ソウルの森
ライター
貝沼和 TABIPPO CARAVAN

ソウル在住10年の複業フリーランス。2人の女の子を育てながら、ライター、SNS運用、カスタマーサクセス、コミュニティ運営、日本語教師など「人生に彩りのある選択肢を届けたい」という想いのもと多方面で活躍中。座右の名は「和をもって尊しとなし」

今やソウルのおしゃれスポットとして知られる聖水(ソンス)洞。結婚を機にソウルに移住した私は、空の見えない大都会の生活に、息が詰まりそうになることもありました。

そんななか、この街の持つささやかな豊かさに惹かれ、家族で聖水洞に引っ越してきてから、もう5年になります。ソウルでの10年の暮らしのなかで、この街の“ちいさな余白”や、ガイドブックには載らない景色に、私は何度も救われてきました。

今日は、そんな私の大好きな街「聖水洞」の日常を、少しだけおすそわけしたいと思います。

土曜日の朝、子どもと一緒に寄るベーカリー

ソンスベイキングスタジオイートインスペースはなく、テイクアウトのみのパン屋さん
少し特別な土曜日の朝。

家から歩いてすぐの「ソウルの森」で朝ごはんを食べようと、私たち家族が向かうのは、午前8時から開いている小さなベーカリーです。

じつは私たち夫婦、なかなかソウルで好みに合うパンに出会えずにいました。でもこのパン屋さんを見つけたとき、「ようやく見つけたね」と顔を見合わせたのを覚えています。 引っ越してきて間もない頃のことでした。

このお店は、もともと週末だけ営業していたのですが、人気が広がって、今では平日でもオープンし、列を作るほどに。

聖水洞という、変化の早い街で、個人のお店が長く続いていくのは決して簡単なことではないと思います。そんななかで、変わらずにそこに在り続けてくれる、私たちにとって大切な場所になりました。

好きなパンを選び、紙袋を片手に静かな朝の森へ向かうこの時間が、「この街に住んでよかったな」と思える、ささやかだけれど確かな瞬間です。

■詳細情報
・名称:聖水ベイキングスタジオ
・住所:ソウル特別市 城東区 聖水洞1街 668-123
・地図:
・アクセス:地下鉄2号線トゥクソム駅から徒歩5分
・営業時間:8:00~19:00
・定休日:年中無休
・公式サイトURL:www.instagram.com/seongsu_baking_studio

聖水洞の朝、ソウルの森で過ごす静かなひととき

ソウルの森新緑が綺麗な4月の暮れのソウルの森
パンを片手に家族でソウルの森へと移動。森のベンチに腰掛けて、焼きたてのパンを頬ばりながら朝の空気を吸い込むと、心がゆっくりほぐれていきます。

ソウルの森は、季節ごとに表情を変えて、わたしたちの週末を彩ってくれる場所です。春は桜とチューリップ、夏は深い緑と虫の声、秋には黄金色に色づく並木道、冬には雪景色。

都会の真ん中にあるとは思えないほど、ここでは空が広く感じます。娘が葉っぱを拾ったり、夫がコーヒーを片手にぼーっとしたり、特別なことはしなくても、小さな豊かさが心に広がっていきます。

赤れんがの家の路地から感じる、人々の温もり

聖水洞の路地住宅地が残されているのも、聖水らしい景色
聖水洞の賑やかなエリアから少し離れた路地。ここは、喧騒のなかで人々が集まることのない、静かな住宅地です。赤れんがの住宅に囲まれたこの場所には、日常の生活が息づいています。

ソウルでは、戸建住宅よりも高層マンションに住む人が増え、こうした風景は少しずつ姿を消しつつあります。上へ上へと開発が進むソウルの街のなかで、このエリアには、戸建住宅が持つ温もりが、ほんの少しだけ残されているのです。

それが、聖水洞の隠れた魅力のひとつ。ここでは、時間がゆっくり流れているような気がします。

すっかり、日常の定番の味になった「キンパ」

ソンスキンパくまがモチーフのキンパ屋
韓国生活に欠かせない相棒といえば、「キンパ」。お店によって少しずつ変化のあるキンパですが、これだ!と思う味を見つけるのは、そんなに簡単ではありません。

聖水洞にきて、なかなかお気に入りの味を見つけられずにいたら、2年ほど前に、近くにオープンしたこちらのお店。最近は週末、ときどきここでキンパをテイクアウトして、家族で食べることが多いです。

キンパとの定番の組み合わせといえば、韓国のインスタントラーメン。インスタントラーメンと一緒にキンパを食べる。これも韓国生活でよくある日常の光景です。

■詳細情報
・名称:Seongsu Gimbap
・住所:10−1 Seongdeokjeong 3-gil, Seongdong-gu, Seoul
・地図:
・アクセス:ソウルの森駅から徒歩5分
・営業時間:平日 10:00~19:00 土曜日 10:00~15:00
・定休日:日曜日
・公式サイトURL:https://www.instagram.com/seongsugimbap_funnytongue/

漢江のリバーサイド、夕暮れの美しい風景

漢江の夕日漢江からみる夕日。ソウルタワーとのコラボが、ソウルにいるということを感じさせてくれる
漢江(ハンガン)へのアクセスの良さも聖水洞暮らしの魅力のひとつ。

漢江は、韓国・ソウルの中心を東西に流れる大きな河で、全長は約514km。ソウル市民にとっては、ジョギングやサイクリング、ピクニックなどを楽しめる、日常のなかのリフレッシュスポットにもなっています。

聖水洞に住む私の家から、漢江へは徒歩5分。週末の午後、とくに夕暮れの時間に家族やひとりで訪れることが多い場所です。聖水洞の漢江からは、南には江南、東にはロッテタワー、西にはソウルタワーや南山と、ソウルのランドマークを見ることのできる場所でもあります。

私にとってこの漢江は、ソウルのランドマークを遠くに眺めながら風に吹かれて深呼吸する時間を届けてくれる、“暮らしの隙間”に寄り添ってくれる場所でもあるのです。

とくに夕暮れどきには、空の色がゆっくりと変わっていくのを眺めながら、ソウルの街が少しずつ夜に染まっていく、その時間が好きです。

私はやっぱり聖水洞が好き

人気のエリアとして知られるようになった聖水洞。

けれど、私にとっては、パンの香りがする朝や、家族と歩く漢江沿いの道、赤煉瓦の家々の間を抜ける小道……そんな何気ない風景のひとつひとつが、この街の一番の魅力。

ソウルの暮らしのなかで、心がふっと軽くなる瞬間に出会える場所——それが、私にとっての聖水洞です。もしこの街を訪れることがあったら、ぜひ、ガイドブックにない静かな魅力にも、目を向けてみてくださいね。

ライター
貝沼和 TABIPPO CARAVAN

ソウル在住10年の複業フリーランス。2人の女の子を育てながら、ライター、SNS運用、カスタマーサクセス、コミュニティ運営、日本語教師など「人生に彩りのある選択肢を届けたい」という想いのもと多方面で活躍中。座右の名は「和をもって尊しとなし」

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