ライター

福島県出身で1990年生まれ。70カ国以上を旅するほどの旅好き。コロナ禍では国内を巡り、世界遺産検定マイスターに合格しNPO法人世界遺産アカデミー認定講師に就任。IT系広告代理店で広告運用コンサルタントとして働きながら、小笠原諸島のアンバサダーとしての活動も行う。

世界最大級の一枚岩として知られるウルル。
またの名をエアーズ・ロックという。

オーストラリア大陸のほぼ中央に位置し、「地球のへそ」とも称されるこの場所は、太陽が当たると真っ赤に輝き、その姿で世界中の人々を魅了してきた。刻々と変わる色彩はあまりに神秘的で、太古の昔から信仰の対象とされてきた理由にも頷ける。まるで大地そのものに力が宿っているかのような、不思議なエネルギーを感じさせる場所だ。

そんな聖地に、長年思いを馳せ続け、ようやく実際に訪れることができた。

なぜウルルは世界遺産なのか──空から始まる物語

国内線とはいえ3時間以上のフライトは、オーストラリアの国土の広大さをあらためて実感させてくれる。機内から地上を見下ろすと、次第に緑や建物は姿を消し、赤茶けた大地が広がっていく。そしてその中に、ぽつりと浮かび上がる赤いウルルが見えた瞬間、思わず心が躍った。

テレビ番組や映画の舞台として取り上げられることも多く、名前を知らずともその姿を目にしたことがある人は少なくないだろう。

到着時は左窓側(進行方向左側)、出発時は右窓側(進行方向右側)に座ると必ずウルルが見える
ウルルは、その壮大な自然景観や固有の動植物が評価され、1987年に世界自然遺産に登録された。さらに1994年には、先住民アナング族にとって極めて重要な聖地であるという文化的価値も認められ、複合遺産として登録されている。自然と文化、その両方が世界的に評価された、非常に貴重な場所なのだ。

ちなみに「ウルル」という名称は、先住民アナング族が古くから使ってきた本来の名前であり、「エアーズ・ロック」はイギリス人探検家によって名付けられた西洋名である。

砂漠の土地にポツンとある巨岩、美しすぎる

世界遺産情報
正式名称:ウルル=カタ・ジュタ国立公園
登録年:1987年(1994年登録基準追加)
登録理由:地球規模で貴重な自然と先住民にとって極めて重要な聖地であるため

辺鄙だからこそ、驚きがあったウルル滞在

世界中の人々を魅了する場所でありながら、実際に訪れてみると、驚かされることが多かった。

ウルル観光の拠点「ユラーラ」というコンパクトシティ

ウルルを訪れる人は、必ず麓にあるリゾートエリア「ユラーラ」に滞在することになる。ここには5か所のホテルをはじめ、土産物店、スーパーマーケット、美容室、診療所などが集まり、観光と生活の拠点となっている。ただし、これらは観光客のためだけの施設ではない。

30km離れているがユラーラからでもはっきりと見えるウルルの巨大さ
ウルル周辺には他に何もなく、もっとも近い主要都市であるアリススプリングス(人口約3万人)ですら約500km離れており、車で5時間以上かかる。ガイドや空港関係者など、ウルル観光に関わる800〜900人ほどの住人すべてがこの地で生活しているため、必要最低限のインフラが整えられているのだ。

巡回しているシャトルバスは同一方向にしか走っていないのが注意点
そのため「リゾート地」というよりも、「コンパクトシティ」と表現したほうがしっくりくるかもしれない。街には20分おきに無料のシャトルバスが巡回しており、観光客も住人も自由に利用できる。規模が小さい分、迷うこともなく、安全で穏やかな空気が流れている。

まさかの日本人常駐。ウルル旅の安心ポイント

そしてもうひとつ驚いたのが、日本人ガイドスタッフが3名も常駐していることだった(2025年9月現在)。現地人が日本語を話すケースは珍しくないが、生粋の日本人が複数名、この地に住み込みでガイドをしているのは非常に珍しい。しかもワーキングホリデーではなく、現地採用として長年勤務し、会社の寮で生活しているという。

ウルルの成り立ちやアナング族について、ガイドから丁寧に説明を受ける
日本人観光客が多く訪れる土地であることを改めて実感すると同時に、日本語で気軽に質問できる安心感は想像以上に大きかった。世界遺産のことや現地での暮らしなど、さまざまな話を聞くことができ、それもまた印象深い体験となった。

5年越しに叶えた、ウルルを巡る3つの時間

ウルル旅行は、ちょうどコロナ禍と重なってしまい、出発直前でやむなく断念した過去がある。
あのときから約5年、ずっと心のどこかでウルルへの思いを抱き続けていた。だからこそ今回は「ようやく辿り着けた」という気持ちが強く、2泊3日という限られた日程ながら、主要なツアーを組み合わせてウルルを余すことなく満喫する旅となった。

