ライター

永崎裕麻(ナガサキ ユウマ)フィジー南国校長|約2年間の世界一周を終えて、世界幸福度ランキング1位(2016/2017)のフィジー共和国へ2007年から移住。ライフスタイルをアップデートする英語学校カラーズ校長。RECOMPANY取締役。 南の島のゆるい空気感を日本社会に届けるべく「南国ライフスタイルLABO」というコミュニティーを運営。内閣府国際交流事業「世界青年の船2017」日本ナショナル・リーダー。 2019年からはフィジー・デンマーク・日本の世界3拠点生活(トリプル・ライフ)を開始(現在はコロナで休止中)。 著書に「まんが南の島フィジーの脱力幸福論」「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」。

「品格」それは、その人やその物に感じられる気高さや上品さのこと。

では、「旅人の品格」って何だと思いますか?

旅人に品格なんぞ求めるなと言われてしまいそうですが、本記事ではあえて“品格のある旅人とは何か”について考えてみたいと思います。

「品格のある旅人」とはなに?


早速ですが「品格のある旅人」と聞くと、皆さんはどんな姿を想像するでしょうか?

身だしなみが整っている、バックパックではなくスーツケースで旅をしている、安宿ではなくいいホテルに泊まっている、値切ったりしない、教養がある……などでしょうか。

「旅人の品格」が何であるかは、人それぞれイメージにバラツキがあるでしょうし、正解があるわけではありません。100人100通りの答えがあるなか、僕の答えはこれです。

「コントリビューション・マインドがあるかどうか」

日本語に訳せば、「貢献心」とか「利他意識」とか。

僕自身が本格的に旅をしていた20代、地球を舞台に貢献しようという意識があったかと言われると、そんなことはなかったと思います。

かなり自分中心な旅をしていました。なので、ここでいう「品格のある旅人」ではなかったでしょう。

品格のある旅人の基盤「幸福のレシピ」


世界一周中、自己中心的な旅人(下品なバックパッカー)ではありましたが、旅の終盤は徐々に品が良くなっていったのか、コントリビューション・マインド(貢献心)が出てきたような記憶があります。

2年間の旅で約80カ国を訪れましたが、最後の国はインドでした。旅が長くなるにつれて、タージマハルやエローラ石窟寺院などの観光名所を巡ることへの関心は下がり、地元の人たちと一緒に何かをしたいという気持ちが増えていきました。

インドではいくつかの貢献活動を実践していたのを強く覚えています。


ご存知の方もいるかもしれませんが、インドの切符売り場はとってもカオス。

目的地への切符はどこの窓口で買えるのかと、多くの旅行者が当惑していました。そこで僕は「目的地別の窓口」を把握し、旅行者たちへのガイドを駅構内で1日中しつつ、遊んでいました。しかも勝手に。

また、インドの街の服屋さんや食堂でも、店頭に立って勝手に旅行客の呼び込みをすることで、その店の営業に貢献するという活動をしていました。もちろん報酬はありません。

許可なく勝手に活動しているだけでしたが、駅員や服屋・食堂の店長からは「明日もまた来てね」と喜んでくれました。


ところで、皆さんは「幸福のレシピ」というのを聞いたことがあるでしょうか?

ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)の心理学部准教授であるエリザベス・ダン氏が提唱しています。

ケーキを作るときにも砂糖・卵・小麦粉が必要なように、幸せになるためにも「Social」「Kind」「Present3つの材料が必要だという考え方です。

■Social:人と交流する
■Kind:人に親切にする
■Present:いまこの瞬間に集中する

旅は出会い(Social)の連続。そして、いまこの瞬間(Present)を生きている実感に溢れています。

今回の僕の「品格」の定義は、最後のピースである、人に親切にすること(Kind)です。ここを実践できれば、幸せのレシピはコンプリートということになります。


以上のことから、「品格のある旅人」は幸福感が高くなるのです。幸せは伝染することが知られているので、品格のある旅人は周囲をも幸せにします。

行く場所ごとに「ハピネス・クラスター」を起こし、地域の方々への貢献を繰り返します。

そんな好循環をイメージし、作り上げていけるのが「品格のある旅人」なのではないでしょうか。

Don’t Judge, Just Give


発展途上国を旅すると「物乞い」を多く見かけます。皆さんはどう対応していますか?

