福岡
ライター
貝沼和 TABIPPO CARAVAN

ソウル在住10年の複業フリーランス。2人の女の子を育てながら、ライター、SNS運用、カスタマーサクセス、コミュニティ運営、日本語教師など「人生に彩りのある選択肢を届けたい」という想いのもと多方面で活躍中。座右の名は「和をもって尊しとなし」

2025年も残すところ3ヶ月。あなたは、今年やりたいことをやり尽くせましたか?

私は、毎年やりたいことリストを年始に書くのを習慣にしています。そのなかに必ず入れているのが、「ひとり旅をすること」。今年は6月にひとり旅を達成しました。

ママである私が毎年一回ひとり旅をしはじめたのは2024年から。そのとき、私にとって「ひとり旅」という時間が日常をより豊かに過ごすために必要なものだと実感したからです。

今日はそんなママのひとり旅について、綴ってみたいと思います。

「もう、私には旅なんて必要ない」

私は幼稚園の卒園文集で「将来の夢は何?」と聞かれたとき、「お母さん」と書いていました。それくらい子どもを持つ未来が私にとっては当たり前のことだと思っていました。

1人目の子どもを出産したとき、嬉しいとか、幸せとか、そんな言葉で表すのは、全て滑稽な気がするほど、言葉にできないような感情を覚えました。きっとこれからの人生で、どんな景色に出会っても、どんな成功を手に入れたとしても、あの感情に勝るものなんてないと確信しています。

そのくらい、子どもを産んだのは、私の人生にとってとても大きな出来事でした。そして、子どもができてしばらく、大好きだった「旅」でさえ必要のないくらい、私は子育てに没頭していました。

「もう旅に出ることはないかもしれない」
「旅以上に大切なものができたし、子どもを授かるまでに満足に旅に出かけることができたから、思い残すことはない」とそう思っていたほどでした。

「ママ」の私が毎年ひとりで旅をする理由

出発の飛行機
去年、出産後初めてひとり旅に出かけました。じつに9年ぶり。そのときに目にした景色、心で感じたことは、出産前の私が旅で見てきたものと、似ているようで、全く別のものでした。

ママになってから、普段の生活のほとんどの時間を「誰かのため」に生きています。大部分は子どものため、そして仕事をするときは、「クライアント」や「会社」のため。

そうやって、誰かのために生きて、貢献することは、私にとって生きがいでもあるけれど、「何が好き?」と問われたときに、何も答えられないくらい感情を失ってしまっているのが日常でした。そのことに気づいたとき、私は、私自身について何も語れなくなっていて、子どもたちが大きくなったときに、空っぽの自分を生きるのではないかと、怖くなりました。

私にとって子どもの存在は大きなものですが、ときどき「ママ」である重圧が、必要以上に私自身を押し潰していくような、心が壊れてしまうような、そんな気持ちになることもあります。

だからこそ、ひとり旅に出ることに意味がありました。「ママ」という鎧をいったん脱ぎ捨てて、誰にも合わせない、自分だけの時間を過ごす。

自分の時間を過ごすだけでなく、ライフステージをいくつも越えてきた今だからこそ、見えるもの、感じられることがある。そういうことをもっと感じていたいと思ったのが、旅に出る大きな理由です。旅を通しての新たな発見は、これからの自分の人生や、家族の人生をどうデザインしていくのかを考えるうえで、とても大切な視点でもありました。

だから私は、毎年一度のひとり旅をウィッシュリストに入れることにしました。ひとり旅に出かけることで、「ママ」でもなく、「誰かの妻」でもなく、ただ等身大の「私」として感じられることを確かめることにしています。

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今年のママのひとり旅の行き先は「福岡!」

今年のひとり旅の行き先は「福岡」。理由はアクセスの良さと、そこに、会いたい人がいたから。2泊3日の時間を自分のためだけに過ごすことを実行した3日間でした。

今回は気ままなママのひとり旅の記録を、みなさんにお届けしたいと思います。

初日に向かったのは「星野源」のライブ

星野源
今回の旅行の最大の目的で、旅行のきっかけでもあったのが大好きなアーティストである「星野源」のライブでした。じつは、ライブに参戦したのは人生初。

ライブで感じる一体感、生演奏、生声。ライブ会場での熱気。それはもう本当に、心のエネルギーが湧いてくるのを感じました。すごい、本当にすごかった……

次の日の朝、友人と散歩しながらモーニング

モーニング
今回はひとり旅とは言いつつも、現地で友人と会う時間もありました。気の合う友人との語らいは次の人生の一歩をどう踏み出すのかを考えさせてくれます。旅先だからこそ想像力が膨らみ、「当たり前」からの脱出がより容易になる。体力が許すなら、きっと何日も、何ヶ月も話し続けられる友人との時間は、本当に最高の時間です。

