ライター

28歳でひとり旅の楽しさに目覚めた30代会社員。もう昔のような無茶はできないけれど、ちょびっと冒険したいという思いで毎年ひとり旅へ出かけている。旅のモットーは「安全・清潔・ほどよく便利」。好きなものは夜景と船と電車。

自然豊かでうどんや柑橘などグルメも豊富、夏には阿波踊りやよさこい祭りなどで盛り上がる四国。

魅力あふれる四国ですが、少子高齢化や過疎化などの社会課題が全国に比べ先行している地域でもあります。そんな地域の持続的な発展のために近年行われているのが、地域に根差したものづくり企業が集まって生産現場を公開する「地域一体型オープンファクトリー」。

今回、香川県東部で開催されるオープンファクトリーイベント「CRASSO(クラッソ)」に参加し、6社のものづくりを見学させていただきました。

実際に現場を見て感じた各社の技術や魅力をご紹介します。

地域一体型オープンファクトリーとは

そもそも「地域一体型オープンファクトリー」とは何でしょうか。経済産業省近畿経済産業局によると、以下のように定義されています。

ものづくりに関わる中小企業や工芸品産地など、一定の産業集積がみられる地域を中心に、企業単独ではなく、地域内の企業などが面として集まり、生産現場を外部に公開したり、来場者にものづくりを体験してもらう取り組み
ー参考:https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/openfactory/openfactory.html

今回、私が参加したのは四国最大のオープンファクトリーイベント「CRASSO」。2023年からスタートし、2024年5月~6月に開催された第3回は延べ1,000人以上が来場したそうです。

CRASSOでは、工場見学やものづくりを体験するワークショップなど、普段見ることのできない「ものづくりの現場」を体験して、瀬戸内の魅力を存分に味わうことができます。

私が見学した6社をご紹介します。

鉄で遊び、鉄で暮らす。「有限会社槙塚鉄工所」

高松市にある槙塚鉄工所は、階段など建築金物や生活用品、キャンプ用品までさまざまな鉄製品を製作しています。

CRASSOのパンフレットに書かれた紹介文は、「鉄で遊び、鉄で暮らす、鉄工所らしくない鉄工所」。工場内は2階部分まで吹き抜けになった開放感のある空間で、作業場の他にギャラリーや従業員の方が作ったウォールアートが飾られた一角も。

紹介文のとおり、その様子は鉄工所というよりむしろアトリエや秘密基地のようです。

有限会社槙塚鉄工所
工場内の様子
工場見学ではフライパンの作り方や溶接に使う機械などについて、クイズ形式で解説いただけます。

有限会社槙塚鉄工所
ギャラリーには遊び心満載の鉄製品が並んでいます。

「捨てるものは何もない」と社長が言うとおり、廃材で作ったフォトフレームや「パンチャー」という穴を開ける機械から出る端材を使ったオセロなど、「ここで作れないものはないのでは?」と思わせる品物の数々が展示されています。

有限会社槙塚鉄工所
右が鉄で作ったフォトフレーム
パンチャーから出た廃材に色を塗って作ったオセロ
また、従業員の方々が自主製作したウォールアートが飾られているスペースもあります。「従業員みんながアーティスト」をモットーに、自由な発想を大切にされているそうです。

会社のモチーフが影として浮かび上がるようになっている
見学は通年可能とのことなので、ぜひ「鉄工所らしくない鉄工所」をのぞいてみてはいかがでしょうか。

■詳細情報
・名称:有限会社槙塚鉄工所
・住所:香川県高松市木太町2693
・地図:
・電話番号:087-862-2770
・公式サイトURL:https://www.steel-factory.jp/

「石といえば庵治石」を目指して 「株式会社蒼島」

株式会社蒼島(あおいしま)は、庵治石(あじいし)やその産地の魅力を伝える事業を展開している会社。「暮らしに寄り添う庵治石プロダクト」をコンセプトにした「AJI PROJECT」というブランドの運営などを行っています。(蒼島はCRASSO参加企業ではありません)

株式会社蒼島
庵治石とは、高松市東部の庵治・牟礼(むれ)地区に位置する五剣山から採掘される花崗岩のこと。庵治石を構成する結晶はとても小さく、他の石に比べて堅いのが特徴です。彫刻家・イサムノグチがその品質を絶賛し、牟礼の地にアトリエを構えました。

株式会社蒼島庵治石を掘り出している現場
庵治石は主に墓石に加工されてきましたが、海外の安価な石材が流通するようになったことで国産の墓石のニーズは減少。30年前に500社あった石材の事業所は今では170ほどにまで減ってしまったそうです。

そんな現状に危機感を覚えた庵治産地の職人・二宮さんが立ち上げたのが蒼島。庵治石の魅力を打ち出すべく、花瓶やブックエンドの製作や、フランスやスペイン、韓国のデザイナーとコラボしたアート作品などを生み出しています。東京で展示会を行えば4日で700人以上が訪れるほどの人気ぶり。

株式会社蒼島 omori「OMORI」をテーマに国内外のデザイナーが制作したアート

庵治石で作ったブックエンド、「ロックエンド」。
石の模様や質感がそのまま感じられ、美しい佇まい

二宮さんはこう語ります。

「タオルといえば今治だけど『石といえば?』と聞かれても誰も何も思い浮かばない。だからこそチャンスだと思っている。」

石といえば庵治石だと、誰もがイメージする。そんな日がくることを夢見て、庵治石の魅力を発信しつづけています。

■詳細情報
・名称:株式会社蒼島 ※CRASSO参加企業ではありません(2024年12月現在)
・住所:香川県高松市牟礼町牟礼3195−1
・地図:
・電話番号:0878143890
・公式サイトURL:https://aoishima.jp/

サステナブルなものづくりにこだわる 「株式会社フクシン」

株式会社フクシンは、東かがわ市にある手袋や靴下を製造販売する会社。国産手袋の90%はここ東かがわ市で作られています。

フクシン ecuvo,
フクシンで注目すべきはサステナブルなものづくり。サステナブルブランド「ecuvo,」は「永久定番」をうたい、流行に左右されないシンプルなデザインで毎年同じものを販売しています。永久修理保証がついているため、破れてしまっても無料で修理してもらえます。

提供 株式会社フクシン
ちなみにecuvo,というブランド名の由来は「たくさんの笑顔を紡ぐ」という企業理念。笑顔の象徴であるえくぼをブランド名にし、末尾にあるカンマはえくぼの形を表しているのだとか。

また、フクシンの電力は100%再生可能エネルギーでまかなわれています。工場の屋根に設置されたソーラーパネルで発電した電力に加え、非化石証明書付の電力を購入して実現しているそう。

工場見学では糸が保管された倉庫に始まり、編み機、検品、起毛検針(完成した製品に針がついていないかのチェック)の一連の工程を見学させていただきました。

ライター

28歳でひとり旅の楽しさに目覚めた30代会社員。もう昔のような無茶はできないけれど、ちょびっと冒険したいという思いで毎年ひとり旅へ出かけている。旅のモットーは「安全・清潔・ほどよく便利」。好きなものは夜景と船と電車。

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