旅が人を育てる国 デンマーク
旅好きのみなさん。あなたはどこで旅を学びましたか?
友人や知人に誘われて?自分探しの旅から?本や映画、ドラマから?
学校で「旅」というものを教えてもらうことはあったでしょうか。
今回は、僕が「旅とは何か。」を教えてもらったデンマークは人生の学校での忘れられない旅について綴ろうと思います。
そこへ辿り着くまでの旅路に潜む時間に何を感じるのか、何を思うがために旅をするのか、人は旅をもって何を学んでいくのか。
この学舎が僕に旅を教えてくれたのです。
見出し
人生の学校 フォルケホイスコーレ(Folkehøjskole)
遡るは、6年前。2018年8月~12月、学部生時代。
一年の休学を決意し、ご縁あって行き着いた人生の学校 フォルケホイスコーレで暮らしていた時のこと。
実際に暮らしていた学校:Brandbjerg Højskole
僕が通っていた学校は、Brandbjerg Højskole(ブランビャーホイスコーレ)という学校である。
今では、過去の経験者もたくさんブログやSNSで発信していることもあり、情報が増え、日本語でアクセスできるようになり、かなり認知が進んできているようにも思う。
しかし、当時は学校のまとめサイトなどは英語でもほとんど見当たらず、直接各学校のHPを当たって記載のあるメールアドレスに連絡を送り、情報を手繰り寄せることしか方法がなかった。
そんなときにたまたま、大学の先輩が同じく休学をし、このフォルケホイスコーレを経験した。先輩からその貴重なお話を聞かせてもらったことから、僕は奇跡的にフォルケホイスコーレに巡り合うことができ、初めての海外長期滞在への旅に始まりが告げられたのだった。
・北欧地域で主に行われている成人教育機関である。
・各々の人生の帰路に立つタイミングで、自分のやりたいことを探し、試せる学校。
・一切入学試験や成績評価は行わない。
・生徒も先生もその家族も皆が生活を共にする全寮制。
・期間は数ヶ月〜1年。
・デンマークには約70校の学校が存在する。
・17.5歳以上であれば国籍年齢性別問わず入学できる場所。
フォルケホイスコーレには、高校を卒業して進路に悩んでいる学生から、一度就職して転職を考えている社会人の方、そして、退職されて今後の人生何をしようかワクワクしている方など、幅広い年代そして国籍の学生が一同に集まって、やりたいことを探す、なんでもやってみるという人生の学校となっている。
今回、そんな人生の夏休み、モラトリアム中の異国の地にて、旅人への洗礼を受けたのが、Danmark-spilletである。
緊急ミッション発令 Danmark-spilletを発掘せよ。
TABIPPO CARAVANをお読みの皆様はきっとおそらく、人生で一度はヒッチハイクで旅をしたことがある人も少なくはないだろう。
僕が初めてヒッチハイクを経験し、旅の精霊に取り憑かれてしまったのが、ここデンマークの地で課せられた、緊急ミッションなのである。
突如校内放送が鳴り響く
休日土曜日の朝、突如校内放送が鳴り響き、生徒全員が講堂に緊急招集され、発表されたミッションが、Danmark-spilletである。
突如発令された Danmark-spillet
3人1組のチーム分けが発表され、ルール説明が淡々と行われていく。
Team9:今回の我々のチームメンバー Alfled,Yuki,Emma.
Danmark-spilletのルール説明
軍資金として分け与えらえれたのは、1人30kl(当時レートで約500円程)、次の日の日没までに学校に帰ってくることをタイムリミットに、ランダムに決められた4つの目的地とそれぞれのミッションをクリアし、最も多くのポイントを稼いだチームが優勝となる。
これが緊急発令されたルールの概要である
移動手段は、ヒッチハイクまたは家族友人に頼むことや仕事をしてお金を稼いでタクシーに乗るといったことに限られた。自分で運転してはいけないというルールだった。
まさか、ま、まさか……と、何度瞬きをしただろうか。この笑顔を忘れることはない
お金を稼いで船や飛行機、タクシーを利用することはアリなのだ。
僕らのチームはもっぱらヒッチハイクで勝負していく決意をここで固めた。
はなむけのお言葉授与
そしてさまざまなボーナスポイントも発表され、最後にこれからミッションへ挑む生徒たちへ、先生からはなむけのお言葉をいただいた。
*以下日本語訳参照
その道のりは凍えるものとなるか?→ おそらく!
