日々の忙しさから離れ、景色を楽しみながらのんびりした時間を過ごしたい。
山登りをしたいけれど、本格的な装備はないから気軽にハイキングができる場所がいい。
そんなことを考えているあなたにオススメしたいのが、スイス中心部に位置する古都・ルツェルンです。
ルツェルンは、美しい湖の向こうにアルプスの山々が見える雄大な景色と、中世の面影を残す旧市街が魅力的な街。
スイス旅行の起点になるチューリッヒ、ベルンのどちらからも電車で1時間ほどでアクセスできるため、日帰りで訪れることができます。コンパクトな街なので1日あればアルプスのハイキングと市内観光どちらも楽しめるのが嬉しいポイント。街にはゆったりとした時間が流れ、いるだけで癒されます。
また、お隣の国、フランスやドイツとセットで手軽にスイスアルプスを訪れたい方にもおすすめ。その場合は1泊するとよいでしょう。
そんないろいろなわがままに応えてくれる街、ルツェルン満喫プランをご覧ください。
見出し
ザ・ヨーロッパの景色とはひと味違うスイス旅へ
パリ、バルセロナ、ローマ、アテネ……。ヨーロッパの観光名所といえば、美しい宮殿や教会などの歴史的建造物、どこを切り取っても絵になる華やかな街並みが魅力ですよね。そんな「ザ・ヨーロッパ」の旅を一通り経験し、次は少し違う色合いの旅をしてみたいと思っているあなたにオススメしたいのが、スイスです。
スイスは国土の約7割を山岳地が占めます。スイスアルプスの山々を訪れ、澄んだ空気と大自然に囲まれる時間は、これまでのヨーロッパ旅行とはまた違った魅力を感じられるでしょう。
今回ご紹介するルツェルンはコンパクトな街なので、1日あればアルプスのハイキングと市内観光どちらも楽しめるのが嬉しいポイント。それでは、スイスの古都・ルツェルンの魅力はもちろん、アクセス方法などをご紹介していきましょう。
1時間で行けるアルプス、ピラトゥス
まず向かうのはアルプス山脈の一部であるピラトゥス。標高は2070メートルとそこまで高くはないですが、周囲に高い山がないためとても見晴らしがよく、晴れていればルツェルンの街並みやフィアヴァルトシュテッテ湖を見下ろすことができます。
また、ピラトゥスは山頂までのアクセスも楽しみがたくさん。世界一急勾配の登山鉄道とロープウェイの2つ方法があり、行きと帰りでルートを変えるとより一層楽しめます。
ピラトゥスへのアクセスには往復チケットを買っておくと便利(5月~10月まで利用可)。この記事でご紹介したルートは、Silver Round Tripチケットで行くことができます。
往路:ルツェルン駅~電車~アルプナッハシュタート~登山鉄道~ピラトゥス
復路:ピラトゥス~ゴンドラ+ロープウェイ~クリエンス~バス~ルツェルン駅
・Golden Round Trip
往路:ルツェルン駅~船~アルプナッハシュタート~登山鉄道~ピラトゥス
復路:ピラトゥス~ゴンドラ+ロープウェイ~クリエンス~バス~ルツェルン駅
※どちらも往路と復路の手段を逆にすることが可能
チケットは公式サイトから事前予約できます。朝の時間帯は予約が埋まってしまうこともあるので、早めに購入しておきましょう。
世界一急勾配な登山鉄道で山頂へ
photo by Misato Sakaguchi
ルツェルン駅から電車で20分で、登山鉄道の出発地点であるアルプナッハシュタートに到着します。駅を降りるとすでに空気がずいぶん澄んでいることに気付き、思わず深呼吸。ここからいよいよ、勾配率480パーミル、世界一急勾配な登山鉄道に乗車します(登山鉄道の運行は5月中旬~11月中旬)。
車体を目の前にすると、その傾斜がいかに急なのかを実感。
photo by Misato Sakaguchi
山頂までの乗車時間は30分で、窓からはすでに雄大なアルプスの自然が見えます。山の斜面で草を食べる牛たちや、切り立った崖が視界を流れていき、これだけで立派なアトラクション。山頂に着く前から大興奮です。
photo by Misato Sakaguchi
先述のGolden Round Tripチケットを使えば、ルツェルン中心部からアルプナッハシュタートまでは船で行くこともできます(5月中旬~10月中旬まで)。時間に余裕がある方はこちらも検討してみてはいかがでしょうか。
山頂からは大パノラマ!本格的な装備がなくてもハイキングができる
photo by Misato Sakaguchi
さて、終点の駅を降りるとすぐに展望台にたどりつきます。テラスに出ると、そこには大パノラマの絶景が!ピラトゥスは周囲に高い山がない独立峰です。そのため、ルツェルンの街や雪が残った山肌、フィアヴァルトシュテッター湖を見下ろすことができ、その壮大な美しさに言葉を失います。
展望台から10分ほど上るとエーゼル峰に到着。道はしっかり整備されているので安心して登ることができます。
ちなみに市街地に比べるとグッと気温が低いため、夏でも長袖の羽織りものを持っていくといいでしょう。
展望台の建物内にはトイレやお土産ショップ、カフェなどがあり、アルプスの大自然を見ながらコーヒーを一杯、なんて贅沢もできてしまいます。
photo by Misato Sakaguchi
また、時間が合えばアルプホルンというアルプスで伝統的に使われてきた木製の管楽器の演奏を聞くことができます。長さは3~4メートルほどあり、先端がぐるりと曲がった特徴的な形です。低く深い音色がアルプスに響き渡るのを聞いていると、すーっと心が穏やかになっていくでしょう。
さて、ここまででも存分にアルプスの大自然を感じることができますが、時間と体力に余裕がある人は往復1時間半ほどかけてトムリスホルンというピークまでハイキングするのもいいかもしれません。公式サイトでは難易度”easy”に分類されており、整備された道が多くはありますが、断崖の細い道もあるため慎重に。
十字架があるところがオーバーハウプト展望台。その先にトムリスホルンがある photo by Misato Sakagushi
アルプスの中をスライダーで1キロ突き抜ける!
