ライター

田舎の古民家で暮らす27歳のマーケター。ゼロ日婚をした夫と2人でニュージーランドにてワーキングホリデー生活を送る。帰国後はフルリモートで会社員をしながら田舎暮らし。趣味は料理で、現地での暮らしや食文化に触れるような旅が好き。「主体的な選択で、幸せな人生をデザインできる人を増やしたい」という想いを胸に発信をしています!

旅に出る理由は、人それぞれです。美しい景色を見たいから。おいしいものを食べたいから。日頃の疲れを癒したいから。

そんな理由で旅をしていても、ふと立ち止まって考えることがあります。「本当に自分がしたいことって何だろう」「どんな生き方をしたいんだろう」と。

いつもと違う場所に身を置くと、不思議と心が敏感になります。そこで出会う人の暮らしぶりに心が動いたり、自然の美しさに感動したり。そんな瞬間に、普段は忙しさに紛れて見えなかった自分の心の声が聞こえてくるのかもしれません。

今回ご紹介するのは、小豆島で「生き方に向き合う旅」です。

オリーブ公園オリーブ公園の風車
山と海に囲まれた穏やかな島。オリーブ公園、エンジェルロード、二十四の瞳映画村といった有名な観光地があり、観光旅行の旅先としても魅力的な場所。

ですが今回は、少し違う視点でこの島を旅してみませんか。

瀬戸内海の真ん中に浮かぶこの島には、“ふたつの出会い”が待っています。それは、「つくり手の哲学にふれる時間」と、「自然の中でじぶんと向き合う時間」。

このふたつがどちらもそろっているのが、小豆島という場所なのです。

忙しい毎日のなかで見失いがちなものに、そっと気づかせてくれる。そんな旅を、あなたにご提案します。

小さな島に、深い味。木桶が育てる“本物の醤油”

ヤマロク醤油
最近、じわじわと注目を集めているのが、「木桶仕込みの醤油」。

もともと醤油は、木の桶で時間をかけてつくられていました。木桶には、たくさんの“菌”が住みついています。この菌こそが、蔵ごとの味のちがいを生み出すのです。いわば職人と菌との共同作業。

けれど今では、ステンレスタンクでの大量生産が主流に。木桶仕込みの醤油は、日本全体のわずか1%以下といわれています。その背景には、木桶をつくれる職人さんの減少という、深刻な問題がありました。

そんななか、立ち上がったのが「ヤマロク醤油」五代目・山本康夫さん。

「職人がいなくなってしまうなら、自分でつくるしかない」と、木桶づくりから始めたのです。この行動力が、「木桶職人復活プロジェクト」のはじまりでした。

小豆島の東部にある「醤(ひしお)の郷」では、そんな歴史ある蔵元たちが今も本気で醤油づくりに向き合っています。

醤油、味噌、お酢、みりん、お酒の醸造業界で、現在使われている木桶は3,000〜4,000本と言われていますが、そのうちの1,000本以上が小豆島の醤油屋が使っているという事実からも、この島が伝統的な醤油づくりの最後の砦となっていることがわかります。

木桶150年使われていた木桶
ヤマロク醤油では、現役の木桶を間近で見学できるほか、スタッフの方からていねいな説明を聞くことができます。

見学の後には、テイスティング体験も。ひとくち口に含んだとたん、深い香りとまろやかな塩味。素材や製法の違いを聞き、実際に蔵を見学したあとだからこそ、背景も含めた味の違いを楽しむことができます。もちろん気に入ったお醤油は、その場で購入可能。

醤の郷近くのホテルでは、夕食や朝食のバイキングに数種類の醤油が用意されていて、蔵ごとの味の違いを食べ比べることもできます。

醤油バイキングホテルバイキングの醤油コーナー
料理にあわせて、好みの醤油を選ぶ体験は、ちょっとした実験みたいで面白い。醤油を“いつもの調味料”ではなく、ワインやコーヒーのような“個性豊かな嗜好品”として感じる。そんな時間になります。

