チャウドックの田園
ライター

北海道出身の27歳。これまでに日本の離島を150島近くを旅してきた島旅人で、島暮らしも今年で3年目。11月から1年ほど世界一周の旅へ出発。海や観光・宿泊関連の仕事をしながら、自身が経験した旅のひと時を発信中。海と雪山、ビールが大好き。

「チャウドック?ウチに泊まった人でも行った人は数人いるかどうか……」

ベトナム・ホーチミンでバックパッカー宿を営む日本人に言われたひと言。たしかにインターネットで検索しても、他の都市に比べると情報が少ない。

2回目のベトナム旅、ホーチミン以外にもどこかもう1カ所行きたいと思い、探していた矢先にたまたま見つけることができた「チャウドック」。

ホーチミン像ホーチミン像
調べていると、出てくるワードは「カンボジアとの国境に面し、少数民族がいる」など、久々の海外旅で興味がそそられる内容ばかり。

なんせ情報が少ないのだから、これは行ってみるしかないと思いホーチミンから向かうことにした。

チャウドックはどこにある?

チャウドックはホーチミンから西へ約240キロ離れた、カンボジアとの国境メコンデルタ地方に位置する小さな町。

今回はバスでの移動だったが、カンボジアから行く場合はボートで入国もできる。


ホーチミンからチャウドックまではバスで約6時間ほど。チケットはオンラインで事前購入もでき値段は1,500円程度で購入できる。

僕が事前購入したバスのサイトはこちら

本数も約1時間に1本出ているため、宿代を節約するなら深夜バス、道中の景色を楽しむなら昼行バスなど、旅のスケジュールに合わせてバスを選べるのもいいところ。

距離の割に時間はかかるものの、途中トイレや食事ができるサービスエリアでの休憩もあるので快適に移動ができた。

チャウドックへ向かうバスチャウドックへ向かうバス
バスは日本では見慣れないベットタイプのシート。身長170センチ以下なら足も伸ばせるくらいの広さで、モニターや電源も付いている。

シートは上下2段の3列。運転中は揺れることもあるので、予約時の座席指定は下段の真ん中列以外をオススメしたい。

往路は上段の左列を予約したが、揺れて落ちそうになることが数回あったので目が覚めることもあった。可能な限り上段の真ん中列は避けるのが無難かも。

バスの車内ほぼ個室のように仕切られるバスの車内

ベトナム南部ならではの食を味わう

夜行バスを使い、チャウドックには朝に到着したこともあり、市場では東南アジアらしい雰囲気と香りが身体を目覚めさせてくれる。

朝の市場歩きは、東南アジア旅にとってもはやルーティンと言っても過言じゃないくらい、自分の中では定番だ。

チャウドックの市場宿から眺めるチャウドックの市場
色とりどりの野菜や果物、ダイナミックに並べられる魚や肉はもちろんだが、ここでは一際強い香りを放つものがある。特産である魚を発酵させた「マム・カー」と呼ばれる、調味料であり食材でもあるもの。

マム・カー市場に並ぶマム・カー、とても匂いが強い
イメージだとナンプラーの香りをより強くした感じ。好き嫌いは分かれるかもしれないが、「マム・カー」を使った「ラウマム」と呼ばれる鍋料理は絶品。

ラウマム一度は食べてほしいベトナム南部料理「ラウマム」
魚の旨みたっぷりな甘めのスープには野菜や練り物、魚介類などの具材が入り「マム・カー」の強烈な香りも鍋に入れば不思議と落ち着く。

味にクセは少しあるものの、発酵系の食品や調味料が好きな人には病みつきになる味で、野菜もたくさん摂れるため旅中にはもってこいだ。

「マム・カー」はベトナム南部の定番グルメなので、チャウドックはもちろん他の町に訪れた時にも食べたい一品。量は多いので複数人でシェアするのもいいだろう。

バイクを走らせ国境を感じる

田んぼ田んぼの緑と空の青のコントラストが美しい
チャウドック郊外にバイクを走らせればのどかな田園風景も広がってくる。

道路も左右が田園に囲まれているのでまっすぐな道も多く、晴れていれば日差しと心地よい風が旅の気分を高揚させる。

建設中の仏像まだ建設途中の仏像
道中にはこんな建設中の仏像も。完成時にはどれくらいの大きさになっているのだろうか。

ちなみにこの辺りの国境は田んぼを挟んでいるので、高台から見ると国の違いが目に見えてわかる。

サム山からの田んぼサム山から見渡せる景色。手前がベトナム、奥がカンボジア
チャウドック郊外にあるサム山、ここからはベトナムとカンボジアの国境を見渡せる。

手前がベトナムで奥がカンボジア。見渡す風景は写真で見る以上に素晴らしいのだが、どこか国の違いという引っかかるものがあった。

これが技術の差なのか、それとも作り方の違いなのかはっきりとはしないが、目の前にある風景に言葉が出てこない。

だがこうやって国境を見下ろせること自体、日本では決してできないことなので、またひとつ旅の面白さが増えた。

船で行く少数民族「チャム族」の村へ

渡し船バイクや人で賑わう川を渡るフェリー
チャウドックの市街地から川を挟んだ先にダーフック村がある。

ダーフック村に住むチャム族はイスラム信仰であり、高床式住居で暮らしたりイスラムの建物が立ち並んでいたりと異国感が漂う。

ボートで回るツアーもあるが、今回はバイクをフェリーに乗せ(数十円程度ととても安い)、その街並みをバイクで回る。

高床式住居川沿いに並ぶ高床式住居
川沿いに高床式住居が並び、歩いていると日常生活が見えてくる。

彼らにとっては日常生活のひとコマに過ぎないが、旅をしているとそんな日常も非日常に見えてくるものだ。

モスク小さいがとても立派なモスク
川沿いではない場所にはモスクなど、仏教が中心のベトナムではなかなか見ることのできない風景がまた面白い。

もちろん礼拝の時間には、礼拝の呼びかけの「アザーン」が放送で響き渡る。

川をひとつ挟んだだけでこれだけ生活様式が異なっているが、互いの民族や宗教を理解しながら共存している。

国境、そこに暮らす人たちから見えたもの

犬と田んぼサム山から田んぼを見下ろす看板犬
チャウドックにはベトナム人のキム族やチャム族、カンボジア人のクメール人も住んでいる。

国境と聞くとどこか緊張した雰囲気を想像してしまうが、想像とは裏腹にのどかで共生している日常がそこにあった。

ホーチミンからも離れているため、カンボジアからベトナムにくる時はスルーしてしまうかもしれない。

けれどもそこにしかない風景や人、物があるのだ。

「また行って見たいな」そう思えるチャウドックへの旅、次はあなたも訪れてほしい。

All photos by Suzuki Ei

ライター

北海道出身の27歳。これまでに日本の離島を150島近くを旅してきた島旅人で、島暮らしも今年で3年目。11月から1年ほど世界一周の旅へ出発。海や観光・宿泊関連の仕事をしながら、自身が経験した旅のひと時を発信中。海と雪山、ビールが大好き。

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