ライター
りゅう TABIPPO CARAVAN

1997年生まれの和歌山県出身。祖母からの手紙をきっかけに旅に出るようになり、大学生時代に世界一周を経験。予測不能なことを愛することはできなかったけど、余白を最大限に楽しませてくれる旅の良さが好きで、現在は観光業界にてマーケターとして働いています。

“好きな国”という言葉で一番に思い浮かべる場所がある。

その街の空気に色があるとしたら、きっと柔らかな青色をしている。吸い込むだけで、細胞が満たされていくような、幸せな気持ちになれるあの国を、僕はこの先も“好きな国”だと呼び続けたい。

フィジーエアウェイズ
「ああ、“フィジー”が好きかもしれない」と思ったのは、2024年の3月。

間抜けにも、フィジーに関することを何も下調べしないまま日本を飛び出してきてしまい「幸福度ランキングが高い、幸せそうな国」と、なんとも浅はかな知識だけを頼りに、ナンディ国際空港に降り立った時でした。

足がフィジーの地面を踏んだ瞬間。このぶわっと鼻を覆う南国特有の匂いも、体をじんわり包む暖かな熱も、鼻の奥でにごるような優しい発音のフィジーの言語も。日本とは何もかも違うはずなのに、この国は、緊張でカチカチになった全身をなぜかふんわりくるんで安心させてくれたのを今でも覚えています。

あの、思わず踊り出してしまいそうなくらいに浮かれた、でもとっぷり体を包んでくれた安心感が忘れられなくて、その後も何度もフィジーに足を運んでいたのだけれど。そのたびに発見があって、もっともっと好きになっていく自分がたしかに存在していて、そんな、フィジーだからこそ訪れてほしいスポットについて、今回は僕の偏愛も交えながらご紹介させてください。

海賊の伝説が眠る、秘密の小島と幻の島

宝島
フィジー・ナンディ国際空港からデナラウ港まで車で約25分、そこから船で約45分。ママヌザ諸島に“宝島”という名前がつけられた島「トレジャーアイランド」があります。

一周わずか15分ほどで回れる小さな島は、周囲をターコイズブルーの海に囲まれており、その昔、海賊が宝を隠したという伝説から名付けられました。

宝島_02
島内のすべてのブレ(bure; ヴィラ)からは、椰子の木の向こうに珊瑚礁の海が広がり、時間帯によってその青の濃淡を変えてゆきます。

海洋保護区域に指定されたビーチでは、浅瀬をのぞくだけで小さな魚たちの姿が見られ、足元から広がるサンゴ礁には、ソフトコーラルやハードコーラルが色とりどりに咲き誇ります。まるで海の中にもうひとつの楽園があるようでした。

サンドバンク
そこから、真っ青な海を切り裂くようにスピードボートで進むことおよそ15分。

宝島の沖合には“天国のような場所”と言われるスポットが存在します。

それが、フィジーならではの奇跡の景色ー“サンドバンク”です。


世界には「サンドバンク(砂州の島)」と呼ばれる砂浜が存在します。引き潮のときだけ海の中にふわりと現れるその姿は、まさに自然がつくる一瞬のアート。限られた場所でしか見られない貴重な絶景です。

なんとも気まぐれな、「島」と呼ぶにはあまりにも小さい場所で眺めた、視界いっぱいに広がる透き通った海と空。その境界線がわからなくなるほど、すべてが溶け合っていた光景のことは忘れることができません。

フィジーを訪れた際にはぜひ足を運んでみてほしいスポットです。

■詳細情報
・名称:Treasure Island(トレジャーアイランド)
・地図:
・アクセス:ビチレブ島から船で約30分
■詳細情報
・名称:Mana Island(マナ島)
・地図:
・アクセス:トレジャーアイランドからスピードボートで約15分

流れに身をゆだねて出会う、人と暮らし


サンドバンクで夢のようなひとときを過ごした後、次に僕が向かったのは、フィジーの内陸部に広がるもうひとつの顔。

南西部の町・シンガトカを拠点に展開されている「シンガトカ・リバーサファリ」は、のどかな村々と深い自然に触れられる、まさに“フィジーの心”を体感できるアクティビティです。


ゆったりと流れるシンガトカ川を、ジェットボートで爽快に進んでいくそのツアーは、まさに水上の冒険。スピード感のあるクルーズに胸を躍らせながら、川沿いに点在するローカルビレッジでは、現地の人々とのあたたかな交流が待っています。

彼らが案内してくれたのは、観光客向けのショーではなく、“日々の営み”そのもの。カヴァの儀式や手作りの料理、家族との団らんの時間に、ほんの少しだけ混ぜてもらう。言葉がなくても、笑い合える瞬間がたくさんありました。


