プエルトバジャルタ観光
ライター

オーストラリアワーキングホリデー2年(パース/ゴールドコースト)|中央ヨーロッパロードトリップ|宮古島リゾートバイト|北半球地球一周の船旅|など気の向くままに住所不特定生活を約6年間続ける。現在はスイスフランス語圏在住。 好きなことで自分を囲み続ける人生を日々追求中☀️

北欧の大自然、キューバの色鮮やかな街並み、サントリーニ島に沈む深い夕日。

憧れだった景色たちは、今も写真として大切に残っています。けれど、ふと思い出すのは、それを背景に”誰かと笑い合っていた瞬間”ばかり。

船の上で過ごした105日間は、ずっと誰かがそばにいる生活。誰かと語り、誰かと笑い、誰かと肩を並べて海を見つめた日々は、何よりも“人のぬくもり”にあふれていました。

それは、世界を旅した以上に”つながり”を巡る旅だったのです。

「ただ行ってみたかった」から始まった旅が、本当の目的をくれた

北海道ポスター貼り遠征時
私がピースボートで世界一周をしたのは、2018年の夏、第98回クルーズ。

当初の目的はシンプルでした。

「世界を一気にたくさん見てみたい」

それだけ。

でも飛行機で移動する旅とは違い、海を渡る“クルーズ”には、景色と景色の間に流れる「人との時間」があります。

誰かと何気ない話をしながら、何日もかけて目的地に向かう。その想像だけで、すでにワクワクしていました。

出港前には、東京のピースボートセンターでボランティアをしていました。夕方からのアルバイトの傍らに乗船費を減らすためにポスターを準備したり、配ったり。気がつけば、そこが第0章のような旅の始まりでした。

一緒にボランティアをする人たちは、私のように乗りたいクルーズから逆算して頑張る人もいれば、今はまだ学生で、卒業したら船に乗りたいと先を見据えてマイペースに頑張る人もいます。なかには退職したシニアさんで、コツコツ足を運びボランティアに励む人もいます。

ポスター貼りはいわゆる「飛び込み営業」のようなもので、快く受け入れてくれる店先があれば、厳しい目で見られることもありました。そんななかで、一緒に夢を追う仲間たちと常に支え合い、励まし合う日々を過ごしました。

一度、金銭的な理由で「やっぱり次のクルーズにしようかな」と諦めかけたことがありましたが、そんなとき心に浮かんだのは

「やっぱりこの人たちと、一緒に夏を過ごしたい」という想い。

景色や航路ももちろん大事だけど、それ以上に、「誰と行くか」も私のなかで大きな決め手でした。だからこそ、最後の最後までボランティアをやり遂げ、98回クルーズに滑り込んだのです。

横浜港出航日。次回クルーズ乗船者もお見送りに来てくれた。

船上で生まれた、もうひとつの“旅”

洋上大運動会・実行委員のチームTシャツ作成
「この旅は、ただの観光じゃない」

出航してすぐに感じました。

25ものの寄港地での体験はもちろんすばらしかったけれど、それ以上に、船上で生まれる“日常”が何よりも濃かったのです。

運動会、夏祭り、語学クラス、自主企画イベント……

たった数日間でひとつのイベントをつくりあげるのは、まるで学生時代の文化祭のよう。

朝から晩まで準備に明け暮れ、当日は実行委員として走り回り、仲間たちと共有した時間は、まさに人生の文化祭でした。

船内イベント後に乾杯
一方で、何もしない贅沢さもありました。

夕方、寄港地から戻ってデッキで夕日を眺めながら「今日どうだった?」とそれぞれの1日を話す。

そんな何気ない時間こそが、とても貴重だったと今では思います。

暇さえあればジャグジーに

「ひとりになりたい」が教えてくれた、自分らしさ

大好きな9階デッキの眺め
旅の後半、私はある違和感を抱くようになりました。

「人との関わりは好き。でも、なんだか少し疲れる……」

部屋は同年代4人でのルームシェアで、常に誰かがそばにいる日々。もちろん楽しいのですが、自分にとって何が心地よいのか、分からなくなっていきました。

そこで初めて気づいたのが、「ひとりの時間」もまた、私にとって必要だということ。

イベントに参加せず部屋で静かに過ごしたり、ひとりで海を眺めたり。そうした時間が、自分をリセットしてくれる大切なひとときだったのです。

「誰かと一緒にいたい」と「ひとりになりたい」

そのどちらも、自分の正直な気持ち。両方を認めたとき、私はようやく“自分らしさ”に近づけた気がしました。

あの旅でできた“つながり”が、今の私を支えている

同室メンバーがスイスへ遊びに来てくれた際に訪れたLac Blanc(フランス)
旅から帰国して何年も経ちますが、あのとき出会った仲間たちとは今でも繋がっています。

スイスに住む私のもとへ遊びに来てくれたり、日本に帰ったときに集まったり。

旅中はあまり話さなかった人と、帰国後に仲良くなったり。

ピースボートの旅は、ただの「世界一周」ではなく「人生のつながり」をくれる旅でもありました。

世界の絶景以上に、心に残るものがある


たしかに、世界の絶景は素晴らしいです。行きたい国をめぐる旅も、ときに大きな勇気がいるもの。

でも、旅の満足度を決めるのは、「どこへ行くか」より「誰と行くか」というときも多くある気がします。

私にとっての“自分史上最高の夏”は、どんな美しい景色よりも「人と笑い合った時間」のなかにあったのです。

旅は「自分を知る」時間でもある


ピースボートの旅は、世界を巡るだけでなく、自分の内面と向き合う機会でもありました。

人との関係性、ひとり時間の心地よさ、そして、誰とどんな時間を過ごしたいか。

そんな“気づき”に出会えるのも、旅の醍醐味でしょう。

もし、あなたが今、旅に少しでも心が動いているなら、それは人生があなたに何かを教えようとしているサインかもしれません。

All photos by Saeno

ライター

オーストラリアワーキングホリデー2年(パース/ゴールドコースト)|中央ヨーロッパロードトリップ|宮古島リゾートバイト|北半球地球一周の船旅|など気の向くままに住所不特定生活を約6年間続ける。現在はスイスフランス語圏在住。 好きなことで自分を囲み続ける人生を日々追求中☀️

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