ライター

大学生時代から自立を目標にフランス(リヨン)へ留学し、バックパッカーになる。旅では銃と遭難で2回ほど死にかけたが、「死ぬこと以外かすり傷」と実感し、出会うものすべてに魅了される。社会人になってからの目標は日本一周。途中駅で下車し、その日見つけた宿に泊まるぶらり旅が好き。

あなたにとって、忘れられない旅はありますか?

楽しい思い出や素敵な出会いあった旅…もちろんその通りだと思います!

ただ、今回は少し違う視点。海外旅行中に死にかけたからこそ、

人の優しさが身に染みたエピソードをご紹介します。

忘れられない旅のチェックリスト

「「忘れられない旅」というのは何かしら忘れられない理由があるはず。

どのような体験・経験をすると忘れられない旅になるのでしょうか。

私にも「忘れられない旅」がいくつかあるので、共通点をまとめてチェックリストを作ってみました。

ぜひご自身の経験に当てはめてイメージしてみてください♪

✓旅先でトラブルに巻き込まれたとき、自分の判断で乗り越えられた

✓日常が100点満点の50点としたとき、その出来事や出会いで80点以上心が揺れ動いた(感動や惹かれた瞬間)

✓「誰かに話したい!」と思えるほどの景色や人、物語に出会えた

1つでも当てはまれば、あなたにとって忘れられない旅でしょう。

さて、これから紹介するのはオランダで凍死しかけたところをBulterman (ビュルテルマン)一家に救われた旅です。3つの項目すべてに当てはまり、心が100点揺れ動いた時のお話です。

悪天候による公共交通機関のダイヤ大幅変更

悪天候による公共交通機関のダイヤ大幅変更……これは結構旅先あるあるだと思います。

本来であれば、イレギュラーが起きた時こそ気を引き締めなければいけないです。

それにも関わらず……私はやらかしてしまったのです。

■連日のバス移動で疲れが溜まっていた

■一人旅に少し慣れて気が緩んでいた

■天候の荒れは一時的ですぐに回復するものだと思い込んで準備をしなかった

■他の乗客もいるし、なんとかなるだろうと慢心していた

反省点を挙げればキリがないですが、一言でいうなら、完全に油断していたんです!

「悪天候のため、目的地への通常ルートは使えません。本日の回復見込みはお伝えしかねるので明日の便で向かってください」
「次の駅には休憩所と宿がありますので、そこで休んでください」

というアナウンスが流れていたにもかかわらず、

疲れと油断で聞き逃してしまいました。

死を覚悟した-12℃での遭難

夢うつつの状態で、ハッと目が覚めたときには最終便の終点。

バスの運転手に起こされ、降りたのはどこかわからない山奥でした。

濃霧で手元すら見えない状況。

さらに不運だったのは、スマートフォンの電源が一瞬で落ちてしまうほどの寒さ(-12℃)。人影もなく、連絡もできない、薄着で食べ物もない。正直、死を覚悟しました。

「どうしよう……死にたくない。でもバスが走っていたということは、近くに道路があるはずだし、誰かに気づいてもらえるかもしれない」そう思って、闇雲に歩き始めました。

「車の音も光も見えないから、轢かれる心配はなさそう。でも、ここは山奥……熊がいるかもしれない」という不安が頭をよぎります。

そんなとき、ふと太ももに何かが思い切りぶつかりました。

手で触ると、ガードレールだと分かりました。

とっさに、腰に付けていたベルトの金具を使って「カーン、カーン!」と

ガードレールを叩き、音を響かせて助けを求めました。

すると、9分ほど経過した頃偶然にも現地の人に見つけてもらえたのです。

「何してるんだ、うるさいぞ!」という声を聞いた瞬間、安心して涙があふれ、思わずその人に「ありがとう!」と抱きついてしまったほどです!

その方は私の事情を察してくれ、自宅に招いてくれました。

安心したからかふと危機感を思い出しました。

(自分から助けを求めておいてこんなこと考えるのも失礼かもしれないけど、私より二回り程大きい、知らない方に本当についていっていいものか)

少し迷いましたが、「この人を信じるか、凍えて死ぬかなら信じてみよう」と

決めてついていきました。

まさかのクリスマスパーティへのご招待|Bulterman (ビュルテルマン)一家との出会い


招かれた家では、ちょうどクリスマスパーティが開かれていました。

チキンやクッキー、ラクレット、そして暖かなご家庭。家族8人そろって、

私の事情を丁寧に聞いてくれました。

そして、「日本からのお客さんだ!この出会いを盛大に祝おう!」と言って、

ワインを開けて歓迎してくれたのです。

天国はここかと思うほどその夜は、思わぬ出会いと

温かいもてなしに感謝して過ごしました。

旅を続ける限り全ては自己責任|死は身近に存在することの自覚

翌朝、家族の皆さんにお礼を言って出発すると、

昨夜は怖くてたまらなかった霧の道に美しい朝焼けが広がっていました。

人生本当に何があるかわからないものだと旅がより一層大好きになりました。

ただ、一つだけゾッとしたことがありました。

昨夜ぶつかったガードレールを見に行くと、その先は崖だったことです。

しかも、その一区間だけにガードレールがあり、もし少しでも違う場所を歩いていたら、間違いなく何も知らずに落ちていたでしょう。

旅では何が起こっても自己責任。

ただ死を覚悟し何かを超えた時に、平穏とは違う景色が見えることがある。

人の優しさとありがたさにより一層気付けるということを改めて学びました。

忘れられない旅を更新する旅を目指して……それでは、Bon voyage!

All photos by Amano Rena

ライター

大学生時代から自立を目標にフランス(リヨン)へ留学し、バックパッカーになる。旅では銃と遭難で2回ほど死にかけたが、「死ぬこと以外かすり傷」と実感し、出会うものすべてに魅了される。社会人になってからの目標は日本一周。途中駅で下車し、その日見つけた宿に泊まるぶらり旅が好き。

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