親と最後に行った旅行のことを覚えていますか?
とある調査で、「自分が両親にした、最も喜ばれた親孝行」の第一位に「一緒に旅行をする」ことが選ばれています。
離れて暮らしていても、近くで定期的に顔を合わせていても、旅行というのは日常から離れた特別な思い出になりますよね。
今回は、母に誘われて行った母娘旅の記録とともに長野のおすすめスポットも紹介します。
母の誘いで、母の誕生日旅行へ
「ママの誕生日に、一緒に旅行行こう〜!」とお誘いを受けたのは、夏の終わりのこと。行き先もホテルも既に確定済みのようで、簡単に日程調整をして母との旅行が決まりました。
家事をしながら旅番組の録画をいつも見ていた母。今でもフルタイムの正社員で仕事をしている母が旅好きだったことに気づいたのは、私が大人になり自分自身も旅が好きになってからのことでした。
旅行が決まったその日から、母から送られてくるメッセージの通知が止まりません(笑)お城や美術館など、「ここに行きたいんだー!」と、母の希望と参考サイトが次々と送られてきます。
私の方でも「親孝行になるかな?」と、母に見せたい景色やおいしそうなものをリサーチしようとしていましたが、これでは母の希望だけで時間が足りなくなります。今回は母の行きたいを全て叶える方向に切り替えました。
小さくても一目置かれる。美しい松本城
ちょうど紅葉の見頃でした
今回の旅先は、長野県の松本と諏訪湖。以前母と一緒に訪れたので今回で2回目。母は3回目。気に入ったところを何度も訪れるということも、今回初めて知った母の旅のスタイルです。
一泊二日の初日は、東京から車で松本城に向かいます。日頃から話が止まらない母と娘。会話に夢中になり気づくのが遅くなりましたが、ふと遠くを見ると、前も後ろも、右も左も、美しい紅葉の景色が広がります。色鮮やかな景観は、目的地への期待も高まります。
各地のお城と比べると、驚くほど小さい松本城。ですがお堀や石垣の作りがとても美しく、長旅の疲れも癒されます。
月を見るために作られた「月見櫓」
松本城を外から見ても気になる、赤い漆の柵が印象的な月見櫓(つきみやぐら)。城内見学では大トリ的な順路にあり、櫓の中から見る外の景色はとてもきれい。たしかに、ここから見る月はきれいだろうなと思いを馳せます。
この月見櫓は、有名な武将が来るからと作られたお部屋で、美しい月を見てもらいたいと丹精込めて建設したのですが、当の武将はこの場所には立ち寄らなかったとか。ちょっと残念。そんなエピソードもある松本城は、お城好きの中でも推す方が多いということも納得です。
おもしろいね。きれいだね。なんだかかわいいエピソードだね。と、ひとつひとつに感想を言いながら母と探検する松本城は、今まで見学したお城で一番楽しく感じました。
おしゃべり親子の口をとめる、立石公園のやさしい夜景
街の明かりと諏訪湖のコントラストが美しい
松本の城下町を堪能して諏訪市へ移動します。夕食の前に立ち寄ったのは、高台に立つ立石公園。映画『君の名は。』のモデルとして有名になった、諏訪湖を一望できるスポットです。
11月も17時を過ぎるとあたりは真っ暗なので、スマートフォンで足元を照らしながら、段差につまづかないように進みます。
足元に落としていた視線をふと上げると、大きく広がった空と諏訪湖、その周辺の夜景が一度に見られる絶景が現れました。
最近のカメラはどれも高性能なので、写真に撮ると空は明るく、はっきり発光した明かりが並び、壮大でパワフルに見えますが、肉眼で見た印象は少しちがいます。
本当はもっと真っ暗で。闇の中で点描画のように繊細な灯りが、消えないようにやさしくやさしく光っているような景色です。
これまでずっと話し続けてきた母と私でも、少し黙って、話す時は小声で。そっとやさしく見ていたい、そんな気持ちになる場所でした。
・名称:立石公園
・地図:
・アクセス:JR中央本線 上諏訪駅から車で約15分、徒歩約30分
気づけば故郷に。諏訪市を知る一日
諏訪大社 四社めぐりは車がおすすめ
翌日は諏訪大社の四つのお宮を回ったり、諏訪の伝統的なお祭り「御柱祭」に関する資料館や名所を回ったり。諏訪市を縦横無尽に走り回る一日でした。
子どもの頃は、美術館や博物館、資料館などはささっと通り過ぎてしまう場所でしたが、いつからか、歴史を知ったり現地の方のお話しをゆっくり聞く時間が楽しく感じられるように。
歴史や過去のできごとなど、昔の話を聞いているのに新しい気持ちになる。不思議な感覚です。
旅の宿は、母お気に入りの諏訪湖沿いに立つホテルに宿泊していました。お部屋から諏訪湖が見える「レイクビュー」です。
私たちにとっての諏訪は、出身地でもないし、大人になってから訪れるようになった場所ですが、故郷のように愛着を持って訪れる母の姿を見て、何度も同じ場所を訪れるのも悪くないなと感じました。
親の好みを、あらためて知る旅行
久しぶりの母と娘のふたり旅。この旅を通して感じたことは山ほどありますが、印象的だったのは「母の好みを改めて知ることができた」ということです。
旅の中には、思ったより時間が経っていたり営業時間や天候の影響で、当初のプランをその場で変更することもあります。
その時に、母が優先して行きたいと行った場所や滞在時間などから、母自身の旅のスタイルや好みをなんとなく感じられた気がしました。
今度は父と。離れて暮らすからこそ、時間をとって誘ってみようかなと思います。
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「親孝行に旅行を」と考えると、親を喜ばせてあげようという思いから、全体をプランニングしてあげたい気持ちが出てきます。子ども側が旅好きになると、余計にその感覚が強くなるかもしれません。
今回も、母のためにプランニングしてあげたくなったけれど、母自身が行きたい場所を調べてくれたおかげで、母の好みや時間の流れを一緒に体感することができました。
おもてなししたい気持ちをちょっとだけこらえて、「どんなことしたい?」と丁寧に聞いてみるのも、選択肢としておすすめしたいです。
意外な場所や、希望が出てくるかもしれない。もともと旅好きの親だったら、自分自身でもいろいろ調べているかもしれないですしね。
仕事や家庭で忙しくても、きっと良い時間になるはずだから。みなさんも、たった2日だけ時間を作って、親孝行旅行に行ってみるのはいかがですか?
きっと「楽しかったよ。ありがとう」とお互いに感じて、素敵な思い出になるはずです。
All photos by Miyamoto Hazuki