photo by Misato Sakaguchi
ピラトゥスにはハイキング以外の楽しみもあるんです!山頂からロープウェイで下って行った先、フレクミュンテック周辺にはアスレチックやスライダーなど、体を動かして遊べる施設がたくさんあります。
tobogganという、ソリに乗って滑り台を下っていくアトラクションは、全長1キロ以上。大自然の中をスピードに乗って滑り降りていく経験は、日常ではまずないこと。その爽快感はたまらないはずです。
また、アスレチック設備も充実。グライダーや、高い木と木を結ぶように吊るされた丸太をはしごのように進んでいくアクティビティなど、多彩な種類が用意されています。眼下にアルプスを見ながら体を動かせば、すっかり童心に帰れるでしょう。
photo by Misato Sakaguchi
フレクミュンテック周辺はなだらかな遊歩道が続き、カフェステラスもあるので、のんびり歩いたり、アスレチックを楽しんだあと軽食を取りながら休憩することもできます。
アクティビティの詳細はこちらをご覧ください。
半日でルツェルン市内観光
アルプスの大自然を満喫したあとは、ルツェルンの市内観光を楽しみましょう。
フレクミュンテックからはゴンドラとバスを乗り継いでルツェルン中央駅まで戻ります。駅の目の前にはフィアヴァルトシュテッター湖が広がり、市街地に近づくにつれロイス川へと変化。青緑の美しい水辺が街中に横たわっていることで、ルツェルンの街に流れる時はどこかゆっくりで穏やかなように感じました。
見どころは駅と旧市街の周辺に集まっているので、徒歩で周れます。
ヨーロッパ最古の木造橋、カペル橋
photo by Misato Sakaguchi
駅を降りて周りを見渡せば、川の中に立つかわいらしい八角塔と屋根がついた趣のある木造の橋が目に入ります。これがルツェルンのシンボル、カペル橋。
湖からの敵の侵入を監視する巡視路として造られ、1333年に完成しました。木造の橋としてはヨーロッパ最古です。橋の梁には守護聖人と街の歴史を描いた三角形の絵画が110枚も掲げられています。
photo by Misato Sakaguchi
1993年に火災により一部が焼け落ちてしまったそうですが、今はきれいに修復されています。全長は約240メートルほどで長くはないものの、木に響く足音を聞きながらこの絵画を眺めていると、あっという間に時間が過ぎていきます。夏には花が飾られ、いっそうかわいらしい雰囲気に。
photo by Misato Sakaguchi
・名称:カペル橋(Kapellbrücke)
・住所:Kapellbrücke, 6002 Luzern, スイス
・地図:
・アクセス:ルツェルン中央駅から徒歩5分
・営業時間:24時間
・定休日:無休
・料金:無料
川沿いのテラスでランチ
photo by Saeno Okuyama
駅を出てカペル橋を渡ると、川沿いにレストランが立ち並びます。どのお店にもテラス席が多く設置されているので、晴れていればぜひテラス席で景色を楽しみながら食事をいただきましょう。
おすすめは市庁舎の一階にあるビアホール、Rathaus Brauerei。レストラン奥には醸造所があり、ここで造られたビールが提供されています。エメラルドグリーンのロイス川とカペル橋を見ながらビールをいただく至福の時間を過ごせますよ。
・名称:Rathaus Brauerei
・住所:Unter der Egg 2, 6004 Luzern, スイス
・地図:
・アクセス:ルツェルン中央駅から徒歩7分
・営業時間:【11月~3月】日曜・祝日:10:00~23:00 火曜・土曜:8:00~24:00 月曜・水曜~金曜:10:00~24:00
【4月~10月】日曜・祝日:9:00~23:00 火曜・土曜:8:00~24:00 月曜・水曜~金曜:9:00~24:00
・定休日:Ash Wednesday
・電話番号:+41 41 410 61 11
・公式サイトURL:https://www.rathausbrauerei.ch/en/
中世の面影を残す旧市街をお散歩
photo by Misato Sakaguchi
