ライター
Norito Takeuchi あおもり創生パートナーズ

青森市生まれの地域デザイン系コンサルタント会社役員。地方銀行系列の会社に所属し、地域と地元企業が元気になれるよう、青森県のあちらこちらで地域づくりのお手伝いをしています。ふるさとの文化、自然や食が大好きで、週末は、青森県を囲む3つの海をフィールドに、ほぼ、お魚さんと遊んでいます。


調理体験をしながら、ホストと雑談。これも民泊のお楽しみ
私とカメラマンの宿泊先は、農家ではなく、黒石市で「津軽三味線カフェ」を営む方でした。カフェの奥に民泊用の部屋も備えているお宅でした。民泊先では、厨房で野菜のカットなど、簡単な調理体験をし、食器を運び、地元のお肉や野菜をいただきながら、店主から津軽三味線のお話などを聞くことが出来ました。

ちなみに、手の消毒やマスクへの配慮はもちろんのこと、食事のとりわけ用の箸も個人使いとするなど、徹底した感染症対策がなされていました。

著名な奏者でカフェの共同経営者でもある三味線の先生が、たまたまお時間があるということで、食後に素晴らしい生演奏を聴かせてもらえました。しかもたった二人で。

外も十分暗くなってきましたので、店主の車で、平川市の農家蔵ライトアップ視察に出かけました。ちょうど雪もやみ、雲の間から月が顔を出す中、スポットライトを浴びた農家蔵と、灯篭が並ぶ街並みはとても幻想的でした。

津軽の田舎町で年にたった1夜だけひっそりと行われる行事。写真撮影に訪れたとおぼしき方々を幾人か見かけましたが、ほとんどの人には知られていない、しかし、地域の方々が農家蔵の文化と歴史を後世に残すため、考案し、脈々と引き継がれている地域の行事です。


幻想的な農家蔵ライトアップ
その美しさを見た、地域文化の素晴らしさを感じた― それだけではなく、ライトアップ行事に少しでも関わることができた自分事の感覚が、本ツアーならではの価値だと感じました。できることなら、これからもっとたくさんの方が当地を訪れ、地域の文化を地元の方々と共に守り育てていく、そんな風になっていけば素敵だと思います。

さらに宿泊先へ帰ってからは、店主の指導で三味線体験をさせていただきました。「さくら さくら」を単音で弾いてみるレッスンです。小一時間、悪戦苦闘しながらも、津軽三味線をとても身近に感じるようになったひと時でした。

おもてなしや食事に加え、体験のサプライズ。泊まったお宅により、内容は違ったでしょうが、私の中ではこれまでの民泊の概念を超えたおもてなしでした。

民泊先とお別れ、深浦の人参掘りへ向かう

翌朝、昨日のご対面と同じ場所で、参加者全員と受け入れ家族の皆さまで記念撮影をしました。ご時世柄、握手ははばかられるので、お世話になった御礼はグータッチ。SNSの友達申請もあちらこちらで行われていました。


民泊先とお別れ・中高生体験ツアーなら、ここで号泣(バスガイド談)
9:00過ぎにバスは出発です。出発時点ではバスの後ろから太陽が差し込んでいました。黒石インターから浪岡インターを経由で津軽道に入ります。再び太陽は雲隠れし、雪に変わりました。またしても岩木山の雄姿は見えません。

途中、鰺ヶ沢町「海の駅わんど」で休憩30分を挟みました。ここには、地元出身力士の舞の海などをたたえる相撲館や、赤い靴の女の子と両親の銅像、わさおの記念写真ボードなどがあります。

お土産は、長谷川牧場の冷凍ハンバーグや、地物の海産珍味類、リンゴのお菓子などが好評だった模様です。

荒れる日本海を右に眺めながら一路深浦町へ。深浦町の中心部では、北前船ゆかりの古刹円覚寺の前を通り抜け、旧岩崎村方面へ向かいます。雪は降っていますが、風で飛ばされてしまうため、この辺は積雪がほとんどありません。

漁師のお宅で超豪華ランチ

十二湖の入り口手前、沢辺漁港のそばにある鶴田漁業(漁家レストラン)で、豪華な漁師飯を昼食にいただきました。先付けは、アンコウのとも和え、深浦人参とマダラの子あえ、そしてエゴ天(地元の海藻加工品)の3点セット。

お造りはメインが寒ヒラメで、新鮮なヤリイカの寿司とハタハタの飯寿司が添えられています。酢の物はシャキシャキの岩モズク酢、焼き物はメダイのかす漬焼きです。

揚げ物はカワハギのフライ、さらにアジの南蛮漬けもあり、汁物はホッケのつみれ汁と、旬のお魚フルラインナップ、ボリューム満点のランチでした。鶴田漁業は漁業者であり、水産加工と漁家レストランもやっています。


民家で超豪華漁師飯ランチ。食べきれないほどボリューム満点!

■詳細情報
・名称: 鶴田漁業
・住所:〒038-2201 青森県西津軽郡深浦町沢辺沢辺18−1
・地図:https://goo.gl/maps/6guFWGMjUxkf6Xzk7
・電話番号:0173-77-2673
・営業時間:7:00〜20:00(予約制)
・公式サイトURL:http://fukadoko.jp/spot-1-21/

ふかうら雪人参の収穫体験


寒さの中で極限まで甘味を蓄えた「ふかうら雪人参」
昼食の後、バスは舮作興農組合に向かいました。漁家レストランから比較的近くですが、高台に上っていきます。丘の上にある広大な農地でさまざまな野菜を栽培しています。

ニンジン畑に到着すると、皆にLLサイズの厚手のビニール手袋が配られました。自分の防寒手袋の上に装着してくださいと指示がありました。早速、吹雪の中、ニンジンを掘り起こします。重機で雪を除けたところに人参の葉が見えているので、収穫は難しくありません。

