中国世界遺産の元陽やフィリピン世界遺産のコルディリエーラ、バリ島ウブドなど、世界にはわたしたちの想像をはるかに超えた、圧倒的かつとてつもない絶景棚田が存在します。
そうした中、ベトナム北部にある「ムーカンチャイ」もまた世界有数の棚田のひとつ。山岳地帯で暮らす少数民族「モン族」が世代を超えて作り上げた隠れた宝石。
今回はムーカンチャイとそこで暮らすモン族にスポットを当ててご紹介します。
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世界有数の絶景棚田をもつベトナム
Photo by Mayumi
突然ですが、上の写真、どこか分かりますか?
ここは、ベトナムの首都ハノイのノイバイ国際空港出発ターミナルの一角。前方に掲げられた写真パネルはベトナム屈指の観光名所をズラッと披露したものです。そして、その右上の写真がとらえた棚田の絶景、これは「サパ(SAPA)」で撮影されたものと思っている人も多いのではないでしょうか。
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世界第5位の生産量を誇る米どころ・ベトナム。北部を流れる紅河、南部を流れるメコン川流域は世界有数の穀倉地帯であり、数多くの絶景棚田が存在します。なかでも、日本人にとってなじみ深いのはおそらく、観光名所としてしばしば紹介されるベトナム北部のサパでしょう。
確かにサパの棚田も圧巻で息を呑みますが、じつはさらにその上をゆく、「ベトナムでもっとも美しい棚田」と称されているのが、サパ近郊にある「ムーカンチャイ(Mu Cang Chai)」です。
今回は、そんな「ムーカンチャイ」と棚田を守る少数民族についてご紹介します。
「ベトナムでもっとも美しい棚田」ムーカンチャイとは
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首都ハノイから北西へ約300㎞、標高1,000m以上の深い山間に切り拓かれた土地が「ムーカンチャイ」です。面積は沖縄本島とほぼ同じぐらいの約1,199平方km、その約4%が棚田を含む水田地帯となっています。
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これらの棚田を切り拓いたのはベトナム少数民族のモン族。
ベトナムに存在するおよそ54の少数民族のうち、もっとも多いといわれるのがモン族で、ここムーカンチャイでも人口のおよそ9割を占め、その多くは山の上での伝統の暮らしを営んでいます。
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はじまりは約500年前。肥沃な大地を求め中国から移り住んできたモン族の祖先は、遊牧を生業とし、焼畑農耕を行っていました。
やがて川の近くの盆地や平野部で稲作がはじまると、他の部族も移り住むようになり、土地を追われたモン族は山を切り拓き、独自の農耕システムや文化を構築します。それは世代から世代へと受け継がれ、およそ300年の時をかけて、現在の姿を作り上げたといわれています。
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未だ伝統農法を守り、作り上げられた奇跡の棚田パッチワーク。
この大地の芸術作品ともいえるムーカンチャイの棚田は、「ベトナムでもっとも美しい棚田」と称賛されるほか、ベトナムの国家文化遺産にも指定。さらに、近年では米国系の大手旅行雑誌から「世界でもっともカラフルな場所」のひとつとして注目されています。
ムーカンチャイの棚田の見どころ
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流線形に描かれた棚田のてっぺんにある、蓋が置かれたような円形の田んぼ「Mam Xoi(マム・ソーイ)」。ベトナム語で「Mam」はトレイやお盆、「Xoi」はお米のおこわを意味し、要するに「お盆に乗ったおこわ」という意味で、ムーカンチャイ独特のアイコンとなっています。
ちなみに、写真では小さく見えますが、軽く10m以上の大きさがあります。
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冒頭のハノイ・ノイバイ国際空港にあった写真パネルの棚田風景がこちら。この馬蹄形の特徴的な棚田もまたムーカンチャイを代表する風景のひとつです。ここは、もっとも夕日に映える棚田として人気のスポットです。
ちなみに、棚田のベストシーズンは、緑が美しい5月~7月、黄金に輝く稲穂の9月~10月となっています。
少数民族モン族とのふれあい
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クロスステッチを多用した色鮮やかな民族衣装が特徴のモン族は、実はその身にまとう民族衣装の基調カラーや言葉の違いから、白モン、青モン、黒モン、赤モン、花モンなどに分かれています。ちなみに、ムーカンチャイで暮らすモン族は、青を基調とした青モン族が多いようです。
彼女らとのふれあいの機会を求めるなら、町のマーケットがおススメ。とはいえ、彼女らに英語はまったく通用しないため、翻訳アプリが重宝します。
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彼らの生活文化をより身近に感じたいなら、モン族の家庭にホームスティするのも良いでしょう。「Mu Cang Chai、Homestay」などで検索するといくつかヒットします。
少数民族の家といって侮るなかれ、宿としての機能(電気、水洗トイレ、WiFiなど)は備わっているのでご安心を。
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働き者で、針仕事を得意とするモン族の女性たち。伝統模様で作り上げる色彩豊かな衣装やバッグ、小物雑貨類が多数並んでいました。お土産物にぜひいかがですか?
ムーカンチャイ訪問時のアドバイス
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ムーカンチャイへの交通手段は、首都ハノイから長距離バス、電車、バイクなどから選べますが、個人的には夜行バスがおススメ。ハノイからはおおむね6~7時間が目安といわれ、寝ている間に移動できるのは時間もお金も節約できて効率的ですよね。
しかも、ベトナムの夜行バスは2段ベッドが一般的で、120度リクライニングで毛布・枕付き。一人分のスペースはかなり狭いですが、それでも案外快適でぐっすり眠れます。
注意点としては、筆者の場合、移動に8時間半もかかり、到着は深夜3時半を超えること。そのため、事前に宿の確保をしておくと安心です。ちなみに、ムーカンチャイの宿はバスが走行する幹線道路沿いに集中しているため、事前に車掌さんに伝えておくと宿の前で降ろしてくれます。
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こちらはムーカンチャイの町並み。険しい山間の集落にしては意外に開けていますよね。6万人ほどの人口を抱える町なので、宿泊施設や飲食店のほか、役所や銀行、警察署、学校、クリニックなど町としての機能はひととおり備わっています。
とはいえ、田舎にありがちな、施設や店舗の閉店時間が早い傾向にあるため、滞在時の食事や買い出しには注意が必要です。
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ムーカンチャイでの移動手段は、地元のバイクタクシーか、レンタルバイクを利用するかの2択に限られます。
おススメはバイクタクシー。というのも、主な見どころはほぼ山の上にあり、そこまでの道のりが細く険しく、傾斜がきついオフロードで大変危険なのです。また、地元ドライバーならではの見どころや魅力的なスポットを案内してくれるので一石二鳥。
ただし、前述の通り、地元の方々とのコミュニケーションは原則ベトナム語です。事前に翻訳アプリのインストールをしておきましょう。
絶景棚田と少数民族とのふれあいが楽しめるムーカンチャイへ
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西洋建築や教会など、フランス統治時代の名残が残る観光地化されたサパに比べ、ムーカンチャイは、まさにベトナム・ローカルが楽しめる、素朴でのどかな田舎スポットです。
ベトナムでもっとも美しい棚田と少数民族とのふれあい、そして素朴な田舎の雰囲気が楽しめるムーカンチャイにぜひ訪れてみてください。
・名称:ムーカンチャイ(Mu Cang Chai/Mù Cang Chải)
・住所:Mù Cang Chải, Yên Bái, Vietnam
・地図:
・アクセス:ハノイの三―ディン(My Dinh)バスターミナルから直行バスで約6~7時間(天候や道路状況による)