サン・セバスチャンのバル
ライター

1995年秋田県生まれ・千葉県育ち。日本47都道府県、世界40ヵ国を訪問。新卒で不動産会社に就職し、新卒採用と営業を経験。退職してデンマークに1年滞在したのち現在はベルリン在住。"旅するスパイスカレー屋"を世界中で不定期開催しています。

ヨーロッパ周遊旅の途中で立ち寄ったサン・セバスチャン

約2週間のヨーロッパ周遊旅。

ポルトガルの首都リスボンでの滞在後は、スペインのグラナダへ飛びアルハンブラ宮殿を見てみたいと思っていた。しかしフライトチケットが思いのほか高額だったため、別の目的地も検討してみることに。次に訪れる予定であるマドリードへのアクセスも良いことを条件に探していると、ビルバオ行きのチケットが目に留まった。

ビルバオといえば美食の聖地として知られるバスク地方の都市。「美味しいものをたらふく食べたい!」その思いは同行者の2人も同じだったようだ。

アルハンブラ宮殿の景色よりもバスクでの美味しい食べ物への期待が強くなったところで、迷わずビルバオ行きのチケットを取った。

サン・セバスチャンの街並みphoto by Yurie Shiba

初日の夜:フォアグラとチャコリで始まるバル巡り

ビルバオ空港からバスに揺られること約1時間、サン・セバスチャンに到着。山と海に囲まれた美しい街だった。

ホテルに着いたのは21時30分。そそくさと出かける準備をして、22時には一軒目のバルに到着。普段はのんびりしがちな私たちがこんなにテキパキと動けるなんて。美味しいものをとにかくたくさん頬張りたいという貪欲な欲求が、その原動力だった。

サン・セバスチャンの街並みphoto by Kana Okuyama
サン・セバスチャンは日本人にとってメジャーな観光地ではないが、旅好きの間ではファンも多い隠れ人気スポットだ。おすすめのバルが様々なブログやSNSで紹介されている。

私たちも何件か目星をつけていたが、一軒目に行きたかったバルは混雑していて入れなかった。そこで歩きながら見つけた雰囲気の良さそうなバルに飛び込んでみることにした。

狭いエリアにぎっしりと並ぶバルはどれも活気があって、どれを選んでもハズレはないという期待感があった。その中から一つを選ぶのもまた、旅の醍醐味で楽しかった。

サン・セバスチャンの街並みphoto by Yurie Shiba
まず一軒目で体験したのは、バスク地方の名物・微発泡ワイン「チャコリ」。高い位置から注ぐのが特徴で、これにより酸味を和らげ、香りが引き立つのだという。値段もかなりお手頃で、バル巡りの心強い定番だ。

さすがワインの名産地なだけあり、チャコリだけでなく様々な種類のワインやサングリアも美味しい。「モスト」と呼ばれる新鮮な葡萄から作られるジュースも人気で、ワインを何杯も飲めない私にとっても嬉しい選択肢だった。

サン・セバスチャンのバル一軒目のバルにて。色とりどりのピンチョスに目を奪われつつ、指差しで注文
photo by Yurie Shiba

一つのバルで、お酒を一杯とおつまみを一つ楽しんだら、長居せずに次の店に移るのがサン・セバスチャン流のバルの巡り方。

私たちもさっそく二軒目へ繰り出す。お次は、最初に行きたかった「Bar Sport」へ。

ここは日本人の間でも有名なだけあり、日本語メニューがあったり、片言の日本語を話せる陽気な店員さんがいたりと、異国の地でも安心してくつろげる雰囲気が広がっていた。

看板メニューであるフォアグラのピンチョスや、ウニのポタージュ、ハムのコロッケ、ししとうの唐揚げなどを堪能。特にフォアグラのピンチョスは、濃厚な旨味と口の中でとろけるような食感がたまらなく、一度食べたら忘れられない美味しさだった。

サン・セバスチャンのバルフォアグラのピンチョス photo by Kana Okuyama
こうして1日目はこの辺りで締めくくることに。明日も明後日も、尽きることのないバルの数々を巡れるのだ、という期待感に胸が高まり、気持ちは終始高揚していた。

■詳細情報
・名称:Bar Sport
・住所:Fermin Calbeton Kalea, 10, 20003 Donostia, Gipuzkoa, Spain
・地図:
・公式SNS:https://www.facebook.com/BarSportDonostia/

サン・セバスチャンのバル紙ナプキンなどのゴミは床に落とし、1日の終わりにまとめて掃除するのがサン・セバスチャンスタイル
photo by Kana Okuyama

2日目:昼飲みと地元の味、そしてバスク地方の文化

サン・セバスチャンのバルBar Desyにて
photo by Kana Okuyama

2日目は昼からバル巡りスタート。google mapやネット上の口コミを頼りにたどり着いたのは「Bar Desy」というバル。

席に着くと、ここの名物らしきおじちゃんがにこやかに対応してくれた。バスク語かスペイン語で話す彼の言葉は私たちは理解することができなかったけれど、なぜかこのおじちゃんが勧めるものは間違いないだろうという信頼感があり、料理はおまかせで頼むことに。これが大正解だった。

サン・セバスチャンのバルphoto by Yurie Shiba
トマトとツナの冷菜はオリーブオイルの香りと塩の加減が絶妙。アンチョビのピンチョスもお酒が進む味。そしておじちゃんが自信満々の表情で運んできたビーフのハンバーガーは焼き加減が完璧で、肉の旨味が口いっぱいに溢れ出した。ソースとの相性も抜群で感動の連続だった。

