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映画『ミッドナイト・イン・パリ』に導かれて
ウッディ・アレン監督の映画『ミッドナイト・イン・パリ』を観て以来、ずっとパリに憧れていた。
アン・ハサウェイ主演の『プラダを着た悪魔』や、Netflixの『エミリー、パリへ行く』など、パリが舞台となった作品を見るたび、その美しい街並みに釘付けになっていた。
フランスの中でも、ニースやマルセイユ、エクサン・プロヴァンスなどの南仏エリアは巡ったことがあったが、パリには人生で一度も行ったことがなかった。
旅人なら分かってもらえると思うのだが、ニッチな国や都市に一緒に行きたいと言ってくれる友達が見つかればそちらを優先しがちだ。そのため、パリのような人気都市は「いつでも行ける」と後回しにしていた。
しかし、デンマークのコペンハーゲンでワーホリをしていた2024年、パリへの想いが高まり、遂にパリ行きの航空券のチケットを予約。そしてある冬の雨降る日に、シャルル・ドゴール空港に降り立った。
空港から市内へ向かうバスに乗る前に立ち寄ったパン屋で、ささっと軽食を買う。パン・オ・ショコラのような味の、スティック状のパンを一口食べた瞬間、思わず口角があがった。美味しい……!
「空港のチェーン店でこのレベルなら、人気ブーランジェリーのパンはどれほど感動するのだろう!」と、パリでの料理への期待が大きく膨らんだ。
フレンチレストランで極上の幸せディナー
パリの街並みはどこを切り取っても美しく、歩くだけで楽しい。重厚感のある建物、繊細なデザインのバルコニー、統一感のある街並み……そのすべてにときめいた。
ラファイエットグルメ館のショーケースに並ぶ美しいケーキを眺めたり、トリュフ専門店でトリュフリゾットを食べたり、エクレアやガレット、オニオングラタンスープなどフランス発祥の食べ物を堪能した。
老舗のカフェで優雅なモーニングを楽しんだり、気軽に本格フランス料理が楽しめる大衆食堂へ行ったりと、胃腸が忙しいほどのグルメ旅となった。
旅先での移動は地下鉄よりもバス派。街並みを楽しみながら移動できるのが楽しい。
バスの車窓から街を眺めていると、素敵なお店が次から次へと目の前に現れる。それをgoogle mapsで検索し、ピンを立てておくというのが私の習慣だ。
自分のセンスを頼りに、これは!というお店をgoogle mapsで検索していたところ、パリ10区に位置するBonhommeというフランス料理店を発見。
レビュー評価が4.8点と高く、メニューも手の届く価格帯、そして雰囲気は抜群だった。バスを降りるまで店探しは続けたが、やっぱりここが印象的だったので電話で予約をした。
素敵な雰囲気のレストランに1人で予約するのは店側に嫌な顔をされるのでは、と少し不安に思ったが、電話口のスタッフは「それでは今夜お待ちしておりますね!」とフレンドリーに対応してくれた。
レストランに到着してからもスタッフは親切で、どの席がいいか選ばせてくれるほど。私は厨房に近い活気のある席を選び、にぎやかな雰囲気を楽しんだ。
周りを見渡すと地元のマダムやムッシュたちで賑わうお店のようで、とても居心地が良かった。
注文したのは、鶏もも肉のロールに様々なソースが添えられたお料理。他の料理が厨房から運ばれていく様子がよく見えたが、どれも芸術的な盛り付けでとても魅力的だった。
私のもとに運ばれてきた料理は、ジューシーな鶏肉を中心にソースで飾り付けられていて、視覚的にも楽しめた。まるでお皿をキャンバスに見立てて絵を描いているようだった。
鶏肉の旨味とソースの酸味や甘味のバランスがよく、一口目からとても感動した。お酒は弱いけれど、せっかくなのでと注文したワインも風味豊かで美味しい。ワインの種類の多さはさすがの本格フレンチレストラン。選びきれずにスタッフのおすすめをいただいた。
美味しい料理とお酒を素敵な雰囲気のレストランで楽しむーそんなシンプルながらも極上の幸せを一人でじっくりと噛みしめた。
不思議と寂しさはなく、周りの雑音に入り込み「これがパリに暮らす人の外食文化かぁ」と思いを馳せながら、デザートまで平らげ大満足な夜を過ごした。
