ライター
川波 恵子 旅する臨床検査技師

旅する臨床検査技師けーちゃん。訪問国数は39ヶ国。臨床検査技師として働く傍ら、出張撮影サービスのカメラマンをしたり、世界一周をしたりアメリカ横断したり、フォトコンテストで世界1位になったり(IPA 2023)。「やりたい事は全てやる、行きたい所は全て行く」をモットーに世界中を旅しています。好きなことはカメラと美味しいチョコレート探し。今の目標は宇宙旅行。

謝るカナダ人のための法律

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謝罪に関するカナダ文化は、なんと法律にまで影響を与えています。なんと、よく謝るカナダ人のために「謝罪法(Apology Act)」が存在するのです。

これは、交通事故などの際に「たとえ謝ったとしても、自分の非を認めた証拠にはならない」という、ついつい口から謝罪の言葉が出てしまうカナダ人のための法律。2009年にオンタリオで施行されました。

今ではカナダのほとんどの州・準州にこの法律が存在しているというから驚きです。

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ちなみにアメリカの一部の州にも同じく「謝罪法(Apology Act)」があるのですが、こちらの導入理由は「お互いに謝らなさすぎて余計に状況が悪化するから」というカナダとは正反対の背景が……。

お隣同士の国なのに、ここまで文化の違いがあるのは面白いですよね。

なぜ謝るの?カナディアンに聞いてみた

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なぜこんなにも謝るのか。カナダ人の意見が知りたくなったため、友人に聞いてみました。

すると、「私たちカナダ人は礼儀正しい国民なので、自分が悪くなくても謙虚でいるほうがいいのです。Better safe than sorry(転ばぬ先の杖)ということだね」とのこと。

なんとも日本人と似たような感覚。兎にも角にもとりあえず謝っておく……ということなのでしょう。

また、別の友人は「私たちカナダ人は、ほとんどの場面で『sorry』をカジュアルに使い過ぎているね」と言いながら、こんな面白い話を教えてくれました。

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「スーパーの通路を歩いていて、ショッピングカートで道を塞いでいる人に対して”Sorry”と言えば、”今Sorryって言ったから、さっさとどいてね”という意味になるんだよ」と。

この話には思わず笑ってしまいました。カナダ英語では「Sorry=謝罪」だけではないのです。

「よく謝るのはカナダ人らしさで、礼儀正しさ以上のものだよ。必ずしも良いことというわけではないと思う。お隣アメリカの人たちはそうでなく、もっと”地に足が着いている”のだと思うよ」とも教えてくれました。

実際にカナダに住んだ私が感じること


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CBCニュースのある記事によると、「イギリスからの入植の副産物として、ある種の生まれながらの不器用さを受け継いだ」という理論があるそう。

この記事は作家のエミリー・キラーさんがCBCラジオで語った内容が掲載されたものですが、エミリーさんは「”live and let live(互いに許し合って生きていく)”という一般的な態度を持つことがカナダでは可能です」と語ると同時に「カナダのアイデンティティには、このような緩さがある」とも語っています。

「反射的にsorryと言うことは、基本的に意味のない礼儀なのです」とエミリーさんが言うように、カナダ人にとって謝罪の言葉とは、本能的に口から出てしまう言葉なのでしょう。

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イギリスの連邦国家であり、外国の国王を持つカナダだからこそ、謝罪をすることで対立を最小限に抑え、自分たちの置かれる状況をできる限り良くしようという潜在意識があるのでしょうか。

「ごめんなさい」「すみません」「申し訳ありません」など、謝罪の言葉をよく使う日本人にとって、そういう意味ではカナダは感覚が似ていて過ごしやすくもあります。

みなさんもカナダを訪れる機会があれば、無理に「Sorry」を封印せず、日本人の感覚のまま過ごすことができるでしょう。

私もカナダへ来た当初に比べて「Sorry」を使う頻度が増えたのは間違いありません。Sorryと言い過ぎているかもしれません。

ごめんなさいって何度も言ってしまってごめんなさい。

Sorry……

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川波 恵子 旅する臨床検査技師

旅する臨床検査技師けーちゃん。訪問国数は39ヶ国。臨床検査技師として働く傍ら、出張撮影サービスのカメラマンをしたり、世界一周をしたりアメリカ横断したり、フォトコンテストで世界1位になったり(IPA 2023)。「やりたい事は全てやる、行きたい所は全て行く」をモットーに世界中を旅しています。好きなことはカメラと美味しいチョコレート探し。今の目標は宇宙旅行。

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