その道のりは退屈なものとなるか?→ あなた次第!
その道のりは楽しいものとなるか?→ 多分きっと!
その道のりでのトラブルに価値はあるのか?→ もちろんYES!
最後に、「ここからはチームで競い支え合いながら、無事に幸せを運んで持って帰って来い!」と、盛大な声援と共に生徒全員が一斉に野に放たれたのであった。
君たちと出逢う人々の人生に幸せをもたらそう
そして、互いに支え合おう。
チームごとにバスに乗車 適当な交差点で降ろされゲームは始まる。
異国の知らぬ地で仲間と共にSpilletを求めて。
ヒッチビギナーズラック:垣間見る幸福の片鱗
全チーム支給 ヒッチカードを片手に、旅は巡る。
初めてのヒッチハイク。それも異国の知らぬ地で仲間と共に。
人生初のヒッチハイク 不安と期待を胸いっぱいに。
いざ始めてみれば、、なんと15~30分で止まってくれる車がいくつか続き。
これぞ幸せを呼ぶビキナーズラック
そうと思えば、やはり。そう上手くはいかない時もあり……。最長で2〜3時間歩き続けながら待つことももちろんあった。
チーム3人で励まし合いながら、寒さに耐えつつひたすら待つ, Alfred.
そして、Emma.
しかしそのどれもの経験はとても色濃く、それぞれの出会い、その移動時間というものは、何事にも代え難い、感謝と幸福と豊かさの恵みの相互交換で満ち溢れていた。
クラシックカーに乗るのも初めてだった
旅はこうしてその地の人と出会い、異文化に肌で触れ、時間を五感で感じられることに人生の行きつく豊かさがあるのではないか。
そう、僕は、行き交う人々と触れ合う中で、幸せの片鱗を少しずつ運び出していることに気がついてくるのであった。
人生初の体育館倉庫で寝袋消灯
そして、この日、3人で知恵を絞り出しなんとか行き着いた答えは、その地にあるフォルケホイスコーレの門を叩くことであった。
もう、かなり夜も深くなり辺りは真っ暗な中で、最後のヒッチハイク。
残ったの気力でなんとか止まってもらった車のシャッターを切る
ここから一番近くの学校を聴きながらなんとか交渉し、ようやく辿り着いた先が、ここであった。
ここまでくるともう本当に気合いで記録を残していたのだろうポイントのために
辿り着いた学校は、スポーツを専門としたフォルケホイスコーレであった。客室間が空いておらず「ここなら自由に使っていいよ!」と今夜の宿として案内された先が……
そう、体育館である。
疲れ切っているAlfredに吹っ切れているEmma.そして気力が復活しシャッターを切る僕.
お昼ご飯は、学校から持ってきたランチボックスを合間の時間に食べ、難を乗り切ったが、夜ご飯は、ここの残り物をくれないか無理を言って相談し、余ったご飯をありがたくいただく。
瞬く間に睡魔に襲われ、熟考の末確保した本日の寝床が、こちらである。
体育館内よりも倉庫内の方が寝るには暖かいという二度使うことは願いたくはない知識を手に入れる。
そして、朝のお目覚めはこちら。
これも一生忘れることのない目覚めの景色の一つとなっている。
いざ、帰路へ。
こちらが有り難き温かい体育館倉庫を貸していただいた学校
朝、出発の準備をし朝ご飯までお裾分けしてもらいエネルギー充分で次の目的地へ。
最後の目標地点である、船着場に無事到着。
そして、ここからいよいよ帰路へ向かう。
ヒッチハイクにもいよいよ慣れてはきたが、同時に溜まる疲労の蓄積。
帰路へ目指すは学校の最寄り街、Vejleへ。
そんな中、途中ヒッチで止まってくれて道のりをつないでくれた運転手の方に、ご自宅へご招待いただき、お昼ご飯に自家製のパンをご馳走になってしまった。
とっても暖かな気持ちを分けていただいたこのパンの味も忘れられない。
そして、元気十分、いよいよ終盤のヒッチに想いを寄せる。
幸福を呼び運ぶGood Luck.
