島国に住んでいるのに、なぜか離島に憧れる。海で囲まれ、小さい土地いっぱいに緑と人々の暮らしがつめこまれた、離島に。
本島から八重山諸島を含む大小さまざまな島によって成り立っている、沖縄。
沖縄は島によって、食も景色も文化も異なります。海の色も、空の色でさえも。だから沖縄の魅力は、離島を渡り歩いてこそ知れるのかもしれません。
この記事では、沖縄好きにこそ行ってもらいたい、那覇・石垣からフェリーで行ける離島を紹介します。
食は久米島。サイプレスリゾートを拠点に島の食材をほおばって
那覇のとまり港からフェリーで3時間半、または飛行機で1時間弱。手つかずの海が残る「はての浜」を訪れるひとも多い、久米島。
久米島は、海や山のうまいものがそろいます。
まず、おすすめのホテルはサイプレスリゾート久米島。空港からも近く、目の前にはインフィニティプールが見える、海を楽しむならぴったりのホテルです。
サイプレスに泊まったときのお楽しみは、久米島の食材をつかった料理。とくに朝食は、寝坊しても逃さず食べてもらいたいほど。
コロナ対策でバイキングは中止していましたが(2020年11月時点)、プレートに乗った一口サイズの料理は、どれも新鮮な素材が丁寧に味付けされたレストランの味。
シェフが、島の食材のおいしい食べ方を知っているからこその、一皿。目の前に広がる海を眺めながら、ゆったりといただいたら、久米島は食の島だと思ってもらえるはずです。
運が良ければ、久米島空港から発着する飛行機と海のツーショットを撮ることもできますよ。
・名称:サイプレスリゾート久米島
・住所:沖縄県島尻郡 久米島町大原803-1
・地図:
・アクセス:久米島空港、久米島兼城港から無料シャトルバスあり
・電話番号:098-985-3700
・URL:サイプレスリゾート久米島公式サイト
久米島の豊かな海と水が、おいしい車海老や鶏を生む
久米島と言えば、海。
きれいな海は良質なプランクトンを育て、それを食べる魚や車海老、もずくやアーサはおいしく育ちます。とくに車海老は、ぜひ島内のお店で味わってもらいたい食材。
中でもおすすめは、「ゆくい処 笑島」。濃厚な海老出汁そばが人気のお店で、カレーにも大きな海老が3尾ものって出てきます。
もう一つ、久米島で味わってもらいたいのは久米島赤鶏。
久米島の山々から流れるきれいな水と、沖縄の泡盛として有名な久米仙の酒かす。そして地鶏と同じ丁寧な飼育方法が、久米島赤鶏の特徴です。
ジューシーで歯ごたえのあるお肉で、熱々のフライドチキンは「うまい!」と叫びたくなるおいしさ。久米島赤鶏は、島の飲食店をはじめECサイトや直売所で買い求めることができます。
同じ沖縄の島々でも、そこで食べられるおいしいものは驚くほどにさまざま。ソーキそばひとつとっても、島によって出汁や具材は変わります。そんな違いにも目を向けながら、沖縄の食を楽しんでみてください。
景色は渡名喜島。ふくぎ並木に赤瓦、昔ながらの沖縄を歩く
沖縄と言って思い浮かべるのは、青い空に透明な海、赤瓦屋根とシーサー。そんな風景を実際に見ることができるのが、那覇からフェリーで2時間の島、渡名喜島です。
夏のシーズンのみ1日に1往復できるフェリーが運航しており、その他の時期は宿泊が必要になります。
島にある宿は3つだけ(2021年1月現在)。それゆえに島に降りる観光客の数はほかの島々に比べてとても少なくなります。だからこそ、この島には手つかずの自然が残り、静かでのんびりとした時間が流れているのです。
沖縄の風景に欠かせない防風林のひとつ、ふくぎ。
頑丈で大きな葉がつくふくぎは、夜になると夜空の明かりを遮って道を真っ暗にするそうで、島のおばあは「昔は怖かったさ」と話していました。そんなふくぎですが、その頑丈さゆえ、島を台風から守る役割を果たしています。
また、渡名喜島の魅力は夜の景色にもあります。
島の集落は、徒歩でぐるりと回ることができるほどの広さで、東西を抜ける一本道には「フットライト」が並んでいます。