刻々と色を変える聖地──サンセットツアー

到着初日に参加したのは、定番のサンセットツアー。

展望スポットに到着すると、ガイドが簡単な解説をしてくれた後、シャンパンやハム、チーズなどの軽食が振る舞われる。日が傾くにつれて、ウルルの表情は刻一刻と変化していく。オレンジ、赤、紫と、太陽の角度や雲の具合によって色味がまったく違って見えるのが面白い。

太陽が当たって真っ赤になるウルルはほんの一瞬の時間。見逃さないように。
静かな砂漠の中で、グラスを片手にただウルルを眺める時間はとても贅沢で、気がつけば何度もシャッターを切っていた。写真好きにはたまらないツアーだと思う。

一枚岩を歩くという体験──ベースウォークツアー

翌朝はまだ空が暗いうちに起き、モーニング・ベースウォークツアーへ参加した。

まだ薄暗い中をひたすら歩いていく
ウルルの外周をぐるりと一周する約10.6kmのウォーキングツアーで、所要時間はおよそ4時間。実際に間近で見るウルルは想像以上に巨大で、「本当にこれが一枚岩なのか」と何度も不思議に感じるほどだ。道中では、先住民アナング族が残した壁画や、信仰に関わる遺構をガイドが丁寧に解説してくれる。単なるハイキングではなく、自然と文化の両方を学べるのがこのツアーの魅力だ。

一本道なので道に迷うことはない。ところどころに現在地を示す案内もある
道は平坦だが、距離はしっかりあるため、体力に自信のある人向き。それでも、角度や距離によってまったく違って見えるウルルの姿を味わえるので、時間に余裕があればぜひ体験してほしい。

太古に描かれたとされる動物や植物などの壁画もくっきりと残っている

夜明けともう一つの聖地へ──サンライズ&カタ・ジュタ

旅の締めくくりに参加したのが、サンライズツアーとカタ・ジュタツアー。

まだ冷たい空気の中で迎える朝、朝日を浴びて徐々に赤く染まっていくウルルは、サンセットとはまた違った神秘的な美しさがある。何度見ても飽きることがなく、ただ黙ってその変化を見つめていた。

ウルルの背後から登る朝日の姿も神秘的
その後向かったのが、ウルルとともに世界遺産に登録されているカタ・ジュタ(オルガ岩群)

カタジュタの奇岩たちも圧巻だ
先住民の言葉で「たくさんの頭」を意味し、36個以上の巨大な岩が連なる姿は、ウルルとは対照的に荒々しく力強い印象を受ける。ここもアナング族にとって非常に神聖な場所で、今もなお信仰の対象となっている。谷間を歩くウォーキングルートでは、風の音や岩に囲まれる感覚が印象的で、自然のスケールの大きさを全身で感じることができた。

ゴツゴツとした岩がむき出しているのがカタジュタの特徴でもある
ウルルだけでも十分に圧倒されるが、時間が許すならぜひカタ・ジュタにも足を運んでほしい。両方を訪れることで、この地が特別な場所として大切にされてきた理由が、より深く理解できるはずだ。

聖地カタジュタへ入れるエリアも厳重に管理されている

簡単には辿り着けなかったからこそ、心に残る場所

長年、ただ写真や映像の中で思いを馳せてきた聖地ウルル。

実際に訪れてみてまず驚かされたのは、その圧倒的な知名度とは裏腹に、想像以上に人里離れた場所にあるという事実だった。長い移動時間、何もない一本道、人工物の少なさ。そのすべてが「簡単には辿り着けない場所なのだ」と静かに教えてくれる。

神聖な場所であるが故に、近距離のウルルでは撮影禁止エリアがあった
だからこそこの地の自然や文化、そして先住民が守り続けてきた価値が今もなお色濃く残っているのだと実感する。何千年、何万年という時間を超えて佇み続けるウルルは、見る者に何かを語りかけてくるようで、言葉にできない感情が胸の奥に積もっていくようだった。

聖地であることと安全面の配慮から2019年でウルルは登頂禁止となった。白い線は当時の登山道の名残だ
夕焼けに染まる瞬間も、朝日に包まれる時間も、ただ黙ってそこに立っているだけで、不思議と心が整っていく。ここは「観光地」という言葉だけでは収まらない、確かに“聖地”と呼ばれる場所なのだと思う。

朝日で真っ赤に染まるウルル
この大地のエネルギー、この静けさ、このスケール感を、ぜひ多くの人に肌で感じてほしい。きっと帰る頃には、ウルルがただの旅先ではなく、心のどこかに残り続ける特別な存在になっているはずだから。

All photos by Tamami Mizunoya

ライター

福島県出身で1990年生まれ。70カ国以上を旅するほどの旅好き。コロナ禍では国内を巡り、世界遺産検定マイスターに合格しNPO法人世界遺産アカデミー認定講師に就任。IT系広告代理店で広告運用コンサルタントとして働きながら、小笠原諸島のアンバサダーとしての活動も行う。

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