ライター

北海道出身、関西在住。読書と珈琲と文筆と旅を愛する30歳。インドとネパールが大好き。現在、仕事を辞めて妻と二人で海外放浪中。 2023年、珈琲と文学をテーマにした珈琲ブランドを立ち上げる。いまは販売に向けて鋭意準備中…。夢は旅する珈琲屋兼作家!

映画館の帰り道に

チェンナイ空港のすぐ横には大型のショッピングモールがある。その中に映画館があるというので、徒歩で行ってみた。

インドは映画文化が盛んで、国民の娯楽として大人気。最近では世界的に大ヒットするインド映画も増えてきて、ますますその熱は高まっている。

僕らもインド映画が大好きなので、せっかくなので現地の映画館で観てみようということになった。

どの映画がいいかわからなかったので、受付のお兄さんにおすすめを聞いてみると、彼は目をキラキラさせてプレゼンを始めてくれた。「大好きな映画をぜひあなたたちにも見てほしい」。そんな気持ちが伝わってきて、とても嬉しかった。

チェンナイ 映画受付のお兄さん。
彼もムービースターのようにイケメン

僕らが観ることにしたのは、『Vettaiyan』というサスペンスアクションもの。主演はラジニ・カーント。通称・スーパースター。

ラジニさんは、インド映画界の神様と呼ばれるほど大大大人気の俳優だ。

これまで多数の作品に出演し、どれもがヒット作。彼の発言や行動は多くの人々に影響を与え、政治家よりも影響力がある存在だと言われているとか。

そんなスーパースター、ラジニ・カーント主演の最新作。ドキドキしながら開演を待ち、劇場内が暗くなり出すと、あちこちから「フゥーー!」と歓声が上がる。

本編が始まるとさらに盛り上がり、各俳優が登場する度に拍手や歓声が聞こえてくる。

そして、いよいよラジニ・カーントが登場。

場内のボルテージはMAXに。

その空気に乗せられて僕らも「イェーイ!」と思わず叫んだ。

日本では映画館といえば静かに観るものなので、こんな体験ができるのは本当に楽しかった。

Vettaiyan『Vettaiyan』
映画が終わって帰り道。

外は小雨が降っていたが、ホテルまでは真っ直ぐ歩いて15分程。どうせ帰ってもシャワー浴びて寝るだけだからと、濡れながら歩いて帰ることに。

少し歩いたところで、一台の車が僕らの横に止まった。乗っていたのは若い夫婦で、彼らはなんと僕らに、「送っていってあげるよ」と声をかけてくれたのだ。

短い距離とはいえ、濡れずに済むのはありがたいので、お言葉に甘えて車に乗せてもらうことに。

彼らも映画を観に来ていて、僕らのことを場内で見かけたという。映画がとても面白かったと話すと喜んでくれて、ほんの数分の間だったが、彼らは映画やラジニ・カーントについて楽しそうに語ってくれた。

チェンナイ 空港②素敵な二人
降ろしてもらうと、「また困ったことがあったら言ってね」と連絡先を教えてくれて、彼らは去って行った。

なんて親切なんだ……!

僕らが感激したことは言うまでもない。

後から調べると、ラジニ・カーントのファンは、「ラジニ様の名前を汚してはいけない」という意識があり、慈善活動を行う人もいるとのこと。

ファンにそこまで影響を与えるラジニ様もすごいし、ファンも素晴らしい。

雨に濡れる僕らを車に乗せるという善行を積んだ彼らは、紛れもなくラジニファンの鑑だし、それでなくても彼らは元から心根の優しい素晴らしい人たちなのだと思う。

彼らの優しさは、僕らの心を温めてくれた。そして、インド人とインド映画が改めて大好きだと思った。

■詳細情報
・名称:PVR Grand Galada Chennai
・住所:PVR LTD,Grand Galada Mall,Kohinoor-2 Officers Line,Grand Southern Trunk Rd,Pallavaram,Chennai,Tamil Nadu 600043
・地図:
・公式サイトURL:https://www.pvrcinemas.com/

路地の夕景

⁡空港に続く大きな道路脇に「おじさんのチャイ屋」などのお店が立ち並び、ここがメインエリアのようになっている。

その賑やかな通りから一本奥に入る道がある。

ふと気になって歩いてみると、いわゆる住宅街のような感じ。特にこれといったお店もなく至って普通の町並みだった。

⁡しかし、そこには穏やかな空気が流れていて、時間の流れすらゆっくりに感じる平和な景色が広がっていた。

道を進み、まず出会ったのは、爆竹で遊ぶ子どもたち。爆音が少し怖かったが(ビビりなもので)、ひたすら爆竹を投げては逃げる彼らの無邪気な笑い声を聞いていると、こちらも笑顔になってくる。

チェンナイ 路地爆竹少年少女
周りの大人たちも笑いながら彼らを見守っている。

子どもが平和に遊ぶ風景が広がる町はいいところだ。

次に見えたのは行進する牛たち。

街の中を牛が闊歩する光景はインドのどこに行っても見られるが、この時見た牛たちは仲良く並んで歩いており、心なしか表情も優しい気がした。

きっと大事に飼われているのだろう。牧歌的な景色に心が和んだ。

牛が優しい町はいいところだ。

チェンナイ 路地3牛たち
他にも猫と仲良しのおじさんや、道端で談笑する人々、洗濯物を干してるお母さんなどなど。

なんでもない普通の風景が広がっているのだが、普通だからこそ胸を打つものがあった。

僕はふと日本での生活を思い出し、普通の日々こそ価値があり、大切にしなければいけないな、という思いを抱いた。

チェンナイ 路地2夕陽と犬
気がつくと夕方になっていて、すべての風景が夕陽に染まっていた。

そんな美しい町並みに僕はインドの多様性と奥深さを感じ、そしてこの国が好きだと思った。

どれだけ辛い思いをしようと、僕はインドが好きだ、と。

インドの温かさ

思うような観光ができなかったチェンナイ。

しかしその分、素敵な人たちと風景に出会うことができた。

それは入国早々、やられかけていた僕らの心を癒してくれるものだった。

インドは手強い。

混沌、無秩序、雑多、危険、詐欺……。

そんなイメージを持っている人も多いだろう。

日本と比べた時に、それは100%否定することはできない。だけど、それだけがインドの姿ではない。

インド人は好奇心旺盛で、楽しく賑やかなことが大好きという一面もある。だから映画もド派手に盛り上がるし、観光客にも気さくに声をかけて仲良くなろうとする。

その気さくさが時には優しさにつながり、人助けをしてくれることもある。声をかけてくる人みんながみんな、騙そうとしているわけでは決してない。

今回、一ヶ所に少し長めに留まったことで、僕らは素敵な人や景色と出会えた。

思うようにいかない旅だったからこそ、多様なインドの内側の一部にふれることができたのだ。

このチェンナイ空港周辺は観光スポットと呼べる場所では決してない。しかし、ここには手強いインドのイメージを覆すような温かい空気が流れていた。

もしチェンナイに旅行に行き、少し時間が余ることがあったなら、ぜひこの空港周辺をぶらりと歩いてみてほしい。

チェンナイ 空港大通りにはバイクがたくさん

All photos by Satofumi

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北海道出身、関西在住。読書と珈琲と文筆と旅を愛する30歳。インドとネパールが大好き。現在、仕事を辞めて妻と二人で海外放浪中。 2023年、珈琲と文学をテーマにした珈琲ブランドを立ち上げる。いまは販売に向けて鋭意準備中…。夢は旅する珈琲屋兼作家!

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