見学をする際はひとつだけご注意を。訪問前に納豆は食べないということ。美味しい醤油をつくる菌たちは、納豆菌だけには弱いのです。毎朝納豆を食べる方も、この日は醤油蔵の菌たちに敬意を払い、納豆を我慢しましょう。

長い歴史と伝統を守り、新しい世代に繋いでいこうとする人の想い。150年もの間醤油を作り続けてきた、歴史が詰まった木桶と、そこに棲みつく菌たち。

そんな世界に触れると、普段当たり前のように口にしていた醤油の見え方が変わり、日常にちょっとした変化が起こるかもしれません。

■詳細情報
・名称:ヤマロク醤油
・住所:〒761-4411 香川県小豆郡小豆島町安田甲1607
・地図:
・営業時間:9:00〜17:00
・定休日:年中無休
・電話番号:0879-82-0666
・料金:見学無料
・公式サイトURL:https://yama-roku.net/

家族の想いが詰まったジェラート屋さん

ジェラート島の素材を活かしたジェラート
エンジェルロードの近く。

海沿いから少し道を入っていくと、ぽつんと現れるジェラート屋さんがあります。

外観からすでに、なんだか素敵な気配。おしゃれでスタイリッシュな建物と、お手入れされた小さな庭。「こんなところに住んでみたい!」と呟いてしまうようなお店です。

サンカンシオン
「サンカンシオン」は、ご夫婦で営む小さなジェラート屋さん。

朝から仕込んだジェラートを、お昼から販売するという営業スタイルにも惹かれます。島で採れたフルーツや素材を生かしたジェラートは、どれもやさしくて自然な甘さ。一口食べるたびに、島の空気が伝わってくるようです。

実はこのお店、ご自宅の一部を改装してつくられたのだそう。島で生まれ育ったご主人が、お店を始められたときのことや、島のおすすめスポットなどを、優しくご丁寧に教えてくださりました。

店内には、娘さんが描いたオリジナルのイラストが並び、グッズも販売されています。家族それぞれの個性が、形を変えてこの場所に息づいている。

こんなご家族のストーリーに触れていると、自然と心が温かくなります。大切な人との時間について、家族との関係について、そして自分がどんな暮らしを築きたいのかについて……。

ジェラートを味わいながら、そんなことを考えてみてください。

■詳細情報
・名称:サンカンシオン
・住所:〒761-4106 香川県小豆郡土庄町甲30ー8
・地図:
・営業時間:12:00〜17:00
・定休日:不定休/主に週末に営業
・電話番号:0879-62-2078
・公式Instagram:https://www.instagram.com/sankan_shion/?hl=ja

「アートのある自然」に、自分の感性がほどけていく

小豆島は、自然だけでなくアートの島でもあります。瀬戸内国際芸術祭の会場のひとつであり、島内のさまざまな場所に作品が点在しています。

なかでも自然と融合を感じられる2つの作品をご紹介します。アートに詳しくない方にも、おすすめできるスポットです。

寒霞渓に溶け込む「空の玉」


まずは、島の中央に位置する寒霞渓。大自然を感じられる場所として、島の中でも有数の観光スポットです。

ロープウェイか車で山頂までのぼり、そこから10分ほど歩いた先にあるのが「空の玉」というアート作品。

その名のとおり、空を映す大きな玉。見る角度によって、空とも風景とも一体化して見える、不思議な存在です。鉄でできているこの作品は、時間の経過により錆色に変わり、周囲に溶け込んでいきます。

空の玉からの景色
辿り着くまでの道のりも気持ちよく、そこから見える景色も最高。大自然を見下ろしながら、日頃の忙しさを忘れる時間を過ごせるはずです。

命を感じる「はじまりの刻」

はじまりの刻
もうひとつの作品、「はじまりの刻」は、島の北西部、小高い丘のうえにあります。

卵のようなかたちのオブジェには、ひび割れた部分から小さな植物が生えています。丘の上で太陽に照らされ、夕方には夕陽を浴びて、さまざまな顔を見せてくれる。この世の命は一期一会。ひとつひとつの瞬間を大事にしよう、と思わせてくれる作品です。