車内での会話も大切な時間。
最後の車も無事に捕まり、道中のできる限り学校から近い位置で降ろしてもらう。
ほとんど車通りもなくなるためここからは徒歩で
残り4~5キロの分岐点から学校目指して最後は歩いて。
Alfredが写真を撮ってくれていたけど見つからず、僕の姿はこのままお届け。
歩いて、歩いて。
歩いて、歩いて。
この気持ちを忘れないガッツポーズは唯一無二の宝物
帰ってきた母校に、たどり着けた帰路に、やり切ることができた、無事に帰ってこれた到達感。
そして、満ち満ちとしたこの、これまでの人生で感じたことのない、心の浮遊感のような充足感のような空想感が漂い紛れたこの気持ち。
言葉に出たのは。
ありがとうとMange tak。
生きるとは暮らすとはこういうことなのか、と。
幸せは、運び合うものなんだ。
人生ゲームのその先に、旅を幸せを模ってゆく。
旅の中での車窓の景色は少しずつ見方も変わりゆく。
“Danmark-spillet”
そう、これはDenmark’s gameという人生ゲーム。
今回その意味をあえて解説されることはなかった。その言葉が何を示すのか何を伝えようとしているのか。
全ては自分達が感じたもの。
思ったこと気がついたもの。
それらが全部答えであるからだ。
このゲームで起こることは全て人生でありデンマークであり旅である。
始めは、何の説明もなく何を探してくればいいのか。何のために行うのか。ただの遊びと何が違うのか。これらから学び得ることなどあるのだろうか。
そう、半ば疑いの目を持ちつつ、、ゴールを目指しポイントを稼ぎ街に溶け込む。
そうして人々と出逢っていく。
僕は、ここで初めて、その国、その地域に流れる時間という生活のカタチを肌で感じとることに、幸せのカケラが潜んでいることを知ってしまったのであった。
ゲームでのやり取りは全て人々の幸せの在り方を彷彿させようとするものであった。
そのあり方というのは、千差万別、十人十色、一つとして同じものはない。しかし、誰1人取り残されることはなく、必ず誰かと一緒にそこにはあるものであり、社会の姿、民主主義のカタチが本当の意味で人々が人々を人々のために支え合う。
そんな在り方に気づかせてくれたのが、この”Danmark-spillet”であったのだ。
旅が運んでゆく幸せのカタチ
ミッション終了後は、チームごとで旅中のミッションを動画にまとめ発表を行い、表彰式も行われた。
表彰されたチームの中には、ヒッチハイクで出会った人がホテルスタッフの方で、一流高級ホテルで一夜を過ごしたチームや、街中でテレビ局が取材をしているところに出くわし、逆インタビューからの夕方のニュースで放送されるという猛者チームもいた。
僕らのチームでのファニーでファンシーな出来事は、真っ昼間にビールを奢ってもらったこと。
そういった別のチームの旅の話を聞けることもとても有意義な時間となり、同じ旅とて二度同じ旅路を通る旅は二つとして存在しないこと。
旅の運び方、幸せの運び方にも人それぞれの路があること。
今、この時にしか出会えない旅があり、ふとした瞬間に思い出す刻がある。
そんな時間の味わい方が、僕は大好きで、たくさんの人生とSpilletにこれからも出会していくのだろう。
“旅で紡ぐ時間と人生に幸せを運んで。”
あなたは旅、運べていますか?
デンマークでの旅路は、まだまだ続く。
All photos by Yuki Kumagai