島
ライター

1995年秋田県生まれ・千葉県育ち。日本47都道府県、世界40ヵ国を訪問。新卒で不動産会社に就職し、新卒採用と営業を経験。退職後はワーキングホリデービザでデンマークに1年2ヶ月、ベルリンに6ヶ月滞在し、現在はヘルシンキ在住。"旅するスパイスカレー屋"を世界中で不定期開催しています。

公園ヘルシンキの中心に位置する憩いの場、Esplanadi(エスプラナーディ)公園
ヨーロッパでの暮らしも気づけば3カ国目、そして3年目へと突入した。

2023年5月。日本での生活を手放して、かねてから憧れていたデンマークへ。1年だけワーホリ暮らしをして帰ってこようと思っていたのだけれど……。

デンマークでの暮らしは、驚くほどに私の肌に、心に、ぴったりと合うものだった。自然と「もう少しこの暮らしを続けたい」ーーそんな心の声が聞こえるようになったのだ。

その声に導かれるかのように歩みを進めていたら、気づけばドイツへ拠点を移し、そしてフィンランドに辿り着いていた。

2025年2月。フィンランドに到着した私は、1年のなかでもっとも厳しい冬の気候を身をもって体感した。

そして今、その長くて暗い冬を越えた先に待っていた、”幸福の初夏”を私は生きている。

自然に溶け込んで暮らすということ

自然Kaunisaari(カウニサーリ)という島にて。森の中に佇むカラフルなコテージが可愛らしく、自然と調和したフィンランドらしい景色
これまで暮らしてきたヨーロッパの3カ国のなかでも、フィンランドはとくに自然との距離が近いと感じる。

私が住んでいるのは、ヘルシンキ中央駅から地下鉄で約10分のエリア。こんな都心部の家の周辺にも散歩コースは無数にあって、まだ開拓できていない道も山ほどある。

家から片道15分の散歩に出かければ、すぐに森や海に辿り着くという贅沢を日々噛みしめている。

夕焼け近所の夕陽スポット。夏至前後は日没後も明るい時間が続く。深夜0時でこの明るさなので、夜の散歩もはかどるのが嬉しい
フィンランドにきてからは、すっかり散歩が趣味になった。

ふらっと外に一歩踏み出してみると、私の心を癒してくれる景色が次々と目に飛び込んでくる。

とくに長い冬が終わってからは天気の良い日が続き、生命の息吹を宿した新緑の木々を見るだけで心が満たされる。

夕焼け水辺に近い街に住みたい、という夢が叶った
部屋の窓から青空が見えると、「家にいてはもったいない」と行き先も決めず靴をつっかけて、そそくさと飛び出したりするのだ。

自分がこんなにも天候に合わせたライフスタイルを送るだなんて、東京に住んでいた頃には想像もしていなかった。

公園幸せそうな表情でリラックスした時間を過ごす人々。見ているこちらまで笑顔になる大好きな景色
冬の間は丸裸だった木々たち。人気のない街。ーーそんなもの寂しい印象だったヘルシンキの街に、生き生きとしたエネルギーが吹き込まれ、今ではまるでまったく別の世界のように感じられる。

初夏という特別な季節が、街に、人に、魔法をかけているみたいだ。

公園Esplanadi(エスプラナーディ)公園で憩う人々
天気の良い日は外に出て、太陽の光を浴びる。木々や花々、海を眺めては全身で空気を感じる。太陽の暖かさを感じる。ただただ心地が良い。そうやって今この瞬間の幸せを感じているときは、思考がシンプルになる。

ーー幸せってこういうことかも。

フィンランドの美しい自然が、大切なことに気づかせてくれたようで、心がじんわりとあたたかくなる。

一緒に暮らすという幸せ

夕焼けサイクリング中にたまたま見つけた夕焼けスポット。ヘルシンキに住む人はきっとそれぞれのマイベスト夕焼けスポットを持っているのだろう
フィンランドの暮らしがより特別なものになっているもうひとつの理由は、高校からの親友2人と一緒に生活しているということ。

彼女たちとは日本でも約3年半ほどルームシェアをしていた仲。これまでの人生で楽しかった瞬間を思い出そうとすると、真っ先に思い浮かぶくらい楽しくて充実した日々だった。

2年前、そんな幸せな暮らしを一度は手放して、私はデンマークへ飛び立ったのだ。けれどドイツでの暮らしも落ち着いたころに、「やっぱりもう一度2人と一緒に暮らしたい」と思い立ち、その願いを口に出し始めた。

正直、実現する可能性は10%くらいに思っていた。それでもやりたいと口に出してみたら、2人も同じ気持ちだったようで、気づけばまた3人でのルームシェアを、しかもフィンランドで実現できているなんて、人生って本当に何が起こるかわからない。

街中夏になると木で作られたテラス席が出現して、街に活気が溢れる
自分で選択を繰り返して創り上げてきたこの暮らしが私はとても大好きで、ぎゅっと抱きしめながら大事に大事に生きている。

そんな自分の人生がけっこう好きだったりするのだ。

次の一歩へ

自然雲が多い日にも散歩をしてみると、晴れの日とは違った穏やかな景色を見つけた
フィンランドでの生活の次はどこへ行こうか。どんな自分になりたいだろうか。

今すぐに答えを出す必要はない。

さまざまな景色や人と出会うなかで変化していく自分の心の声に耳を澄ましながら、これからも歩き続けていく。

いつだって、フィンランドの夏のような心地良さを纏いながら。

All photos by Yurie Shiba

ライター

1995年秋田県生まれ・千葉県育ち。日本47都道府県、世界40ヵ国を訪問。新卒で不動産会社に就職し、新卒採用と営業を経験。退職後はワーキングホリデービザでデンマークに1年2ヶ月、ベルリンに6ヶ月滞在し、現在はヘルシンキ在住。"旅するスパイスカレー屋"を世界中で不定期開催しています。

RELATED

関連記事