膝くらいのところで、ほわりと光るフットライト。夜空の星の明かりを邪魔しないようにと考えられたもので、島の夜を神々しい雰囲気へと変えてくれます。
朝日を見るなら、あがり浜
民宿から歩いて3分の、あがり浜。「あがり」とは、陽があがる方向、つまり東側の浜ということ。朝日を見るために、少し早起きをして浜まで散歩をしました。
海岸線からゆっくりとゆっくりと上がってくる朝日。まぶしくて目をそらしたいのに、どうしてか目が離せない。いつもの一日がはじまるだけなのだけれど、この一瞬だけは特別に感じます。
渡名喜島は、ただ美しい島ではありません。
島から西側を眺めると、小さな無人島「入砂島」があります。その島にある山は、半分が焼け焦げています。米軍の軍事演習場となっているからです。それによって、島民の一部は生活を支えられているという側面もあります。
沖縄に行くなら、沖縄を美しいと言うなら、そのすぐ横にある事実も知っておきたい。私はそう思います。良い悪いだけでは片づけられないからこそ、見て知って感じることを、旅を通じてできたらと思うのです。
文化は西表島。島の農家民宿マナで、イノシシ・さとうきびに触れる
石垣島から高速フェリーで45分、西表島はまさに大自然に包まれた島です。島の中央部分は多くが国立公園となっていて、足を踏み入れることはできません。
海、山、川に恵まれ、沖縄の離島ではめずらしくお米の栽培もできる島。山ではイノシシが駆け回り、マングローブも生息しています。
そんな西表島には、島に移住した石原さんご夫婦が営む、農家民宿マナがあります。
マナに泊まったことで、西表島を好きになってしまった私。たった2回しか泊まったことがないのに、実家のような気持ちを抱く。それほどに、石原さんご夫婦の愛情深さと島の懐の深さを感じる場所なのです。
農家民宿マナは、1日1組限定の宿。シンプルで清潔な宿泊棟、お食事をいただく棟、そして季節によって泊まり込みで働いている方の棟など、マナの敷地はにぎやかです。
夏の観光シーズンは宿泊客が多く訪れ、冬の時期のマナは収穫で大忙し。ご主人の石原和義さんは、さとうきび、春ウコンの栽培と、イノシシ猟も行っています。
旬のごちそうを囲む。帰ってきたくなる、島の夜を過ごして
農家民宿マナでは、朝と夜、石原ご夫妻が手料理をふるまってくれます。食卓に並ぶのは、島の旬の食材。石原さんが育てた春ウコンや、冬になればイノシシ肉もいただけます。
冬の収穫シーズンは、島外からマナの仕事を手伝う人たちも集まり、夕食の席はとってもにぎやか。さとうきび刈りやウコン収穫で一日働いた方々をねぎらいながら、島の地域に伝わる昔話や、毎年島のみんなが楽しみにしている行事の話を聞かせてもらいました。
テレビはなく、電波が遠いのでスマホを触る時間もなく、ただただ島の人たちとしゃべって飲んで笑って。夜にまっくらな道を歩きながら空を見上げると、降り注ぐほどの天の川が見えました。
そういう夜こそが、お金で買えない贅沢です。
ぐっすりと、よく眠れた翌朝。
私が沖縄滞在でもっとも楽しみにしている朝ごはんは、石原孝子さんの手作りパン。孝子さんが育てるローゼルのジャム、イノシシ肉のタコミートも並び、朝からごちそうです。
この日はベーグルで、ベーグル好きの私は2つもいただきました。
西表島の夏は、海・山・川のアクティビティが目白押し。
自然の中で思い出をつくるもはもちろん、マナのようなほっとする場所にも、ぜひ訪れてみてください。
行けば行くほど魅了される、沖縄の島々
実際に島々をめぐってみると、SNSで目にするような沖縄のイメージをはるかに超えるような瞬間に出会うことができます。
琉球時代から脈々とつづく食や自然や暮らしを守りながら、訪れる人を楽しませようと受け入れてくれる島民。そんな彼らとの出会いは、インターネットを介してでは伝えきれないからでしょう。
島々を旅すれば、シェアしたくないような、ぎゅっと離したくないような瞬間に、きっと出会うことができます。
SNSに載せられない、あなただけの沖縄を旅してみてください。
All photos by hinako morino