ハンモックとブランコハンモックとブランコを楽しむ
この作品を見にいくには、少し下の方にある駐車場に車を停めて、登っていくことになります。その駐車場の近くには、ハンモックやブランコが置かれていて、風にゆられながら過ごすこともできます。

何も考えず、ただ揺られる時間。それは、“何もしない贅沢”を思い出させてくれます。風の音、鳥の声、波の音……。自然の音に耳を傾けながら、心の声に耳をすませてみてください。

有名スポットだからこそ、深く味わってみるという選択

エンジェルロード
小豆島で有名な観光地といえば、エンジェルロード。潮がひくと海の中に道があらわれ、対岸の島へ歩いて渡ることができます。

でもその瞬間だけを切り取って終わってしまうのは、なんだかもったいない。

エンジェルロードのさまざまな表情を楽しむために、小豆島国際ホテルに泊まってみるのはいかがでしょうか。

エンジェルロードビューの部屋なら、満ちていく海、ひいていく道の“変化”を、窓からずっと眺めることができます。

エンジェルロード部屋の窓から見たエンジェルロード
ホテルでは、海へ入るためのサンダルやタオルの貸し出しもあり、じゃぶじゃぶ足を入れて遊ぶことも。潮が引いているときは道を歩いて渡り、水位が上がってきたら道の真ん中で海にそっと足を入れてみる……。少し海に入ると、視界が全部海になります。

海
夜には、手持ち花火を楽しむための貸し出しサービスも。バケツやチャッカマンを受け取って、波打ち際で静かに花火を楽しむ時間は、大人になってからの夏のごほうびみたい。

朝は、すこし早起きして海辺を散歩。潮の音だけを聞きながら、ゆっくりとした時間を過ごせます。

こうしてゆっくりと楽しむことで、エンジェルロードは単なる映える観光地ではなく、潮の満ち引きがつくりだす自然の美しさとして心に響いてきます。その静寂な時間の中で、自分の心と向き合ってみてください。

■詳細情報
・名称:小豆島国際ホテル
・住所:〒761-4106 香川県小豆郡土庄町甲24-67
・地図:
・電話番号:0879-62-2111
・公式サイトURL:https://www.shodoshima-kh.jp/

すこしの冒険で、ちがう景色に出会える

重ね岩
旅の終わりに訪れてほしいのが、島の西部にある「重岩(かさねいわ)」。

車で細い山道を登り、さらに階段と鎖場を15分ほど登ってたどり着く、隠れた絶景スポットです。

少しだけ足元に気をつけながらの道のりですが、思ったよりスムーズに進めます。そして頂上で目にするのは、見渡すかぎりの海と空。

重岩からの景色重岩からの景色
大きな岩は、小瀬石鎚神社のご神体。そんな神聖な場所から、島全体を見下ろす時間。風に吹かれながら「来てよかった」と思える、そんな景色が広がっています。

土庄港に近いこの場所は、小豆島での滞在の最後に訪れるのにもぴったり。島を見下ろしながら、この旅で感じたことを振り返り、島への感謝を込めて「ありがとう」を伝えてみてください。

■詳細情報
・名称:重岩
・住所:〒761-4100 香川県小豆郡土庄町甲
・地図:

自分の“これから”に、そっとヒントをくれる旅

旅とは、日常を離れる時間。でもそのなかにこそ、日常の大切なことが、そっと浮かびあがってくる気がします。

職人の手仕事にふれたり、家族の営みに心を動かされたり。アートのなかで感性をゆるめて、自然のなかでじぶんの声を聴いてみる。

小豆島には、そのすべてがそろっています。

ただの観光ではなく、「出会い」と「内省」のある旅。この島で過ごす時間が、あなたのこれからを、ほんの少しやさしく変えてくれるかもしれません。

All photos by Yuka Chiba

ライター

田舎の古民家で暮らす27歳のマーケター。ゼロ日婚をした夫と2人でニュージーランドにてワーキングホリデー生活を送る。帰国後はフルリモートで会社員をしながら田舎暮らし。趣味は料理で、現地での暮らしや食文化に触れるような旅が好き。「主体的な選択で、幸せな人生をデザインできる人を増やしたい」という想いを胸に発信をしています!

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