しかし、粘着質の土が、手袋にまとわりつき、土をとるのが大変です。葉はその場でちぎりとり、根の部分だけをコンテナに放り入れます。あっという間に、一人あたり10~20本程度は収穫しました。

バスを汚すといけないので、お湯を浅く張った大きなコンテナが準備され、長くつごと入り、靴の泥を洗い流すシステムです。一連の体験は非常に寒い中で行われましたが、テキパキと進められるので、つらくはありません。体験ツアー受け入れの経験が、しっかりと積み重ねられている印象を受けました。

驚きのニンジンジュース


洗いたてのニンジンの山から、自分のジュース用を一本チョイス
バスで加工場へ直行し、ビニール袋いっぱいに詰め込んだ各自の人参を洗浄機に投入しました。先に洗いあがっていた人参をお土産にいただき、さらにジュース用に適したサイズの人参をひとり一本携え、事務所の2階へ上がります。いよいよニンジンジュースの試飲会です。

「ふかうら雪人参」は、冬に収穫することにより、ニンジン自体がもつ、寒さで凍らないよう身を守る生理機能が働いて糖分が蓄えられ、野菜とは思えないフルーティな甘さとなるのです。 収穫直後のニンジンは、糖度9度前後、高いものでは12度を超えるものもあるそうです。

収穫体験からずっとリードしてくれた舮作興農組合の新岡代表理事と奥様にお手伝いいただき、ひとり分ずつニンジンジュースを絞り、飲みました。ニンジンパンも振舞われました。

ニンジン臭も、えぐみも一切感じないおいしいジュースに、誰もが感動の声を上げ、不思議な表情を隠せません。

雪の下で蓄えた甘みはもちろんなのですが、そのクリーミーでさわやかな味覚は経験しないとわからないと思います。今回のツアーに参加したテレビでおなじみの先川栄蔵さんも「ミルキーな感じ。でもさっぱり、スッキリしている。美味しーい」と表現していました。


搾りたてのニンジンジュースはクリーミーな味わい。信じられない

■詳細情報
・名称: 舮作興農組合
・住所:〒038-2327 青森県西津軽郡深浦町舮作堰根152
・地図:https://goo.gl/maps/7ZCDw5cxMVmWmhFp6
・電話番号:0173-75-2120
・営業時間:お問い合わせは電話または公式サイトからおねがいします
・公式サイトURL:http://www.henashi.jp/

冬の津軽路 グリーン・ツーリズムで学んだこと

ニンジン畑にお別れをし、帰路は「風合瀬イカ焼き村」での休憩をはさんで、一気に新青森駅へ向かいました。17:30には駅前で解散となりました。

今回の学びは、なんといっても「青森県津軽地方の冬体験」はかなり魅力的であることを知ったことです。初めにお知らせしたように、コロナ禍の中、今回の参加者は皆さま地元青森県の方々でした。

居住エリアはさまざまでも、今回の目的地をある程度知っている状態で参加されていた方が多かったと思います。私もそうでしたが、それでも、今回のツアーは本当に得難い体験と触れ合い、そして食の楽しみにあふれていました。

自然の火がもたらす美しい模様を求め、11月から次の火を入れる山あいの窯元は、雪深い中ですでに燃料となる大量の高価なアカマツを備蓄しつつあり、薪割りにかける労力も惜しみません。効率性とは一線を画す生産活動を貫いているのです。

人口減少が進む農村で、緑鮮やかな季節とは異なる趣を見せる農家蔵や農家庭園を、厳しい季節にもしっかりと管理している人々がいました。歴史と文化を守りながら、観光資源としての活用を見据え、持続可能な地域づくりを決してあきらめていないのです。

ともすれば過酷な価格競争に陥りがちな農業生産の世界で、寒さや雪を逆手に取った農法により、ニンジンの糖度を極限まで高め、農業収入の拡大をリードしている農業者がいました。


舮作興農組合のニンジン農場・収穫体験全景
これらはすべて、雪と共生しながら生きていかなければならない津軽地方の文化であり、人々の営みです。だからこそ、ちょっとした体験が私たちの心に響くのだと思います。

また、厳しい季節と言えば、この季節だからこそ輝きを放つ食材が、津軽地方にはたくさんあることを改めて知りました。

農家レストランで体験した数えきれない素材から成る野菜尽くしのランチ、魚種の豊富さと新鮮さで私たちを圧倒した漁師飯、いずれも、地域の人々にしてみると、「いつも普通に食べているもの」なのですね。農家民泊での食事も含め、地域の旬の豊かさを知りました。

今回のツアーは、雪との共生の中で輝く生業と文化、季節ならではの食の奥深さを堪能する旅でした。

それらを背景に、地域の方々と触れ合う楽しさ、一緒に何かを行う喜びがありました。景色の色味はホワイト一色でしたが、グリーン・ツーリズムの面白さが凝縮された1泊2日のツアーでした。

ぜひ、今回の記事をご覧の皆さまも青森県津軽地方を訪ねてみてください。私も、今度は違う地域を違う季節に「体験」し、魅力的な地域の方と「触れ合って」みたいと思います。

All photos by Akihito Ono

特集内の他の記事も見る

ライター
Norito Takeuchi あおもり創生パートナーズ

青森市生まれの地域デザイン系コンサルタント会社役員。地方銀行系列の会社に所属し、地域と地元企業が元気になれるよう、青森県のあちらこちらで地域づくりのお手伝いをしています。ふるさとの文化、自然や食が大好きで、週末は、青森県を囲む3つの海をフィールドに、ほぼ、お魚さんと遊んでいます。

RELATED

関連記事

RANKING

人気記事ランキング