3月といえば冬らしい景色もまだ残る季節。けれども少しずつ外も暖かくなり、春休みなども重なり旅へ出たくなるだろう。
まだ旅先が決まっていない人は、国内で島旅も選択肢のひとつとして計画してみるのもよいのではないか。
離島といえば「夏の青い空と海!」なイメージがあるかもしれないが、じつはこの時期ならではの瞬間を目にできるかもしれない。
普段の生活ではなかなか見る機会がないであろう、島のひとコマを見に訪れるのも旅の楽しみ方のひとつ。
これも旅先での出会いなのかもしれない。島の人にとってはこの時期の風物詩であり、訪れる人にとっては旅の思い出になること間違いなしだ。
そんな瞬間を求めて、3月に島旅をしてみるのもいいかもしれない。
水族館では味わえない、神秘的で迫力ある瞬間を
12月から4月ごろまで、普段は北の海にいるザトウクジラが繁殖や子育てのために日本の海へやってくる。彼らも大海原を旅してやってくるのだ。そして3月はそんなクジラたちを見ることができるピークでもある。
離島に限らず本州や北海道などでも、ホエールウォッチングのツアーは開催されているが、離島だとツアー以外の時にも見られるチャンスがあるのだ。
母島のホエールウォッチング
それは移動中のフェリーの中からや陸地からなど、ふとした瞬間にクジラの潮吹きやジャンプ、そして尾びれが見えた瞬間の迫力と感動は海でしか味わえない瞬間だ。
離島だと小笠原諸島(東京)、奄美群島(鹿児島)、慶良間諸島(沖縄)などは、ホエールウォッチングを開催しているのでフェリーや陸地でも見られる可能性がある。
野生の動物なので必ず見れるとは言い切れないからこそ、見られた時の感動は人一倍になるはず。
ダイビング終盤で見れたザトウクジラの親子
また、水中だと陸上や船上とは違った楽しみ方がある。それはクジラの鳴き声が聞こえてくる瞬間だ。
水中だと音の伝わる速さが陸上よりも速いため、クジラの姿が見えなくても終始鳴き声が響き渡る。どの方向にいて、どれくらい離れているかわからないが、確かに同じ海で泳いでいる。
ホエールスイムだと水中で見られる可能性が高いが、ダイビングだと鳴き声は聞き続けれるものの、姿を見れるかどうかは運がより必要になってくる。
ザトウクジラを水中で見れた瞬間は、まるで潜水艦が横切っていくような迫力、そして水中で見られた嬉しさで終始興奮(空気の消費が多くなるので、残圧の確認は必須)していた。
船上と陸上そして水中からぜひ一度クジラたちの姿を求めて、島に訪れてみてほしい。
島の見送り、ここでしか見られないドラマがある
3月は別れの時期。島では進学や就職で島を離れる学生や学校の先生の離任、そして島外へ引越し新たなスタートを切る人たちの見送りが行われる。
誰なのか知らない人の見送り。普段なら決して知ろうともしないしその瞬間に立ち会うことすらないが、実際に目の当たりにすると自然に目頭が熱くなる。
その瞬間は島を出港するフェリーが出る港だ。港に集まった見送りの人たちが、その人が島で関わった人たちなのだから、少しだけその人のストーリーを想像してみてほしい。
知夫里島で見送られるひと時
風に揺られる紙テープ、感謝や激励の言葉が岸壁とフェリーから行き交い、メッセージの書かれたボードや時には演奏なども。そして出港するとフェリーを追いかけ港を走る人の姿には、当事者ではなくても見入ってしまう。
飛行機や電車では窓越しの見送りのため、心の声は通じ合っても声は届かない。けれどもフェリーだと、声が届かなくそして見えなくなるまでの間見送りが続く。
場所によってはフェリーが複数の島を経由する航路もある。そうなると島の数だけ見送りを見ることができるかもしれない。
壱岐島で偶然立ち会えた島の先生の見送り
筆者は実際に島で見送る側と見送られる側も経験しているが、別の島へ訪れた時に内容はわかっていても、もちろんその瞬間に感動した。
けれどもこの光景がこの先も続くとは限らない。実際に環境面や安全に考慮し紙テープの見送りを取りやめている島もあるのが現実。見送りの風景も時代とともに変化している。
3月が最も見送りの多い時期だが、毎日行われているわけではない。だからこそ偶然その瞬間に立ち会った時は忘れられない瞬間になり、忘れられない旅の思い出になるだろう。
春を感じ、3月の島を旅する
冬季に比べ荒天や時化による欠航も少なくなり、船のダイヤも通常に戻ることが多いため、3月の島旅は比較的計画しやすい。
だからこそ3月ならではの光景を見に、島へ訪れてみよう。なお、見送りは3月後半に行われることが多くなる。
絶対に見れるとは言い切れないからこそ、それもまた旅の面白さかもしれない。
普段の旅とは少し違う、出会いや瞬間を求めて。
All photos by Suzuki Ei