遡ること数年前、世界が得体の知れぬウイルスの猛威にさらされていた頃、私は旅と出会った。
舞台を見るために東京へのプチ旅行を計画していたが、残念なことに公演は中止となり予定は消えてしまった。
本当は東京に行きたかった私は、半ば不貞腐れたようにリュックを背負い地元から数時間、北海道のとある市に向かったことを今でも覚えている。人生初のひとり旅だった。
この時、偶然出会った地元の方とお話をして自分ひとりでは見つけられなかったであろう素敵なお店を紹介してもらったり、何の計画もなかったからこそ実現した出来事がいくつもあった。
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誰とどこへ行って、何をするのか。事前に予定をたててスーツケースを片手に非日常を味わうことが旅の醍醐味だと思っていた私は、この時から旅に対する考え方が変わり始めた。
旅をするとそこには、普段歩むことのない道、目にすることのない景色、初めましての味、その時そこでしか存在しなかったであろう出会いが次々に訪れる。そんな瞬間に魅了され、私は旅することをやめられなくなった。
やがて現地で欠かせない「旅のマイルール」ができた。
旅に欠かせないこだわり
旅のマイルールはその土地ならではの「食・美術・歴史」を堪能すること。
地元ならではの料理や、現地の方がおすすめするお店、その土地が育んだ美術や芸術に触れる。こうして五感を通して味わう時間は、旅をただの移動ではなく心に残る瞬間の連続へと変えてくれるのだ。
たったひとつの料理、絵、建築物や舞台が、その地の歴史を知るきっかけとなることに気がついた私はこれらを味わうことが、自分の中での欠かせないこだわりとなった。
そしてこのこだわりを胸に今回向かったのが、長野県。学生時代の仲間と共に今年の夏を締めくくる9月の旅が始まった。
信州ならではの味、歴史を物語る建築や美術。ここで出会った瞬間は、また新しい発見に満ちていた。
長野の食を堪能
文豪も愛した信州そば
長野県の郷土料理で、日本三大そばのひとつに数えられるのが戸隠そば。県内には、他にも伝統の味を守る美味しいそば屋が数えきれないほどある。
今回は長野県上田市にある昭和36年創業の老舗、手打ちそば刀屋さんへ。文豪、池波正太郎さんが愛した名店としても知られており、市内のコーワーキングスペースを訪れた際スタッフさんにおすすめしていただいた。観光客はもちろん、地元の方も足繁く通う人気のお店だ。
到着後店の前には行列があったが、回転も早く日曜のお昼に15分ほど並び店内へ。ざるそばは小・中・普・大と4種類のサイズ表記があり、おすすめしていただいたスタッフさんに「量には気をつけてください」と忠告があったことを思い出した。普通サイズの「普」で、通常のおそば3枚分程の量があるらしい。
写真は中サイズ、量はあったが2枚分のそばもペロリと食べてしまうほどの美味しさだった。
・名称:手打そば刀屋
・住所:〒386-0012 長野県上田市中央2丁目13-23
・地図:
・アクセス:上田駅より徒歩約13分/車で上信越道・上田菅平インターより約10分
・営業時間:11:00~15:00
・定休日:日曜日
・電話番号:0268-22-2948
・料金:1000~2000円
焼いて楽しい、食べておいしい名物おやき
長野県発祥のおやき。その歴史は縄文時代まで遡り、当時の遺跡からもその原型が発見されている。
県内に複数ある人気店、あづみ堂の本店の中央には大きな囲炉裏がある。店内には常時20種類以上のおやきが販売されており、定番の味から季節限定の味まで、きっと誰もがお気に入りの味を見つけられるはず。
購入したおやきはすぐに炭火が入っている囲炉裏で焼き食べることができる。おやき以外にも特産品であるわさびやワイン、そば等も販売されているためお土産を選びながらアツアツのおやきを楽しむのも良し。長野県に来た際はぜひ立ち寄って欲しいお店。
・名称:あづみ堂 本店
・住所:〒399-8201 長野県安曇野市豊科南穂高1115番地スワンガーデン敷地内
・地図:
・アクセス:田沢駅から車で約3分
・営業時間:10:00~18:30(囲炉裏の利用は17:30まで)
・定休日:なし
・電話番号:0263-71-1400
・公式サイトURL:https://azumido.jp/