突撃!隣の「晩」ごはん@モンゴル
車を3時間ほど走らせると、今度は小さな集落に到着。
木の塀に囲まれたお家は、これまた木で作られたワンルームのとてもシンプルな作りです。電気と水道は通っていますが、ガスはなく、ストーブに薪をくべて大鍋を乗せて料理をつくるのがモンゴル流。
薪ストーブの蓋にあたる部分にすっぽり収まる大鍋。普通は蓋の上に鍋を置くと思いますが、蓋を取り外して鍋を乗せ替えるモンゴル式は、エネルギー効率に無駄が無く、モンゴル人の叡智が集められたようで、個人的に興味深かったです。
ここではモンゴル伝統料理「ホーシュー」をご馳走になりました。小麦粉の生地に羊肉と玉ねぎや、にらなどの野菜を包み、油で揚げた料理。揚げ餃子に似た味で美味しいです。
例のごとく、モンゴルでは出された料理を残すのは失礼とのことで、全ての料理を胃袋に詰め込む、いや強引に押し込む我々。そして恒例行事となったウォッカタイム。
しゅん「あー美味しかった。もう食べられない、もう動けない、もう飲めない。」
ほりお「モンゴル大食いチャレンジ…確実にモンゴルが牙を剥き始めてる。」
この家で料理をご馳走してくれた親戚のお姉さんが、遊牧民のおじさんの場所を知っているとのことで、途中まで先導してくれるみたい。丸2日間移動し続けた道のりもあと僅かです。いや、訂正します。そのはずだったんです。
遊牧民を訪ねて深夜の大遭難!
親戚のお姉さん「川沿いにわだちを見ながらこっちの方向に進めば見つかるはずよ。」
え!?そんなんで大丈夫ですか!?お姉さんが指した方向は完全に暗雲が立ち込めています。
大雨の中、車を走らせること数時間が経過し辺りは真っ暗に。星の光も暗雲と木々に遮られ、ヘッドライトを消すと本当に何も見えない完全なる闇がある深夜12時。
バッタがポツリと呟きます。
バッタ「ごめん、道分かんない。」
だよねー!それね、3時間前くらいから気付いてた。ちなみに、ここは携帯の電波どころかGPSさえも入りません。完全に詰んだ。もはや自分たちがどこにいるのかさえ分かりません。闇夜のキャンプを決断しかけたその時。たまたま1台のバイクが通りかかったのです。
こんな夜遅く山奥にバイク!?これは幽霊か、さもなくば気付かないうちに崖に落ちて死んだんじゃないかと思わせるほど、現実味のない出来事でした。バッタが恐る恐る道を尋ねると、何とバッタの親戚の遊牧民を知っているとのこと。
ナヤ「これはマジで奇跡。こんな山奥で、しかも深夜に、目的地を知ってる人に出会うなんて!」
無口なナヤのテンションの上がり方を見ると、本当に奇跡的な出来事のようです。何かに導かれるように森の中を突き進みます。
やっと会えた。モンゴル遊牧民の暮らしに密着!
モンゴルの遊牧民は「ゲル」という伝統的な移動式住居に住んでいます。室内は広く大人8人が入っても狭さを感じません。木の骨組みと動物の皮で作られたゲルはとても暖かく、快適に寝ることが出来ました。
何かを買おうと思っても、近くの村までなんと車で片道6時間。そんな人里離れた場所でも「人は生きていけるんだ!」と大きなショックを受けました。
遊牧民のおじさん「わはは、日本からよく来たな。モンゴル人以外の奴は初めて見たぞ。今日は遊牧民の歓迎ってのを見せてやろう。おい、お前ら羊を追い込め!」
しゅん、ほりお「は、はい!(え、羊を追い込むってどうやって?)」
バッタ「モンゴルの遊牧民は、本当に大切なお客さんが来た時にだけ羊料理をもてなすんだ。」
遊牧民のおじさん「よく見ておけ。俺らは羊を捌くときに大地に一滴も血をこぼさないんだ。全てを無駄にしないことで生き物に敬意を示しているんだ。」
遊牧民のおじさんは、手際よく約30分程度で羊を捌いていきます。一緒に解体を手伝ったのですが、その鮮やかな手捌きの端々に「自然への感謝」が感じとれ、まるで神聖な儀式を見ているような気分になりました。
遊牧民のおじさん「さぁ今日という日に感謝して、ご馳走を食べよう。」
遊牧民しか食べられないという、新鮮な内蔵を大釜で塩茹でした「羊鍋」をご馳走になりました。
鍋を家族全員で囲み、ひとり1本のナイフを持ち、手掴みで食べるのがモンゴル式。少し臭みはあるものの、思ったよりクセは無く、特にスープは羊の生命力が丸々溶け込んだような力強い味で、夢中で頬張りました。あー美味しかった!
しゅん「遊牧民の暮らしは大変じゃないんですか?」
遊牧民のおじさん「俺たちは好きで遊牧民をやっているんだ。馬や羊を売れば、数千万円になるけれど、俺らは望んでこの暮らしをしているんだ。」
か、カッコイイ。生活が自然と共にある自然体でワイルドな暮らしもそうですが、自分で生き方を決めてそれに納得しているところに惚れてしまいました。
まとめ:過去を悔いることなく、未来を恐れない。
All photo by Shun
地球を感じるほどの大自然の中にポツリと取り残されると、人間がいかに無力で無意味な存在であるかを実感させられます。しかし、そんな厳しい自然環境でも力強く生きる彼らは、過去の出来事について何ら悔いることなく、未来を少しも恐れていませんでした。
モンゴル遊牧民と一緒に暮らしてみて、人生とは生きることの中にあり、それは連続する毎日の中にあるのだと感じました。
ご飯を食べて、寝て、起きるという当たり前の日々を丁寧に生きる。そして自分の時間・精力・情熱をことごとく今に注ぎ込む。「1日だけを精一杯に生きる。」そんなシンプルさこそが、過去や未来の不安から解放され、幸せに生きるコツだと学びました。
こうして、いろんな国の人と関わり、繋がることで、大切な旅の思い出がまた一つ増えていく。そんな幸せを噛み締めながら、今日もぼくは世界を旅しています。