こんにちは、絶景ハンターのまゆみです。
伊豆半島沖合、東京から約180km離れた洋上に浮かぶ「神津島(こうづしま)」。
いにしえから「神集う島」として神話が宿るこの島は、かつて日本一に選ばれた最高の海を有し、個性的な山と植生で「新日本の百名山」「花の百名山」に数えられるだけでなく、さらに近年では「星空保護区」というお墨付きまで受けている、魅力あふれる東京の離島です。
今回は、登山好きの間でファンの多い山、神津島の「天上山」でのトレッキングをご紹介します。春秋にシーズンを迎え、日帰り登山も可能ですよ!
見出し
「神集う島 神津島」とは
Photo by 神津島観光協会
伊豆半島沖合、下田から南へ約55キロメートル、都内からは南西へ約180キロメートル離れた洋上に浮かぶ伊豆諸島の島「神津島(こうづしま)」。
島の面積約19平方キロメートル、およそ1,900人が暮らすこの島は、どちらかというと下田に近いですが、れっきとした「品川ナンバー」の東京都内です。
神代の昔、神々が集い伊豆諸島を作るための会合を開いたと伝わる神津島。それが由来で、元は「神集島」と書かれていたそうです。
そんな神集う島にふさわしく、かつて日本一にも選ばれたとびきり美しい海と白い砂浜、離島離れした個性的な山容、豊富な地下水など、自然の魅力が詰まった島となっています。
Photo by 神津島観光協会
忘れてならないのは、2020年12月、神津島に新たに加わった「星空保護区」、つまり「ダークスカイ・アイランド」という称号です。
星空保護区とは、光害(ひかりがい=過剰な照明がもたらすさまざまな悪影響)のない暗く自然な夜空と、それを保存・保護する活動も含めて、米国に本部を置くNPO団体国際ダークスカイ協会(IDA)が定めた厳しい基準をクリアした地域・団体のこと。
国内では西表石垣国立公園に次ぐ2例目となり、国際的なお墨付きをもらった神津島の夜空は、環境省が「全国一」に選んだ長野県阿智村の星空にも匹敵するほど。
陸・海・空の魅力がコンパクトに詰まった神津島。離島とはいえ、東京都内でこれだけ豊かな自然が楽しめるなんて驚きですよね。
いざ神話の山へ!天上山トレッキング
それでは、はじめに天上山(てんじょうざん)の概要についておさえておきましょう。
「天上山」とは
Photo by Mayumi
神津島へ船が近づくにつれ、圧倒的な姿で迫ってくるテーブルマウンテンのような台形状の山が「天上山」です。この山こそが、神々が集ったとされる神話の舞台です。
島のほぼ中央に位置する天上山は、標高572mと低山ながら、一年を通じて高山植物の花ごよみが楽しめ、日本アルプスのような離島離れした美しい稜線が広がることから、「花の百名山」と「新日本の百名山」に数えられます。
その一方で、月砂漠のような荒涼とした別世界が広がるのも魅力。実にユニークな山歩きが楽しめます。
「天上山トレッキング」のコース概要
Photo by Mayumi
天上山への入口は2つ、「黒島登山口」と「白島登山口」があります。いずれも集落から徒歩30~35分圏内にありますが、黒島登山口からスタートする登山客が多いようです。
2つのルートにはそれぞれに特徴があります。
まず黒島登山道は、港の集落や前浜海岸を背に、ダイナミックな絶景パノラマを堪能しながら登るルート。前半は比較的よく整備された階段を登り、6合目以降はやや骨の折れる岩場が続きます。
一方、白島登山道は、鬱蒼と生い茂る南国風情の樹林帯を歩きます。8合目(標高438m)付近からようやく視界がひらけ、島らしい海と山のすばらしい眺望がのぞめるルートです。
Photo by Mayumi
集落~黒島登山道~山頂周遊~白島登山道で下山する定番コースは、おおむね3時間半~5時間程度の所要時間です(休憩時間にもよります)。
体力に不安のある方や時間を節約したい方は、林道が白島登山道6合目まで通じているため、車でのショートカットも可能です。
山頂付近は海からの強風が吹き上げ、ガレ場(岩場)も多く足元が悪いため、トレッキングシューズあるいは履き慣れた運動靴を選ぶのがおすすめです。
天上山トレッキングの見どころ
コンパクトながらも起伏に富み、さまざまな魅力が詰まった天上山トレッキング。その主な見どころをご紹介します。
洋上のアルプスを想起させる美しい山容と海の絶景
Photo by Mayumi
標高600mにも満たない低山ながら、その景観は洋上のアルプスさながら。緩やかに伸びる山々の稜線、えぐれるように切り立った断崖絶壁、およそ小さな島とは思えない変化に富んだ山容で「新日本の百名山」に選ばれたのもうなずけます。
Photo by Mayumi
「新東京百景」にも選ばれた展望地からは伊豆諸島のほぼ全島が、絶景ポイントの「天空の丘」では360度大パノラマに加え、冬の晴れた日には富士山や南アルプスまで見渡せます。
なお、山頂付近はガスが発生しやすいので、最高の眺望が見られるかどうかは運次第です!