毎回小銭を渡す人、小銭を財布から探している間にひったくられそうだから素通りする人、物乞いがマフィアとつながっているから無視する人、気が向いたときだけ寄付する人、容姿や謙虚さなどから判断して「良い人そうな物乞い」にだけお金を渡す人……。いろんなタイプの旅人がいると思います。

これにももちろん正解はありません。

ただ、僕自身が考える「品格のある旅人」は少なくともこの議題について自分なりに向き合い、自分の納得解を見つけようとしている人だと思うのです。

20年前、長期旅をしていたころ、僕は物乞いへの対応をそのときの気分によって決めていたように記憶しています。毎回、「あ、どうしようかな?」と心を揺らしながら……。

世界一周が終わったあとも自分なりの結論には至っていませんでしたが、フィジーへ移住してから出会ったフィジー人(元受刑者)の一言でようやく自分なりの納得解に辿り着きました。


彼の言葉とは「Don’t Judge, Just Give」。

『その物乞いがどういう人なのかなんて、短い時間で判断できるはずがない。闇ビジネスとつながっているのかも判断なんてできない。だから、判断しようとしないで、ただギブすればいい。お金に困っている可能性は極めて高いのだから』

この言葉に救われるかたちで、僕自身の心は決まりました。

物乞いへの対応はいろんな意見があります。ただ大切なことは、このテーマについて真正面から自問していくことだと思います。

旅の終わりに感じた「旅人の責任」


世界一周していた当時、世界一周ブログを書いていました。有難いことに多くの方から長きにわたってアクセスしていただきました。

それと同時に旅が終わるとき、どうしても果たしたい「責任」を勝手に感じるようになっていました。

それは「世界一周後の人生は、世界一周中よりも楽しむ」という思いでした。

世界一周ブログの中で「旅って最高!」「むちゃくちゃ勉強になる!」「最強の自己成長ツール」とか、ポジティブなメッセージを書き倒していました。

旅が終わって、その後の人生が下降線をたどっていけば、「世界一周なんかしていたら人生ダメになるのでは……?」というメッセージを与えることになってしまうのではないかと。


だから世界一周後、フィジーへ移住したり、世界3拠点生活(トリプルライフ)を始めたり、本を出版したり、英語学校の校長になったりと、世界一周をしているとき以上にエキサイティングな日々を送るようにしています。

自由すぎる旅の終盤、「コントリビューション・マインド」や「責任意識」などが現れてきた体験は、今回のテーマである「旅人の品格」を考えるキッカケになりました。


これからいろんな国や地域をまわる皆さんへ。

「立つ鳥跡を濁さず」という言葉がありますが、旅人として「濁さず」は最低限のマナーラインとし、可能な限り、ポジティブな影響を与えてからその土地を去るように心がけてみてはいかがでしょうか。

そうすれば、自分自身の品格が高まり、旅を通じて自分のことをより好きになっていけるはずです。

ライター

永崎裕麻(ナガサキ ユウマ)フィジー南国校長|約2年間の世界一周を終えて、世界幸福度ランキング1位(2016/2017)のフィジー共和国へ2007年から移住。ライフスタイルをアップデートする英語学校カラーズ校長。RECOMPANY取締役。 南の島のゆるい空気感を日本社会に届けるべく「南国ライフスタイルLABO」というコミュニティーを運営。内閣府国際交流事業「世界青年の船2017」日本ナショナル・リーダー。 2019年からはフィジー・デンマーク・日本の世界3拠点生活(トリプル・ライフ)を開始(現在はコロナで休止中)。 著書に「まんが南の島フィジーの脱力幸福論」「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」。

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