ホテルやカフェで仕事

Book Hotel本に囲まれると、仕事も捗る
今回はワーケーションも兼ねていたので、仕事の予定も少しありました。旅先で仕事をすると、ちょっとフワフワした気持ちになります。

ひとり旅の間に仕事をすることの何がいいかというと、一日の制限時間がないことです。普段は娘のお迎え時間に合わせて「超」集中して仕事をこなしていますが、終わりの時間がない仕事時間は、普段より余裕が生まれるので、気づかないことにも目がいきます。こんな時間も、とっても贅沢に思いました。

歩いて、歩く。そしてフラフラして、アンテナがたったところでご飯

福岡、朝定食こういう赤提灯が私好み。定食屋最高!
子どもと一緒だと、「自分が食べたいものを食べられない」がデフォルト。「子どもでも食べられるもの」「子連れでも良さそうなところ」。そんな条件を立ててお店を探すのが日常になりました。ふらふらして、いいなと思うお店に入ることなんてありません。

じつはそうやってフラフラして偶発的にであったお店に入ることで、自分の好みが浮かび上がってくる。これはひとり旅でなければ経験できないことだから、私はあえていつもフラフラしてお店を探しています。

夕日を見るぞ!と電車とバスを乗り継いだのに、結果は見れず。

夏至の日が近かったこの日、糸島市の二見ヶ浦というところで、夫婦岩の間から夕日が沈むのを見られるという情報をキャッチ。仕事終わりに泊まっていた天神のホテルから電車とバスを乗り継いで夕日を見に出発しました。

でも、旅にはハプニングもつきものです。ぼーっとしていたら電車を乗り間違えて、駅に到着したら、結局バスの時刻に間に合わず。次のバスはなんと1時間後だと知り、それに乗ったら今度は天神に戻るバスに乗れないことを知ったので、結局夕日は断念しました。

夕日を見ることはこの日の最大の目的でもあったので、ちょっと残念ではありましたが……

福岡のある町の夕日残念だったので、駅付近を散策し、夕日らしきものをパシャリ
普段は大都会のソウルに住んでいるので、交通機関で困ったことはほとんどありません。5分間隔でバスが来る、とても便利な生活をしていて、時刻表を調べるような基本的な準備ができない自分がいることにも気づくことにもなりました。少し便利さから離れる。そんな経験があえてできたのも、私にはすごくよかった。

普段の生活が便利すぎると、不便なものを許容できなくなることがあるかもしれない。でも、やっぱり不便さもしっかり楽しみたい。今回、あえての不便さを実感できたことが、とってもいい旅の思い出になりました。

ふらっと立ち飲み屋さんに立ち寄り隣の人との会話を楽しむ

立ち飲み屋さん安くて、美味しくて、特別だった立ち飲み屋さん
旅先でやりたかったこと。それは立ち飲み屋さんにいくことでした。

子連れでは絶対にいけないところだから、今まで行ったことがなくて、ずっと憧れていました。

立ち飲み屋さんに入るとき、普段慣れないことをしたので、少し緊張しました。人との距離感の取り方、注文の仕方、全て初めての経験で戸惑いもありました。それでも、美味しいお酒と、美味しい一品料理がたくさんあって、心が溶けていく。

食を共にするという空間では、自然に隣の人とちょっとした会話が弾みます。こんな一期一会を楽しめるのもまた、ひとり旅のいいところです。

大切な人を大切にするために、私はひとり旅を続ける

福岡で過ごした3日間は、私にとってかけがえのない「自分を取り戻す旅」になりました。ひとりで歩く時間、偶然の出会い、不便ささえ楽しめた瞬間。それらはどれも、日常をもっと愛せる自分を育ててくれた気がします。

ひとり旅は、家族を手放すのではなく、もっと大切にできるようになるための魔法のような時間です。ひとり旅に出ることで、私は私の現在地を確認するように、日常を少し外から見るようにしています。

私はこれからも、年に一度は必ず家族から離れて旅に出ます。その時間が、私の日常をもっと彩深いものにしてくれると感じています。

みなさんも、来年のウィッシュリストに「ひとり旅」を入れてみませんか?

All photos by Nodoka Kainuma

ライター
貝沼和 TABIPPO CARAVAN

ソウル在住10年の複業フリーランス。2人の女の子を育てながら、ライター、SNS運用、カスタマーサクセス、コミュニティ運営、日本語教師など「人生に彩りのある選択肢を届けたい」という想いのもと多方面で活躍中。座右の名は「和をもって尊しとなし」

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