まるで異世界!?山頂に広がる月の砂漠
Photo by PIXTA
天上山最大の見どころは、山頂部に広がる2つの砂漠地帯。「表砂漠」と「裏砂漠」と呼ばれており、写真は南側に位置する「裏砂漠」です。
天上山は、平安時代に発生した大噴火が要因で生まれた溶岩ドームと火砕丘から成り立ちます。これらの砂漠は、大噴火の際に噴出した軽石などが長い年月をかけて風化し堆積したものと考えられています。
荒涼かつ殺伐とした光景は、まさにこの世のものとは思えない「月の砂漠」のようです。
Photo by Mayumi
こちらは表砂漠(写真中央部)。裏砂漠よりも規模が小さく、白砂の砂漠や風化した奇岩がゴロゴロ転がっています。
四季折々の高山植物が楽しめる「花の百名山」
Photo by 神津島観光協会
独特の地形と気候風土の影響で、頂上台地に一年を通じて多種多様な高山植物を咲かせる天上山。
神津島の固有種であるコウヅシマヤマツツジ(4~6月)をはじめ、伊豆諸島の固有種からキキョウ、リンドウまで、神津島に自生する花はその数480種にのぼるといわれています。
特にオオシマツツジが見頃を迎える5月中旬以降は、荒涼とした砂漠に鮮やかなピンクがよく映えて、実にフォトジェニックです。
※天上山一帯は富士箱根伊豆国立公園内に位置し、特別保護区及び特別地域に指定されています。動植物の採集は一切禁止となっていますので、ご注意ください。
恋愛のパワースポット!ハート型の「不動池」
Photo by Mayumi
山頂部に点在する噴火口跡らしき窪地。そこに雨水が溜まり、いくつかの大小の池が形成されています。その最大のものが、山頂北東部に位置する「不動池」です。
雨が降らないと枯池となってしまう不動池の入口には、丈の低い鳥居と龍神が祀られた中洲の小島、そして周辺には不動尊も祀られています。
Photo by 神津島観光協会
この不動池、実は雨が降って池に水が張るとハート型の池が出現するという驚きのスポット。いつしか恋愛のパワースポットとして話題を集めました。
もし、ハートの不動池に運良く出会えたら、ぜひ龍神様へ恋愛祈願してみてくださいね。
山の上で神様が集う「不入が沢」
Photo by Mayumi
白島下山口の前に広がる窪地の名前は「不入が沢」。「不入」と書いて「はいらない」と読み、「はいらないがさわ」と呼ばれています。
一見何の変哲もない窪地ですが、実はここ、かつて伊豆七島の神々が集い、各島にどのように水を分配するかを話し合ったという神話の舞台。神聖な場所として「この沢に人、入るべからず」と古くから言い伝えられていることからこの名がついたそうです。
うっかり足を踏み入れないように気をつけましょう。
トレッキングのお供に島名物おにぎりを!
お昼に何を食べるかは登山の醍醐味の一つ。おいしく、手軽に持ち運べて、お腹にたまるおにぎりを選ぶ方も多いでしょう。
Photo by Mayumi
登山のお供としてぜひおすすめしたいのは、神津島名物「しょうゆ飯おにぎり」。文字通り、しょうゆや海苔を一緒に炊き込んだごはんのおにぎりで、もう一つは風味豊かな岩海苔に包まれたわかめごはんのおにぎりです。
神津島のおかずの定番といわれるかわはぎの干物とたくわん、卵焼きが添えられたお弁当セットは集落の商店で購入可能です。
コースの各ポイントにはベンチやテーブルが設置されています。ぜひ、絶景をおかずに、食欲をそそる香ばしいしょう油と磯の香りでほっこり疲れを癒やしましょう。
神津島探勝ウォーキングで神津島を遊び尽くそう!
Photo by Mayumi
天上山トレッキングのほか、神津島には、3つのハイキングコースと3つの遊歩道コースが用意されています(詳細は、神津島村役場の観光ページをご参照ください)。
起伏に富んだ地形と多彩な景観、神話や歴史に紐づいたさまざまな名所を組み合わせた、充実の探勝ウォーキングコースとなっています。もちろん、島民ガイドつきのエコツアーやお散歩ツアーなども用意されています。
陸・海・空、すべてにおいて魅力にあふれた神津島。はるばる神津島まで訪れたなら、ぜひ心ゆくまで島を遊び尽くしましょう。
・名称:神津島
・住所:東京都 神津島村
・地図:
・アクセス:東京竹芝桟橋から高速ジェット船で約3時間45分、大型夜行客船で約12時間、熱海港から高速ジェット船で約1時間55分、下田港から神新汽船で最短2時間20分、飛行機の場合、調布飛行場から約40分
・電話番号:04992-8-0321(神津島観光協会直通)
・公式サイトURL:https://kozushima.com/