私は年に一回以上ひとり旅に行く。そのたびに小さな冒険をしたりトラブルを乗り切ったりして、案外自分はタフなのだと気づいた。そしてそんな自分をほんの少しだけ認めることができるようになった。自分に対する信頼は、落ち込んだときに自分を慰めてくれる相棒になると感じている。
今回は、今回は、そんな相棒が見つかる、ひとり旅の魅力をお伝えしたい。
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どハマりしたきっかけは仕方なく行ったひとり旅
シンガポール・リトルインディア
2016年10月、今から8年前。私は一人で海外旅行へ行った。当時はまだ「おひとりさま」とか「ソロ活」なんて言葉はなく、女性が一人で食事やお酒を楽しむことは「寂しい」とか「かわいそう」と言われてしまう空気があったように感じる。
当時、私は退職前の有休消化中で、毎日テレビを見てダラダラと過ごしていた。それを知った友人に「せっかくの長期休暇なんだから出かけたら?」と言われ、妙に納得したので海外に行くことにした。行き先はシンガポール。
何人か友達を誘ってみたものの急に何日も仕事を休めるわけもなく、誰からもOKの返事はもらえなかった。
そんなわけで仕方なく一人で行くことになったのだった。
行く前は楽しみより不安の方が大きかった。美味しいものを食べても「美味しいね」と言い合える人もいないのに、楽しめるのだろうか、と。
けれど実際に行ってみると、どこに行くのも行かないのも自分勝手に決められる自由さにハマった。川沿いに高級ホテルやセンスの良いレストランが並ぶ風景を気に入り、昼も夜も同じ場所をひたすら歩いた。
マリーナベイサンズが見えるこの景色がお気に入り
慎重で保守的な私にとってこの旅は、「えいやっ」と恐るおそる踏み出した冒険だった。そして一人で海外旅行ができたこと、それを120%楽しめたことがささやかな自信になった。
自信をつけて調子に乗った私は、それ以来、年に一度のペースでひとり旅に行くようになった。
ひとり旅に行くたびに積み重なっていくささやかな自信
行く先々で、毎回小さな「えいやっ」があった。
韓国に行ったときは、どうしてもサムギョプサルが食べたくて、韓国人カップルと思われる人たちがひとつの鉄板をつつき合うなか「一人サムギョプサル食べ放題」を敢行した。
日本語が話せる店員さんに、「一人で旅行して寂しくないですか?」とド直球の質問をもらい、「楽しいですよ!」と笑顔で答えるくらいには成長していた。
ハンガリーの首都・ブダペストでは、絶対にドナウ川の夜景を船から観たくて(ブダペストの街並みはその美しさから「ドナウの真珠」と呼ばれている)、一人でナイトクルーズ船に乗った。割り当てられた席を飛び出してマイナス2度の気温のなかデッキへ出て、カイロを握りしめながらあまりの夜景の美しさに涙した。
絶対にその目で確かめてほしい美しさ
周りの目が気になっても、勇気を出して「やってみたい」を実行できたこと。その結果心に残る経験ができたことが、少しだけ誇らしかった。
トラブルにも何度も出くわした。
詳細は前回の記事を読んでいただけると嬉しいが、10日間の旅行の初日、行きの飛行機の中にスマホの充電グッズ一式を置いてきたことがあった。スマホのバッテリー残量は20%。このときはたまたま空港からホテルまでの行き方をメモした紙を持っていたので、それを頼りにホテルまでたどり着いた。
ほかに、こんな危機もあった。
まだコロナの水際対策が実施されていた頃、私は2泊3日で台湾へ行くことにした。現地を出国する際には72時間以内の陰性証明書が必要だと、日本を発つ前日の夜に知った。台湾入国の手続きに気を取られ、帰国時のことを考えていなかったのだ。
72時間ということは3日前、2泊3日の予定なので日本で検査を受けても間に合う。そこで出発当日の朝に検査を受けることにした。
出発日、早めに家を出て無料のPCR検査場へ向かうと、70人はいようかという大行列。血の気が引いた状態で列に並び、渡された整理券に書かれた検査時間を見ると、飛行機の出発時間の30分前だった。
前途多難だった台湾旅行
私は慌ててスタッフの方を呼び止めて事情を説明し、どうにか早く検査を受けられないか相談した。
するとそのスタッフの方は走ってどこかに確認に行き、「有料でよければすぐにご案内できます」と教えてくれた。結局私は5000円を払ってすぐに検査を受けさせてもらい、予定通り出発できたのだった。
迷惑な客だったはずなのに、真摯に対応してくださったスタッフの方には感謝してもしきれない。
どちらのトラブルも自分の確認不足が招いたことで、「私って本当にバカだな」と思う。
けれど同時に、どうにか「困難を乗り切った」という経験を積んだことで、「ピンチが起きてもどうにかなる、どうにかできる!」という謎の自信がついた。
こんな経験をするたびに、案外自分はタフなのだと気付き、そんな自分は悪くないと思えた。初めてのひとり旅で手に入れたささやかな自信を、旅を繰り返すことで少しずつ積み重ねていったのだ(同じくらい自分のダメさにも気が付くけれど)。