お腹が満たされたら、旧市街をお散歩。フレスコ画が壁に描かれた建物が点在していて、少し歩くたびに「これは何だろう?」と思わず足を止めシャッターを切りたくなる景色が続きます。
センスのいいお土産屋さんやショッピングモール、スーパーマーケットもあるので、ここでお土産を買うのもよさそうです。
旧市街は迷路のように入り組んでいますがこじんまりとしているので、迷って見当違いな場所に行ってしまう心配はあまりありません。地図をしまって気の向くままに、中世の雰囲気を感じながらぶらぶらしてみましょう。
photo by Misato Sakaguchi
街とアルプスの山々を見渡せるムーゼック城壁
photo by Misato Sakaguchi
旧市街から歩いて10分弱でムーゼック城壁へ到着。14世紀後半に建てられた城壁で、現在は9つの塔を含む全長約900メートルが残っています。これは現存する城壁としてはスイス最長です。9つの塔のうち3つは一般公開されており、城壁の上をつたって内部に入ることができます。
photo by Misato Sakaguchi
そのなかの1つ、時計塔には1535年に作られたルツェルン最古の時計がかけられていて、今も現役で動いています。ルツェルンにある教会などの鐘は、すべてこの時計塔の鐘より1分遅れて鳴らされることになっているそう。
階段の上り下りが続くので少々体力を使いますが、城壁の上からは旧市街とアルプスの山々を見晴らすことができ、のどかなその景色に疲れも吹き飛ぶでしょう。
・名称:ムーゼック城壁(Museggmauer)
・住所:Auf Musegg, 6004 Luzern, スイス
・地図:
・アクセス:ルツェルン中央駅から徒歩20分
・営業時間:4/1~11/1 8:00~19:00
・定休日:11/2~3/31
・料金:無料
・公式サイトURL:https://www.museggmauer.ch/
ルツェルンの象徴的な彫刻、ライオン記念碑
photo by Misato Sakaguchi
いよいよ次が最後のスポットです。ムーゼック城壁から歩いて約15分、カペル橋に並ぶルツェルンのもうひとつのシンボル、ライオン記念碑へ向かいます。
1972年、フランス革命の際に民衆からルイ16世とマリー・アントワネットを守るため、786名の傭兵が犠牲になりました。この記念碑は彼らの勇敢さを讃えるためにつくられたものです。スイスは国としては戦争に対し中立的な立場を取っていましたが、生活のために戦う傭兵が多くいたそう。
幅約10メートル、高さ約6メートルあり、崖の岩から掘り出されているため迫力満点。ライオンの脇腹には槍がささり、今にも息絶えそうな表情を浮かべています。
悲しい歴史と傭兵たちの勇気に、しばし向き合う時間になるでしょう。
・名称:ライオン記念碑(Löwendenkmal)
・住所:Denkmalstrasse 4, 6002 Luzern, スイス
・地図:
・アクセス:ルツェルン中央駅から徒歩10分
・営業時間:24時間
・定休日:無休
・料金:無料
・公式サイトURL:https://www.loewendenkmal-luzern.ch/
川沿いのベンチで静かに流れる時を味わう
photo by Misato Sakaguchi
ここまでルツェルン市内の見どころを紹介してきましたが、筆者が思うルツェルンの魅力は、華美ではない素朴な美しさをたたえた景色と、ゆったり流れる時間です。
街中を歩く人たちものんびりとしていて、次々と観光地をまわる忙しい旅ではなく、ただそこにいることそれ自体を味わうような、静かに心が満ちていく感覚になりました。
特別なことをしなくても、ただ歩いているだけで頭と心にあるモヤモヤがすーっと溶けていく。旅の最後は、エメラルドグリーンの美しいロイス川のほとりで、そんな贅沢な時間で締めくくってみてはいかがでしょうか。
大自然と素朴な風景に癒されるルツェルン1日トリップへ
アルプスへ気軽にアクセスすることができ、本格的な登山装備がなくてもハイキングが楽しめるうえに、中世にタイムスリップしたかのような風景を持つ街、ルツェルン。スイスを訪れた際は、ぜひ1日時間を取って、足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。