一方、
2)ラクダオーナーは、買い取った塩板を1枚50ブル(250円)で工場に売る。
往復1カ月の運搬の労、ラクダ所有・維持のコスト等があるにしても、同じ塩板が隣の州で一気に10倍になるという事実は驚きでした。
ラクダオーナーの月収は約2,500ドル(28万円)というのも理解できます。
そもそも、ロバ一頭100ドル(約1.1万円)、ラクダ一頭1000ドル(約11万円)するので、それらを所有しているラクダオーナーはかなりの資産家なのかもしれません。
もちろん、目の前のラクダ引きが、ラクダの所有はしておらず借り賃を親方に払っている可能性もあります。
塩のキャラバンが今なお存続している理由
photo by KM777
この異民族間の塩交易はどれくらい続いているのかガイドに聞いたところ、1,000年以上ではないかと言います。
素朴な疑問がわいてきます。ラクダのキャラバンは20世紀の間に次々と車両等に置き換わっていきました。
では、なぜここではトラック等が使われないままラクダに依存しているのか?なぜ採掘機械が導入されていないのか?
単純に考えて、トラックだったら一気に大量の塩板を短時間で運べるのだから、コスト削減が可能ではないか。
同様に、採掘に関しても機械を導入すれば、もっと効率的に行えるのではないか、ということです。
それが伝統、といえば美しいですが、実際のところは、利権・しがらみ、で成り立っているのかもしれません。
例えば、ファール族は地元の利権を他民族に渡すことはなく、塩板価格をコントロールする。ティグレ族はラクダの交易ルートを支配し、他民族が動物・トラック等で運搬することを許さない。
採掘を機械化してしまえば、地元民は職を失ってしまうので機械化はしない。
そうすると、大量に塩板は生産されないので、大量運搬も不要ではないか…などと。双方に旨みがあって、また、恨みを買わない、調和点が今の塩キャラバンなのではないかと思います。
ともあれ、奇跡のように残された、人力・ラクダに依存しているユニークな塩のキャラバン。脈々としたその営みを目の当たりに、生きた歴史に触れた気がして、身震いするほど感動しました。
塩のキャラバンは消滅する?
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ところが、ガイドによると、この塩のキャラバンは、数年以内になくなってしまう可能性もあるということ。どういうことでしょうか?
採掘現場から村の方にパイプラインが伸びていました。塩水をパイプでくみ上げてそれを乾燥・加工する工場を、アファール政府が建設中なのだそうです。
工場が完成し操業がうまく回り始めたら、採掘も運搬も不要になるから塩のキャラバンもなくなる、と予想されているとのこと。
奇跡のように1,000年以上続いてきた塩のキャラバンがなくなってしまうとしたらとても残念ですね。
見に行くなら今しかない!かもしれません。
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塩のキャラバンの見られるアサール湖近辺にはでは、ダロール火山の活動により形成された、奇怪ともいえる極彩色の光景が広がっています。
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黄色・緑・赤・紫・白、というカラフルさという点、テーブルサンゴ型・湖・岩山・海辺等地形の多様性という点からしても、絶景中の絶景と言えると思います。
ただ、ガイドによると、極彩色の液は毒性が非常に強いらしく、以前ツアー参加者が転倒し、化学火傷により長期入院を強いられることになったそうです。
スニーカー・長ズボン・長袖で行ったほうがいいかもしれません。
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