似た者同士?ロシア語、ベラルーシ語、ウクライナ語
Photo by 新田浩之 キエフ駅にて。こちらはウクライナ語
それではロシア語、ベラルーシ語、ウクライナ語は全く違う言語なのでしょうか。答えを先に書くと「似た者同士」です。どちらも東スラブ語圏に属し、キリール文字を使います。たとえば「こんにちは」で比べてみましょう。
ベラルーシ語:Добры дзень(ドーブルィ・ズェーニ)
ウクライナ語:Добрий день(ドーブルィ デーニ)
このように並べると違いを見つけるのが大変ですね。また、文字もあまり変わらないような気がします。それでは「ありがとう」はどうでしょうか。
ベラルーシ語:Дзякуй(ジャークィ)
ウクライナ語:Дякую(ジャークユ)
今度はベラルーシ語とウクライナ語は似ていますが、ロシア語は全く違うことがわかります。なお「ありがとう」に関して、ベラルーシ語とウクライナ語は隣国のポーランド語に類似しています。ポーランド語ですと「Dziękuję(ジェンクイエン)」になります。
また、文法もロシア語、ベラルーシ語、ウクライナ語はよく似ています。したがって、ベラルーシ人やウクライナ人にとってロシア語をマスターすることは楽勝! そのため、誰でもロシア語が通じる、ということです。一方、ロシア人にウクライナ語やベラルーシ語を話しかけても理解できません。
それでは、なぜベラルーシ人とウクライナ人はロシア語をマスターするのでしょうか。なぜ、ベラルーシ語やウクライナ語はロシア語と比べると弱いのでしょうか。
その答えはかつてベラルーシやウクライナが加盟していたソビエト連邦にあります。ソ連において、出世するには国内の共通語であるロシア語が必須でした。もちろん、教育でもロシア語重視。需要があまりない現地語は軽んじられました。
その結果、旧ソ連ではベラルーシやウクライナに限らず、現地語が話せない人が大量に出ることに。またロシア人の移住も進んだので、言葉ひとつとってもいろいろな問題があります。
ロシア語も注意が必要?
Photo by 新田浩之 こちらはラトビア語
勘のいい旅人なら「旧ソ連の国々の人々とコミュニケーションをとるならロシア語をマスターすればOK」と考えるでしょう。ところが、ロシア語は注意がいる言葉です。
私はバルト3国のひとつ、リトアニアのとある博物館にいたおばさんにロシア語で話しかけました。すると、怒りオーラで「私はロシア語がわかりません!」と英語で答えられました。
バルト3国、エストニア、ラトビア、リトアニアにはそれぞれエストニア語、ラトビア語、リトアニア語があります。それぞれの言語はベラルーシ語やウクライナ語とは異なり、ロシア語とは全く別物。人種的にもロシア人とは似ていません。
また、歴史的経緯から「ロシアが好きではない」人が多い地域でもあります。そのため、ロシア語が理解できても現地住民は使いたがらないのでしょう。また、ロシア語よりも英語を好む若者も増えているようです。
もちろん、エストニア語、ラトビア語、リトアニア語で話しかけると大喜び。しかし、バルト3国に住むロシア人にこれらの言語で話しかけてもいい気はしません。
このように、旧ソ連、東ヨーロッパでは日本では考えられないようなシーンに出くわします。それが、これらの地域を旅する醍醐味ですが。知らなければ、ちょっとしたトラブルになるかもしれません。
しかし、それもいい勉強だと思います。どうぞ、旧ソ連、東ヨーロッパで不思議な体験をたくさんしてくださいね。