ライター
西嶋 結 ライター・編集者

出版社出身のライター・編集者。本の仕事をしています。これまで訪れた国は70か国ほどで、自分を驚かせてくれる街や国が好みです。有給休暇をフル活用して弾丸旅に繰り出すべく、筋トレに励んでいます。

自分の選択を正解に変えていく

前田:旅好きの学生と話すと、とても優秀なんですよ。なのに将来に迷ってたり、就活がうまくいかなくて困ってたりする。なぜなんでしょうか。

永崎:選択肢が多い時代だからこそ、最適解が見つけにくくなってるんだと思うよ。いかに選択肢を減らして「コレ」というものを見つけるか――その能力が問われる時代になっている。僕はこれを「チョイスリテラシー」と呼んでるんだけど。

こんまりさん(注:『人生がときめく片づけの魔法』の著者・近藤麻理恵さん)の「ときめき理論」ってあるでしょ。ときめかないモノは捨てなさいってやつ。あれも一つの「チョイスリテラシー」の形だと思う。

情報量が多い時代だから、複雑な方程式をすっとばして、「ときめくか、ときめかないか」という選択をしていかないと追いつかない。そして、自分のときめきに従って選んだものを正解に変えていく。正しいものを選ぶんじゃなく、選んだものを正しくするという考え方。

前田:よくわかります。僕も編集長として「どっちがいいと思いますか?」と聞かれることは多いけれど、どちらも大差ないんですよね。あれこれ迷うよりもスパッと決めてしまって、決めた“後”のことを考えるほうが大事。でもこれって、なかなか伝わらない。

永崎:誰かに決めてもらうと、言い訳の余地ができちゃうよね。一方、自分で決めると、自分の選択を正解にしようと努力するようになる。

前田:まさにそうだと思います。

僕は新卒のとき「海外勤務できるから」という理由で大阪ガスを選びました。当時は、海外勤務する方法がそれしかなかったから。でも今は選択肢が増えていて、海外の企業に直接応募したっていい。迷うのも無理はないですよね。

ただ、悩むのは優秀な証だとも思います。できる自信がなければ悩まないし、諦めてしまえば選択肢にもならないわけですから。

そんなふうに悩んでいる学生に対して、永崎さんならどんな言葉をかけますか?

永崎:「フリーランスになりたい」「あの会社に入りたい」……いろいろ迷うことはあると思うけど、全部“手段”だよね。手段は決められないかもしれないけど、「こんな大人になりたい」っていうイメージなら思い浮かべやすいんじゃないかな。

だから「その人のどんな要素に惹かれているのか」「その要素はどうしたら身につけられるのか」っていう視点で考えてみてはどうだろう。

 

人生は3枚のカードで決まる

写真提供:永崎さん

前田:永崎さんの考え方って、本当に素敵ですよね。どうすればそんな考え方ができるようになりますか?

永崎:僕の最大の判断基準は、「自分にとってリスクになるか否か」。たとえば今なら、やりたいことをやれずに死ぬことが最大のリスクだと思ってる。だからやりたいことは早めに潰すようにしてるよ。

たとえば去年は、1年間仕事を休んだ。死ぬときに「家族ともっと一緒に過ごせばよかった」と言いかねないと思ったから。そんな僕でも死ぬときに「もう少し家族と一緒に過ごしたかった」と言うかもしれない。でも少なくとも2018年の1年間は一緒に過ごしたから、自分を納得させられるはず。

そうやって一つずつ潰していくと、心が穏やかになるんだよね。だから、やり残した後悔が生まれそうなことは、早く潰したほうがいい。世界一周とかね。

前田:「旅しておけばよかった」という話、よく聞きますよね。

TABIPPO.NETの読者は20代が多いんですが、永崎さんは20代のとき、どんなことを考えていたんですか?

永崎:20代のころ考えてたのは、人生は3枚のカードを決めるゲームだということ。「誰と」「どこで」「何をするか」というカードね。30代でこの3枚の最適解を選べるようにしようと思ってた。

前田:結局、最適解は見つかったんですか?

永崎:もちろん。「どこで」は、100カ国以上を旅してフィジーを選んだ。だからある程度の納得感がある。「何をするか」も同じ。今まで14カ国で留学してきた僕は、留学が相当好き。留学を仕事にするのは自然なことだよね。

3枚のカードの中で最重要なのは「誰と」。これは最強のカードで、1枚で3枚分の価値があると思ってる。だから結婚相手が最強ならきっと最強の人生になる――20歳のときにそう気づいたんだよね。

前田:なるほど。そう気づいて、どうしたんですか?

永崎:シンプルに、たくさん恋愛したよ。

旅、留学、恋愛。こうしたアクションを経たからこそ、自信をもって3枚のカードを選べたんだよね。新卒で入社した会社でずっと働き続けている人は、自分にとってベストなカードが見えているのかな?

 

マイルールをアップデートせよ


photo by rui maeda

前田:「誰と」「どこで」「何をする」を選ぶ手段として、旅はいいですよね。

永崎:そう。いろいろな場所に行けるし、いろんな価値観を聞けて、その価値観が自分の薬になるから。そうして集めた薬を引き出しに入れて薬箱をアップデートしていけば、そのときどきの症状に合った薬を選ぶことができるよね。困ったときに「あのとき会ったエチオピア人がああ言ってたな」と思い返せば、決断がスムーズになるはず。

前田:よく「決断を減らす」という話がありますよね。たとえば経営者は、重要な判断を下さなければならないから、不要な決断の数を減らす必要がある。だから食べものや服装をテンプレ化すると聞きます。

永崎:この時代、決断コストとの向き合い方は大事だと思うよ。優柔不断な人は、選択しない世界に住むほうが幸せなはず。日本で田舎暮らしが流行っているのも、物理的な選択肢をそぎ落とした環境だからだろうと思ってる。

就活も同じ。膨大な選択肢の中からチョイスするトレーニングにはなるけど、たいていは後悔するよね。

前田:就活の間に信念が見つかるといいですけどね。もちろん、一度決めた信念を変えたっていいですし。

永崎:“マイルール1.0”を“マイルール2.0”、“マイルール3.0”とアップデートしていかないとね。環境を変えずにいると、マイルール1.0で止まってしまうリスクがあることは覚えておいてほしいな。

前田:旅をはじめとした人生経験で、マイルールをアップデートさせていけるといいですよね。永崎さん、ありがとうございました!

text:西嶋結
photo:前田塁

ライター
西嶋 結 ライター・編集者

出版社出身のライター・編集者。本の仕事をしています。これまで訪れた国は70か国ほどで、自分を驚かせてくれる街や国が好みです。有給休暇をフル活用して弾丸旅に繰り出すべく、筋トレに励んでいます。

RELATED

関連記事