人生の夏休みのお盆休みを取得して、僕はデンマークで大切な宝物を見つけた。
それは、人と繋がるための言葉は言語だけじゃないということ。
旅で見つけた僕だけの宝物。
そしてそれは今もこうして大切な記憶と映像と感覚と共に生き残っている。
デンマーク人生の学校についての過去記事はこちらから。
見出し
人生の学校での日常
フォルケホイスコーレの日常では、皆が常に何をやりたいかどうしたら全員が幸せな時間を過ごすことができるかについて対話を重ね、できることからなんでもやってみよう。という生活を日々送っていく。
そこで各々がやりたい分野や学びたいことによってコースやプログラムを履修することができ、またそれはいつでも自由に変更や追加、もちろん止めることもできるシステムになっている。
僕が生活をしていた当時のBrandbjerg Højskole(HP参照)では、4つのコース(Outdoor, Kompass/Mindfulness, EventLab, Sound House)を選ぶことができ、そのほかにおよそ20科目のプログラムを自由に選んで履修することができた。(現在は、コース編成がより多様化し多くのプログラムを履修できるようになっている。)
EventLab
デザインシンキングを用いたブレインストーミングの活用方法について
僕が初めに選択していたコースが、このEventLabというプログラムである。
理由はいくつかあり、英語メインで履修ができること、デンマーク流のチームビルディングやイベント企画を通して、社会参画について学ぶことに興味があったためだ。
EventLabの様子はこのような感じである。
社会起業家というSocial Entrepreneurという考え方を学んだり。
自分たちのチーム・社会のありたい姿をレゴブロックで表現しお互いの共通認識を持つ。
初めのプロジェクトとして取り組んだのは、このYouth Demoracy Festivalという、若者向けの民主主義と社会参画について学ぶイベントのブース出展である。
Youth Demoracy Festivalまでのアクションプランを考える。
このイベントにプロジェクトでブースを出すことになり、それぞれの役割分担を決めチームに分かれ、どのような出し物をするのが良いのか皆で話し合うところから準備は始まった。
各々の得意不得意を出しながらできることに率先して取り組んでいくという、まさに実践あるのみな学びを得る機会であった。
イベント当日:出展ブースの様子。
車座になってゆっくり話し合えるように、ヨガの企画を考案し、ヨガマットからその他の家具や必要物品を全て、1からブース作りを行った。
このYouth Democracy Festivalは、デンマーク国内でも毎年開催されるとても注目度の高いイベントで、当日は、当時のデンマーク首相も足を運び、若者からも人気があり関心がとても高いことに驚かされた。社会と政治、若者との距離感がとても身近にあることを肌で感じる機会となった。
デンマーク首相の語り掛けに若者が集う。
Sound House
Sound House:いつでも誰もが音を奏でられる場所。
EventLabでとても貴重な経験をさせてもらったのは、良い機会だったのだが、語学学校にも行ったことがなく、ろくに英語を勉強せずにきてしまっていた自分の語学力のなさを痛感し、コミュニケーションがうまく取れないことと日々葛藤していたことも事実であった。
世界の共通言語である英語という手段以外にも、自分にできる方法はないかもっと挑戦してみたいという思いが湧き、コース変更を願い出た。
そう、そこで僕が踏み入れた世界が、Sound Houseの世界だ。
人生の学校での音楽は作曲からはじまる。
自然に身を潜め今感じることを書き出し音をつけていく。
クラス参加初日。
まずは、楽器や歌の練習をみんなでしながら仲良くなっていくのかなーなんて思って音楽の授業に行くような気持ちで足を運んだのだが……そこからすでに色々な解釈が日本とは異なっていたことに電撃が走る。
音楽とはなんですか?
なんのためにあると思いますか?
それは、芸術のひとつであり、自己表現の場であること。
自分の気持ちを伝える手段のひとつであるということ。
想いを表現するためにあるのだと。
音楽で大事なことは、表現を楽しむこと。
だから、まずは自分で作曲してみることが大切なんだ。
じゃあ、みんな今の気持ちを言葉にして音をつけてみて!
と、突如鼻歌合戦が開幕されたのだった。
ひと言、ワンセンテンス、ワンメロディーがあればあとは先生がコードと伴奏をつけてあげるから!思いついてたら聞かせて!……といい、その場でギターとピアノを前に曲の片鱗ができあがっていく。
楽しいでしょ?簡単でしょ?絵を描くように歌も作れるんだよ!と。
弾丸自力ライブツアー:”披露したい!じゃあ、テレアポしよう”
自力ライブツアー正面入り口:自作フライヤーを添えて。
そうと進めば、グループに分かれそれぞれ一曲ずつの作曲活動がスタート。
そして、自分達の曲の演奏を練習していくことになる。
経験者も未経験者ももちろんおり混ざっていて、一緒にできることやりたいことをみんなで叶えていく。そして、練習が進んでいき形になってくると……
そう、やっぱり人前で演奏してみたい!となるのだ。
そこで、まずはコース内で発表会をやり次は学内で演奏の機会を作ってもらったり。
そうすると、次のチャレンジは……
街に出ていろんな人に届けたい!
そうなったからにも、誰もが応援してくれるのが人生の学校。
自分達で地域の学校や公民館のリストを作り、電話をかけていき、「演奏させてくれませんか?」と。
そして、学校所有のVanにぎゅうぎゅうに楽器を詰め込み、ライブツアーへいざ出発。
電源さえあればいつでもどこでもこれで駆けつけ音楽を届けることができる。
一生ものの宝物をMVに詰め込んで。
多国籍なSound Houseメンバー(デンマーク、フェロー諸島、アイスランド、イギリス、日本)
プログラムも終盤戦。
卒業も近くなり、最後に思い出にもちゃんと残したい!と全会一致で、作成した楽曲のミュージックビデオをそれぞれ撮影してYouTubeにアップし世界に発信しよう!という集大成のプロジェクトが実行された。
演出や撮影場所、照明や撮影編集も、できる人ができることを分担し自分達で企画。
他の生徒も巻き込んでの生ライブ一発撮り。
校舎裏の草原で機材を持ち寄り青空レコーディング。
愉快な衣装を持ち寄りファンキーさMAX撮影。
初の作詞をさせてもらった思い出の一曲。
きっとこの世界の共通言語は、笑顔だけじゃない。
この怒涛の音楽漬けの毎日で感じたこと。
そして、日々を生きる中で大切なこと。
人々と分かりあうために必要なことは。
感情と感覚をどのように表現し伝えていくかということ。
その表現の方法は人それぞれ得意なものがあり、尊重し合うことが大切である。
その表現のひとつとして、言葉があるということ。
そして、言葉を超えて想いを表現することができる方法として音楽が存在するということ。
その結果として、出会う人々が笑顔になること。
笑い合えることを通して、幸せを分かち合うことができると。
世界の共通言語は、もちろん英語だけではない。
そして、笑顔だけでもない。
気持ちを分かりあうために表現するという行為があり、音楽が私たちにそれを与えてくれている。
誰もが世界を超えて伝えることができる方法のひとつであると。
他にも世界にはたくさんの共通言語が存在しているのだろう。
芸術はまさにそのひとつであり、言語も含めた想いを伝える意思を届けるという活動ができることが素晴らしいことである。
こうして私は、デンマークの地で世界の共通言語の在処を知り、新たな旅がこれからまた続いていくのであった。
ぜひ、あなたも世界の音に耳を潜めた旅を。そして、自分の表現を大切に。
出会えたときにはぜひ、一緒に音楽しに行きましょう。
では、また会う日まで。
All photos by Yuki Kumagai