都市やビーチでは触れられない、フィジーの“根っこ”のような部分に、心がじんわりと揺さぶられる。

自然と人とが寄り添いながら暮らしているこの風景は、旅のなかでも特に深く印象に残った時間のひとつでした。

■詳細情報
・名称:シンガトカ・リバーサファリ
・地図:
・アクセス:ナンディ国際空港からは車で約1時間

なにもしないを楽しむ、贅沢な午後


フィジーの青く澄んだ海に、ぽつんと浮かぶ白いデッキ。

デナラウ港から船で約45分。目の前に現れた「Seventh Heaven(セブンスヘブン)」は、その名の通り、まるで“第七の天国”を体現するような場所でした。


大きなウッドデッキにはデッキチェアが並び、潮風に吹かれながらカクテルを片手に寝転ぶだけで、もう何もいらないと思えてくる。海に飛び込んで遊びたい人には、シュノーケリングやカヤック、5メートルの高さからジャンプできる「Leap of Faith」などのアクティビティも用意されています。


海を眺めながら頬張る薪窯ピザと冷たいドリンクは、シンプルだけど贅沢な味。

2階のオープンデッキでは、波音に包まれながら受けるフィジー式マッサージも体験でき、全身がふっと緩むような感覚に包まれました。

何もしない時間も、何かして過ごす時間も、どちらも心地よく満たされていく、セブンスヘブンという場所。どこを見渡しても空と海しかないこの場所で過ごす時間は、フィジー滞在のなかでも特に心に残るひとときになるはずです。

■詳細情報
名称:セブンスヘブン・フィジー
住所:Mamanuca Islands, Fiji(ママヌザ諸島、フィジー)
地図:
営業時間:午前9:00~午後4:00(ボートの出発時間により変動する場合があります)
電話番号:+679 675 1161
アクセス:ナンディのポート・デナラウ(Port Denarau)からボートで約45分
公式サイトURL:https://seventhheavenfiji.com/

映画の記憶が風に揺れる、モノリキ島へのショートトリップ


フィジー滞在中、もうひとつ特別な場所へ足を運ぶことができました。

それは、2000年公開の映画『キャスト・アウェイ』のロケ地として知られる「モノリキ島(Monuriki Island)」。

今年で公開からちょうど25年。

あのトム・ハンクス演じる主人公がたったひとりでサバイバルを続けた無人島が、フィジーの離島「シェラトン・リゾート&スパ トコリキアイランド」からわずか数十分の場所にあることを、今回初めて知りました。

リゾートからボートに揺られて辿り着いたその島は、想像していたよりもずっと静かで、ずっと美しかった。

あの映画で見た白い砂浜と、崖のようにそびえる岩肌。今はもう誰も住んでいないけれど、潮風に吹かれながら目を閉じると、スクリーン越しに見ていた“あの世界”がほんの少しだけ重なるような、そんな不思議な時間が流れていました。


『キャスト・アウェイ』が好きな方にはもちろん、映画を見たことがない人でも、訪れる価値があると感じる場所。

人の気配がほとんどないその島は、喧騒から距離をおき、自分自身の“内なる声”に耳を傾けられるような、そんな静けさをたたえていました。

次回フィジーを訪れるなら、シェラトン・トコリキを拠点に、ぜひモノリキ島にも足を延ばしてみてください。25周年という節目に、あの映画を見返してから訪れるのもおすすめです。

■詳細情報
名称:モノリキ島(Monuriki Island)
地図:
アクセス:ナンディのポート・デナラウ(Port Denarau)からボートで約45分。

“好き”を積み重ねた先に残るもの


気がつけば、旅の中で何度も「好きだな」と呟いていました。

朝の光がやさしく差し込むブレの窓辺で。

海に足をつけてただぼんやりと空を見上げたとき。

村の子どもたちと目が合って、同時に笑い合った瞬間にも。

フィジーという国は、観光地である前に、誰かの暮らしがあって、祈りがあって、自然とともに呼吸するような温度があります。

その空気の中に少しだけ混ぜてもらったことで、僕の“好きな国”という言葉には、静かな確信が宿るようになりました。

たぶんこの先、他にもたくさんの国を訪れると思う。

けれど、ことあるごとに「フィジーのあの海、また見たいな」なんてふと思い出してしまう。

そんなふうに、心に居続けてくれる場所に出会えたことが、何よりの旅の収穫だったのかもしれません。

“好きな国”と胸を張って言える場所ができたことが、僕にとっては何よりの宝物です。

きっとまた、あの青に会いに行く。そんな確信を胸に、この旅を終えます。

All photos by Ruyo Ikeda

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りゅう TABIPPO CARAVAN

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