こんにちは。写真家の上田優紀です。この冬、「#余白をえがく道東旅」がテーマの、「道東トラベルウィーク2023 冬」に参加してきました。
・参考:【2/9(木)〜13(月)】一生に一度は見たい雪と氷!知床「流氷と大雪原」旅、参加者募集中!|TABIPPO.NET(募集終了)
「道東トラベルウィーク2023 冬」とは、現地集合・現地解散。30以上のコンテンツから参加したい体験を、自由に組み合わせて楽しむ「あたらしい旅」なんだとか。
今年は北海道の道東4エリアで開催され、僕は知床エリアを旅してきました。美しい風景とともに、そんな冬の知床旅をご紹介したいと思います。
知床を目指して
2023年2月、斜里岳(しゃりだけ)を眺めながら、ウトロまで車を走らせる。
海岸線に出て突然目の前に広がった風景に、つい「すげぇ……」とつぶやいてしまった。
海いっぱいに、岸から水平線の向こうまでずっと流氷が埋め尽くしている。氷平線とでも言えばいいのか。はじめて見た人は海が凍ってしまったと錯覚してしまうような世界だった。
冬の知床は2回目だが、ここまでのものははじめてだった。聞けば流氷が着岸したのはつい2、3日前のことらしい。なかなかついている。そんなことを考えながら知床の奥を目指してさらに進んでいった。
流氷を歩く
2月に入ると流氷の季節がはじまる。知床よりさらに北、1,000キロも先のアムール川河口から風に乗って進み、大きくなりながらここに辿り着くのだ。
ここ知床には、そんな流氷を使ったさまざまなアクティビティがある。しかも、北海道の流氷が観察できるエリアの中でも、そのいくつかのアクティビティはここ知床でしか楽しめないものらしい。
前に来た時は、流氷カヌーをした。その時は今回ほど流氷が密集していなかったので、カヌーで流氷の間を進むことができたのだが、今回はそんな隙間もないほどに氷が溢れている。
流氷ダイビングもいいなと思ったが、水中カメラのハウジングは自宅に置いてきたし、せっかくアムール川まで歩いて行けそうなほど流氷が集まっているのだからシンプルに氷の上を歩く、流氷ウォークに参加することにした。
流氷は氷が薄くなっている場所と厚くなっている場所があり、運悪く薄くなっている場所を歩いたらほぼ氷点下の海に落ちてしまう。
どんどん氷を割って落下していく人を横目に、「エベレストのクレバスみたいだな」と思った。知床の流氷の上でそんなこと考えていたのは、僕ぐらいだろう。
冬の森を散策
冬の知床といえば流氷をイメージするかもしれないが、森も魅力的だった。
冬の森には冬にしかない景色がある。冷たく、澄んだ空気。聞こえてくるのはエゾ松の葉が風に揺れる音と、ときどき木に積もった雪が落ちるどさっという音だけ。
音のない森に差し込む光は柔らかく、穏やかな気持ちにしてくれる。
スノーシューを履いて少し歩くと、断崖絶壁の海岸が見えてきた。岩から滲み出る滝は流れ落ちたそばから凍っている。自然が作り出す造形美は、どうしてこうも美しいのだろう。
果ての野付半島
どこまでも1本の道が続いている。右側はオホーツク海。晴れていたら北方領土の国後島が見えるらしい。左側は海が凍って、どこまでも雪原が広がっている。
ここは野付半島。北海道の東端に全長26キロの日本最大の砂嘴(さし)になった細長い半島があり、日本の果てを感じることができる数少ない場所だ。ウトロから車で約2時間。せっかくここまできたので足を伸ばしてみることにした。
しばらくすると日が沈み、空が美しい色に染まっていく。凍った内海には多くの動物たちが暮らしていた。すぐ近くにいた雌鹿を取り合って、2頭の雄鹿が角を付き合わせている。
鹿たちはきっと気の遠くなるような年月をこの地で生きてきたのだろう。その時、僕が見ていたのは何百年、何千年前と変わらない景色だった。
旅の終わりに
氷点下15度。知床の冬は、文字通り吐く息も凍る世界だった。
ただ、触れ合う人は暖かく、自然が厳しいからこそ、その温もりはより色を濃くしていたのかもしれない。
寒いから暖かい、そんな場所だからこそ知床は多くの人びとを魅了しているのだと思う。
次は春に来よう。きっと暖かくなる頃には植物が芽吹き、動物たちも活発に動きはじめる。また冬とは違う風景が僕を迎えてくれるだろう。
All photo by 上田優紀
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