常連らしき客たちが昼間からバルでお酒を楽しみ、活き活きとした表情で店員と挨拶を交わして去っていく様子は、見ているだけでこちらも活力が湧いてくるものだった。

サン・セバスチャンのバルBar Desyにて
photo by Kana Okuyama

■詳細情報
・名称:Bar Desy
・住所:Local 19, Ronda Kalea, 4, local 4, 20001 Donostia-San Sebastian, Gipuzkoa, Spain
・地図:
・営業時間:7:00-23:00
・定休日:日曜日
・電話番号:+34943293763
・公式SNS:https://www.instagram.com/bar_desy/

1人1つずつハンバーガーを平らげた私たちのお腹は、もう限界。次のバル巡りに備えて街をぶらぶら散策することに。

サン・セバスチャンには、個人経営の素敵なショップが数多く立ち並び、女子3人のテンションの上がるものに次々と出会った。サングラスやキャップ、トップス、ブレスレット、ポストカードなど想像以上に買い込んでしまい、買い物欲も満たされた。

サン・セバスチャンの街並みphoto by Kana Okuyama
買い物中に店員さんに「どこから来たの?」と聞かれ「日本から」と答えると「タケクボ!We love タケクボ!」とハイテンションで喜ばれたことも。

サッカー日本代表の久保建英選手が所属するレアル・ソシエダの本拠地が、ここサン・セバスチャンにあるということは実際に訪れるまで知らなかったが、彼の地元での愛されっぷりを体感した。

バスク地方は、スペインの中でも独特の歴史と文化を持ち、地域社会の結束が強いことでも知られている。そのため外部の人が誰でも簡単に受け入れられるわけではないと言われているが、そのカルチャーがある環境下で仲間やサポーターに受け入れられ活躍している久保選手に改めて敬意を抱いた。

サン・セバスチャンの街並みphoto by Kana Okuyama
ちなみに「バスク」の名前が日本で広まったのは、バスクチーズケーキの流行が一つの理由だろう。そのバスクチーズケーキはここバスク地方から始まったのだ。その中でも発祥の店に日々長蛇の列ができていると聞き、行ってみる。

サン・セバスチャンのバルphoto by Yurie Shiba
とろとろのバスクチーズケーキは、とにかく口当たりがよく、表面の焦げ具合も絶妙だった。満腹の私たちでもペロッと食べ切れる美味しさで大満足。

お腹がいっぱいの私たちは、腹ごなしを兼ねてラ・コンチャ海岸へ。広々とした海岸沿いには、のんびりとした時間を過ごす人たちが集まっていて、とても気持ちがよかった。ここで夕焼けを見ながらリラックスし、夜のバル巡りのために胃腸の調子を整える。

サン・セバスチャンの街並みphoto by Kana Okuyama
サン・セバスチャンの街並みphoto by Kana Okuyama
その夜の一軒目に選んだのは、日本人旅行客のブログなどで評判の良かった「ATARI Gastroleku」。かなり混雑した店内で帰りそうな人を見つけ、すかさずその席を確保。ここでは、牛ホホ肉の赤ワイン煮込みなど、手の込んだ料理をいただいた。

サン・セバスチャンのバルphoto by Yurie Shiba
バーカウンター内にいる店員さんとアイコンタクトを取って、注文したい意欲をなんとか伝える。店員さんがこちらにやってくると、3人分のドリンクと料理を注文。そしてドリンクを受け取って席に着く。と言ってもほとんどが立ち席。料理ができたら私たちの方に向かって、料理名を大きな声で呼びかけてくれる。

会計時は、自分達の注文したものを自己申告するのかと思いきや、店員のお兄さんは注文内容を全て覚えていて、「これで合ってる?」という確認をされた。30-40人は入りそうな店内を2-3人の店員で回し、注文内容まで覚えているなんて、とんでもない記憶力に舌を巻く。隣にいた別の店員のお兄さんが、「ドリンクはこれも飲んでたよね」と入ってくる連携プレーにも驚かされた。

■詳細情報
・名称:Atari Gastroleku
・住所:C. Mayor, 18, 20003 Donostia-San Sebastian, Gipuzkoa, Spain
・地図:
・営業時間:(日・月・水・木)12:00-1:00、(金、土)12:00-2:00
・定休日:火曜日
・電話番号:+34943440792
・公式サイトURL:https://atarigastroleku.com/

最後の夜と別れ:バル巡りの余韻を胸にビルバオへ

サン・セバスチャンの街並みphoto by Kana Okuyama
最終日はビルバオに向かうバスまで少し時間があったので、最後までバル巡りを満喫することにした。数々のバルを巡った中で、もう一度食べたいと満場一致で向かったのが「Bar Sport」だ。フォアグラを1人ひとつと、ピンチョスをいくつか頼んで心ゆくまで堪能した。

サン・セバスチャンのバルphoto by Yurie Shiba
サン・セバスチャンのバルphoto by Kana Okuyama
まだまだ訪れてみたい魅力的なバルは数多く存在し、一度の滞在で全てを巡りきるのは難しいけれど、その豊富さこそがサン・セバスチャンの満足度の高い理由の一つだろう。

高校時代からの気心の知れた友人たちと、心の赴くままに食べて飲み、心から満たされる時間を過ごした。そして、この街サン・セバスチャンは、「また必ず戻ってきたい場所」の一つに加わった。

次に訪れるビルバオでも、活気あふれるバルがひしめいており、私たちの食い倒れの旅はまだまだ続くのであった。

Thumbnail by Kana Okuyama

ライター

1995年秋田県生まれ・千葉県育ち。日本47都道府県、世界40ヵ国を訪問。新卒で不動産会社に就職し、新卒採用と営業を経験。退職してデンマークに1年滞在したのち現在はベルリン在住。"旅するスパイスカレー屋"を世界中で不定期開催しています。

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