私が旅をしているときに大切にしているもの。
それは、旅先だからこそ発揮される行動力とチャレンジ精神。
旅はいつも、私をアクティブにしてくれるような気がします。
今回は、私でさえ出会うことを予想できなかった、“旅先だからこそ見られた景色”“体験できた出来事”“出会えたもの”を振り返ってみようと思います。
見出し
今しかできない旅をするために
旅先での行動力が身についたのは、おそらく大学生の頃です。
当時は時間も場所も自由に行動できるひとり旅に夢中になり、「せっかく来たのだから」「今ここでしかできないことを」を合言葉に、普段の自分ではできないちょっとしたチャレンジをしてきました。
旅だから叶えられた、私のチャレンジの記録
愛媛・内子:ママチャリで40分、たどり着いたサンドイッチ
地元をひとりで旅してみようと思い立ち、大学の夏休みに愛媛県・南予地方を電車でめぐりました。内子町を訪れた際は、観光であちこちまわるために自転車をレンタル。
昔ながらの街並みが文化遺産に登録されている内子町を散策した後、サンドイッチのカフェを目指しました。
目的地までは、内子町の中心地から自転車で30分以上。坂道やカーブが続く山道を、自転車で立ち漕ぎしたり押し歩いたりしながら向かいます。ようやく到着したときには40分近くが経っていました。
行きは長い坂道が続きました。
自分の力で手にした一食のサンドイッチ。内子町の山里を自転車でたどり着いた達成感も加わって、その味は格別でした。
帰り道、山並みが続く道を風を切って走り抜けた下り坂。もしバスや車で訪れていたら、ここまで山の景色と空気を堪能できなかったかもしれません。電車で移動する旅と思っていたら、思いがけずサイクリングの旅にもなりました。

北海道・藻岩山:バス停まで全力疾走した展望台の夜景
北海道・札幌では、藻岩山の展望台で夜景を見る予定でした。ところが、モノレール乗り場に到着するとモノレールが運休しているとのこと。代わりにバスが運行していると聞きましたが、発車まであと数分。
「次の便まで待つのがいいですよ」と案内を受けたものの、「もしかしたら間に合うのでは……?」と、バス停まで力の限り走りました。なんとか先発のバスに間に合い、無事展望台へ到着。澄んだ空に、大きく広がる札幌の街。夕方から夜へと移ろう札幌の景色を、山頂から存分に眺めることができました。
2時間ほど滞在して見ることのできた、2つの札幌の街。
東京・日本橋:おかわりしたフルーツサンド
旅の楽しみは“食”と言っても過言ではありません。東京を訪れた際、目的のひとつがフルーツサンドを食べることでした。平日の昼下がり、目星をつけていた果物店にて、メニューの表紙でキラキラと輝くフルーツサンドを注文。
店員さんにハーフサイズもあると案内を受け、夕食も控えていたのでハーフをお願いしました。しかし、出てきたサンドイッチが想像以上に小ぶりで上品。「これは1人前でも食べられちゃうぞ!」と思い立ち、フルーツサンドをおかわり。
知らない場所だからこそ、恥ずかしさを気にせず行動できる。そんな解き放たれたような自由さも、旅の魅力だと感じます。
おかわりした証拠ともいえる、2皿のフルーツサンド。
東京・銀座:寒空のもと2時間並んだ絶品ラーメン
開店前から行列ができるという銀座のとあるラーメン店に、好奇心がそそられた私。最低気温が0度に迫る2月のある日、この一杯を求めて、銀座へ向かいました。店に到着したのが午前9時。並び始めて間もなくして、お店の中から出てきた店員さんが、カイロを渡してくれました。人のぬくもりを感じつつ、行列の先頭で開店までの2時間、待ち続けました。
のれんが店頭に掛かり、食券を買って奥のカウンター席に腰を下ろします。待ち焦がれたラーメンのスープは黄金色に輝き、雑味が全くありません。トッピングには、絶妙な半熟具合の味玉と、やわらかく大きなチャーシューが2枚。
素材ひとつひとつに、丁寧な心で向き合っていることが伝わり、ひとつの作品ともいえる一杯に出会いました。並んだからこそ出会えた味と、人のぬくもりがありました。
寒さも忘れさせる、まさに感動の一杯。
北海道・小樽:ひとりで人力車デビュー
クルーズを楽しんだ小樽運河。
初めて訪れた小樽でやりたかったことは、海鮮丼を食べることと、運河のクルーズに乗ること。クルーズを予約した後、時間があったので運河周辺を散策することにしました。
すると、ある人力車のお兄さんに声をかけてもらいました。「1人で乗るなんて……!」と思い一度お断りしたのですが、「これはもしや面白い経験なのでは!!」と何かのご縁を感じ、ひとり人力車デビューをすることにしました。
小樽の心地よい風を受けながら、人力車のお兄さんおすすめのスポットを案内していただきました。旅先での出会いから生まれた新しい経験に、胸が踊りました。
人力車で訪れた、小樽市の街並み。
香川・小豆島:ひとり旅のお供にレンタカー
大学の卒業旅行でひとり訪れたのは、瀬戸内海に浮かぶ小豆島。運転免許は持っていたものの、ひとりで知らない場所を運転する経験はほとんどありませんでした。
当初はバスやレンタサイクルで島をめぐる予定でしたが、「自分で島を運転してみたい!」と、思いきってレンタカーで旅をすることに。
好きな音楽を聞きながら、好きな時間に、好きな場所へ。時間に追われず、自分のペースで島の景色を楽しむ穏やかな旅。
小豆島の旅をともにしたレンタカー。
レンタカーだからこそ、棚田の風景や地元の方が営む食堂の定食に出会うことができました。ほんの少しの勇気が、こんなにも旅の可能性を大きく広げてくれるのだと感じました。
車で訪れた、棚田の見える食堂にて。
旅が私に勇気をくれる

初めて訪れる場所や空間は、いつも私をもっとアクティブにしてくれます。「ここでしかできない体験」「今この瞬間しか感じられない気持ち」。それを追い求めて、私は私をどこまでも連れて行ってくれるような気がしています。
旅先でしか出会えない風景や人、そして感情。旅を重ねるたびに、新しい自分を発見することが増えました。私はきっと、自分でもまだ知らない“わたし”に会いに行くために、旅をしていくのだと思います。
みなさんも、あなたにしかできない素敵な旅を。
All photos by Yano Akari