1971年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカ人のサイモン・クズネッツ氏はこう言いました。
先進国と途上国が揺るぎなく確定していた当時、驚異的な成長を遂げて先進国になった日本や、かつての輝きを失い途上国になったアルゼンチンは特殊だったようです。日本人としては少し誇らしく感じられる言葉ですね。
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さて、今回の本題です。私は南の島国であるフィジーで暮らしながら幸せを研究しています。幸せの視点からも、世界を4つに分類してみたいと思います。では、どう分けるのか。毎年3月に発表される国連の「World Happiness Report」というものがあります。この幸福度調査データの中に、注目度は低いものの興味深いものがあります。
それは、「1日の中で、どれくらいポジティブな感情やネガティブな感情が発生しているか」という調査結果です。ポジティブ感情とは、「幸せ」「笑い」「楽しみ」などを意味し、ネガティブ感情とは「心配」「悲しみ」「怒り」などを意味します。
このデータ(155カ国分)を活用して、幸せの視点で世界を4種類に分けてみたいと思います。
(1)アイスランド型
ポジティブ感情が多く、ネガティブ感情が少ない理想系です。
ポジティブ感情の多さでも、ネガティブ感情の少なさでもトップ10圏内に入っている国は世界で唯一無二、アイスランドだけです。ともに世界3位。
最強のバランスを誇るこの型は、北欧諸国が強いです。上位15カ国中、北欧5カ国(アイスランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド)がすべてランクインしています。
(2)パラグアイ型
ポジティブ感情が多く、ネガティブ感情も多い激情系です。
ポジティブ感情が多い国のトップはパラグアイです。トップ10のうち、6カ国が中南米の国(パラグアイ、コスタリカ、メキシコ、パナマ、グアテマラ、ウルグアイ)です。ラテンの血のせいでしょうか。
(3)台湾型
ポジティブ感情が少なく、ネガティブ感情も少ない冷静系です。
ネガティブ感情が少ない国の1位、2位は台湾、シンガポールです。また日本も大善戦していて世界14位と世界の上位10%以内にランクインしています。感情のアップダウンが小さいこの型は、(例外もありますが)アジアの国々が強い傾向があります。
(4)シリア型
ポジティブ感情が少なく、ネガティブ感情が多い援助必須系です。
幸せとは縁遠いこの型は、中近東やアフリカの国々で構成されています。ポジティブ感情の多さでも、ネガティブ感情の少なさでも、ともに最下位(155位)なのがシリアです。
また、ワースト10のうち、5カ国は中近東(シリア、イラク、アフガニスタン、トルコ、アルメニア)から、もう5カ国はアフリカ(シエラレオネ、チャド、中央アフリカ、南スーダン、チュニジア)からランクインしています。
ポジティブ感情に浸る時間が必要
今年発表された「World Happiness Report 2020」において、日本は過去最低の62位(153カ国中)という結果でした。年々、日本の順位は下がってきており、日本人の幸福度は低いといった類の報道がよくなされています。
ただ、実は内容を細かくみてみると、ネガティブな感情の少なさにおいて、日本は世界のトップランカーなのです。つまり、「めちゃくちゃ幸せ」というわけではないですが、少なくとも不幸を回避することができているということ。その点をもっと誇りに思ってもいいのではないでしょうか。
その上で、先述したように理想的な感情構成をもつアイスランドにならえるところを学んでいく。アイスランドと日本の違いとして、頭にパッと浮かぶのは「男女平等」の度合いです。
世界経済フォーラムから毎年発表されている「ジェンダー・ギャップ指数」。最新版の「Global Gender Gap Report 2020」によると、ジェンダー格差が少ない国(153カ国中)のトップはアイスランド(11年連続の覇者)。比べて日本は過去最低の121位でした。特に政治分野での男女差が大きく、このあたりの課題を解決していくことが「日本人のポジティブ感を底上げ」するためのヒントになのかもしれません。
また、日本人は日々忙しい(もしくは忙しいと感じている)傾向があり、ポジティブ感情を味わう機会を逃している可能性もあります。立ち止まる勇気をもって、ポジティブ感情に浸ってみる時間がもう少しあってもいいのかもしれませんね。
今回の記事では、世界の地域ごとに異なる感情構成にスポットライトを当ててみてきました。そんな視点をもちながら、旅中に出会う人たちを観察してみると新しい発見があるかもしれません。