に何度も遭遇しました。自分のことではないものの、見ているだけで胸が熱くなる瞬間が多く、船旅ならではの良い経験ができたと思います。
常に見られる光景とはいえないでしょうが、港は多くのドラマが生まれる場所。出会えたときには、邪魔をしない程度に注目してみてくださいね。
時間がかかることはデメリット?
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船旅のデメリットとして挙げられるのは、移動にかかる時間の長さです。移動自体に時間をあまりかけたくない方には、あまりおすすめできません。
例えば、那覇から与論島までは船だと約5時間、飛行機だと40分です。少しでも現地で時間を使いたいなら、飛行機の方がいいでしょう。
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といっても、時間がかかることは考え方によってはメリットにもなり得ます。もちろん時間に余裕がある場合ですが、じっくりと旅情を楽しむという点においては船の方に軍配が上がります。
島に着く前には少しずつ高揚した期待感を、遠くなっていく島を船から見るときにはその余韻を。このような気持ちを感じやすいのは、船でのゆっくりとした移動ならではといえるのではないでしょうか。
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ただ、船旅は天候によって過酷になります。慣れていない人からすると、揺れる船は大変な苦痛になり得ます。
最悪の場合は、強風などで船が止まり、予定を変更せざるを得ないということもあるので、やはり少し時間に余裕がある方に適した移動方法といえるかもしませんね。
奄美群島でアイランドホッピングを
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船旅、飛行機での旅、もちろんそのどちらにも魅力があり、選ぶのは自分次第です。ただ、船という選択肢があることを知っておけば、旅はより豊かになるでしょう。
いい旅ができた筆者としては、奄美群島での船でのアイランドホッピングは多くの人におすすめしたいスタイルです。ただし、全員にとってベストな方法ではないかもしれません。
ぜひ、今回の記事を参考に、奄美群島での旅をカスタマイズしてみてくださいね。