日本国民を悩ませる「物価高騰」。食費だけでなく航空券代やガソリン代など、さまざまな分野で物価高の影響が出ています。
鉄道業界も例外ではありません。伊勢志摩観光や名阪間の旅行で役に立つ「近鉄」も2023年4月1日から値上げします。
本記事では「伊勢志摩観光や名阪間の旅行で交通費アップを回避する方法」を解説していきます。
平均17%値上げ!名阪間、伊勢志摩観光に影響
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近畿日本鉄道、通称「近鉄」は1995年以来、消費税率の引き上げを除き運賃の値上げは行っていませんでした。しかしバリアフリー化の推進や新型車両の製造、コロナ禍における利用客の減少などにより、現状の運賃では厳しくなりました。
そこで、2023年4月1日から鋼索線を除く全路線で運賃の値上げに踏み切ります。改定率(値上げ率)は平均17%に。一方、特急の乗車に必要になる特急料金や観光特急「あをによし」などに適用される特別車両料金は変わりません。
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例えば近距離の場合、大阪難波駅から近鉄奈良駅までは570円から680円にアップします。
遠距離であれば、大阪難波駅から近鉄名古屋駅までは2,410円から2,860円に、大阪難波駅から賢島駅までは2,350円から2,770円に、近鉄名古屋駅から鳥羽駅までは1,750円から2,070円になります。なお運賃には志摩線・鳥羽線の加算運賃も含んでいます。
特急に乗車する際には上記の運賃に特急料金が加算されます。名阪間では往復900円の値上げになります。この運賃値上げは旅行に大きく影響することでしょう。
JR、バスは近鉄の代わりになるのか
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JRや高速バスと比較してみましょう。名阪間で活躍する「ひのとり」の大阪難波~近鉄名古屋間は2023年4月1日から5,690円(プレミアムシート)、4,990円(レギュラーシート)になります。
JR東海ツアーズが販売する旅行商品「ぷらっとこだま」では、新大阪~名古屋間は4,600円(普通車指定席)です。大阪メトロ難波~新大阪間は280円ですから、合計4,880円となり、わずかながら難波~名古屋間は大阪メトロ・東海道新幹線経由の方が安くなります。
高速バスの場合、名阪近鉄バスで大阪駅~名古屋駅間は3,100円です。一方、所要時間は近鉄特急が約2時間であるのに対し、高速バスだと約3時間を要します。
近鉄名古屋~鳥羽間の特急に乗ると、2023年4月1日からの運賃は3,410円になります。JRでは名古屋から鳥羽方面への特急列車は運行していませんが、特急料金不要の快速列車「みえ」を運行しています。快速「みえ」は2,500円。所要時間は近鉄特急が約1時間40分、快速「みえ」は約2時間です。
有効に使いたい近鉄の「お得なきっぷ」
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このように運賃が値上げになるときだからこそ、よりいっそう「お得なきっぷ」を有効活用したいものです。伊勢志摩方面の旅行なら絶対に「まわりゃんせ」がおすすめです。
「まわりゃんせ」は有効期間4日間の伊勢・鳥羽・志摩のスーパーパスポート。まず松阪~賢島間が乗り降り自由な「フリー区間」となります。次に出発駅~フリー区間までの乗車券・特急券がつくので、いちいち乗車券を購入する必要がないのもメリットです。
さらに志摩スペイン村をはじめとする23の観光施設が入館可能に。伊勢・鳥羽・志摩地域の公共交通機関も利用できます。
価格は特急券ありが10,200円、特急券なしが7,800円です。どの駅から出発しても値段は変わりません(観光特急「しまかぜ」に乗車する際は特別車両券が必要です)。
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名阪間を頻繁に移動する方は「名阪ビジネス回数きっぷ」がおすすめ。これは大阪難波・近鉄日本橋・大阪上本町・鶴橋~近鉄名古屋間の乗車券14枚つづりのセットで、2万4,100円(3月31日まで)で購入できます。1枚あたり約1,730円となり、現行価格の約30%割引になる計算です。
「名阪ビジネス回数きっぷ」は乗車券のみですので、特急に乗車するには別に特急券、「ひのとり」に乗車するには乗車券・特急券に加えて特別車両料金が必要です。
このように、近鉄では観光に便利な数々の「お得なきっぷ」を用意しています。また金券ショップで近鉄の株主優待券を購入する方も多いようです。
ただ全体的に紙の回数券は衰退傾向にあり、鉄道会社はデジタルを使った「お得なきっぷ」の販売にシフトしています。完全にデジタル化されると、金券ショップの役割もなくなることでしょう。
今後の「お得なきっぷ」に関する情報をゲットするためにも、名阪間の移動や伊勢志摩旅行の際は近鉄ホームページをチェックすることをおすすめします。
「近鉄」を使ったモデルコースはこれ!
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ここでは近鉄が販売する割引切符「近鉄週末フリーきっぷ」(1人4,200円)を使ったモデルコースを考えます。このきっぷを使うと、3日間近鉄全線が乗り放題になりますが、特急券や特別車両券は別途必要です。
首都圏からの場合、東海道新幹線で京都駅から近鉄京都線に乗り換えるのが便利。ここで2022年4月に登場した観光特急「あをによし」に乗り、奈良を目指します。
「あをによし」はグループ旅行に最適。2人掛けのツインシートは特注の椅子が用意され、眺望もよく快適な列車旅が楽しめます。所要時間は約35分です。
近鉄奈良駅から鹿が名物の奈良公園はすぐそこ。奈良町や奈良国立博物館にも近く、すぐに奈良観光が楽しめます。そのまま1日目は奈良に泊まりましょう。
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2日目は伊勢・志摩に行ってみましょう。近鉄奈良駅から2駅先の大和西大寺駅まで行き、大和西大寺駅から鳥羽まで特急「しまかぜ」に乗車します。「しまかぜ」のプレミアムシートは電動リクライニングシートなので、JRのグリーン車よりも快適です。
大和西大寺駅から鳥羽駅までは約1時間40分。鳥羽ではジュゴンがいる鳥羽水族館やミキモト真珠島があります。また伊勢神宮・外宮に参拝したい場合は伊勢市駅下車が便利です。
2日目は伊勢・志摩に泊まり、3日目の午前中は志摩スペイン村で遊びましょう。志摩スペイン村の最寄駅は鵜方駅で、同駅から連絡バスが運行されています。最近では人気Vtuberが志摩スペイン村の魅力を紹介しているので、事前に予習がてら見るのもいいかもしれません。
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近鉄の魅力は伊勢・志摩から乗り換え1回で東京に帰れること。鵜方駅から近鉄名古屋駅まで特急で約2時間です。鵜方駅から近鉄名古屋行き特急は14~19時の間は1時間ごとに出ているので、時間を気にせずいつでも帰れます。
特急料金・特別車両料金(2人以上で利用した場合の1人あたり)は京都駅→近鉄奈良駅が730円、大和西大寺駅→鳥羽駅が2,180円、鵜方駅→近鉄名古屋駅が1,640円になり、計4,550円です。
これに「近鉄週末フリーきっぷ」を加えても8,750円と、1万円を切ります。
京都駅で近鉄への乗り換えにトライ!
関西旅行の交通費を抑えるコツは京都駅から近鉄に乗り換えること。「近鉄」と聞いて京都を思い浮かべる方は少ないものですが、意外と使えますよ。
旅行にかかるコストを少しでも減らしたい人は、ぜひ実践してみてくださいね。