・名称:Bonhomme
・住所:58 Rue du Faubourg Poissonnière, 75010 Paris, France
・地図:
・営業時間:【火曜〜金曜日】12:00-0:00 【土曜日】12:30-0:00
・定休日:日曜日、月曜日
・電話番号:+33 9 87 71 69 17
・料金:40-60€/人
・公式サイトURL:https://bonhomme-resto.fr/en/
インスピレーションの宝庫、パリのモダンインド料理
私は間借りのスパイスカレー屋を不定期で開催しており、自分のカレー屋へのインスピレーションになればと思い、パリでもインド料理店を訪れることに。
google mapsで見つけたのは、3,500件以上のレビューがあり評価4.8点のDelhi Bazaarという人気店。
写真やサイトを見ると、ポップな色づかいがキュートな店内や料理の盛り付けに心が踊り、すぐに予約をした。
まずは前菜に「ダヒ・プリ」を注文。
「ダヒ」はヨーグルト、「プリ」は揚げた薄い生地を意味する。
じつは「ダヒ・プリ」は初めて聞いた料理名だったが、これはインドに行ったときに気に入った「パニ・プリ」の兄弟的存在だと推測。
インドで食べた「パニ・プリ」。揚げた生地の中にカレー風味のスープが注ぎ込まれ美味しかった
私のテーブルにダヒ・プリが運ばれてきた。色鮮やかなトッピングに目を奪われる。ひとつ食べてみると、揚げた生地はサクサクとした軽いお煎餅のような食感で、口に入れるとすぐに溶けるので中からソースが溢れ出して口いっぱいに美味しさが広がった。
ミントの爽快感やタマリンドの酸味など、複雑な味が絡み合う新感覚の美味しさに感動した。
Delhi Bazaarにて前菜の「ダヒ・プリ」
メインディッシュにはバターチキンカレーを注文。ベジタリアンのオプションとして、チキンの代わりにパニールというインドのチーズを選ぶことができた。
私がヨーロッパでスパイスカレー屋のイベントを行う時は、必ずベジタリアンメニューを用意しているのだが、肉の代わりに豆腐を使うくらいしか私にはバリエーションがなかったので、参考にしたいと思いベジタリアンメニューを頼んだ。
バターチキンカレーをベジタリアンのオプションで
大きなパニールが2枚真ん中に鎮座した鮮やかなオレンジ色のカレーが運ばれてきた。カレーはバターのコクとスパイスの刺激が絶妙。
パニールはマリネして焼かれた状態でカレーに入っており、パニール単体でも食欲をそそるクセになる味だった。
カレーに合わせて注文したチーズナンも絶品だった。
親切なホールスタッフの温かいおもてなしや、オープンキッチンで手際よく生き生きと働くシェフたちの姿を間近で楽しめたことにも、大満足だった。
Delhi Bazaarの店内の様子。写真左がエントランス、中央がオープンキッチン、右がバーカウンター
後日コペンハーゲンで開催した自身のスパイスカレー屋のイベントで、ここで得たアイディアを参考に、塩麹でグリルしたパニールをベジタリアン向けのオプションとして取り入れたところ、多くのお客さんに喜んでもらえた。
・名称:Delhi Bazaar
・住所:71 Rue Servan, 75011 Paris, France
・地図:
・営業時間:12:00-14:30 / 19:00-22:30
・定休日:なし
・料金:ランチ15-30€/人
・公式サイトURL:https://www.tandoor-club.com/
女子ひとり旅でも安心快適なおすすめホステル
photo by The People
パリは宿泊費が高く、特に一人旅の場合はホテル代が割高になることが多い。
仲の良い友人2人にパリへ行くことを話したところ、2人とも以前にパリを一人旅した経験があり、どちらも同じ “The People” というホステルを利用したことがあると教えてくれた。
清潔で快適なホステルだとおすすめされ、2人が揃って勧めるなら間違いないと思い、私も予約を取ることにした。
The Peopleはパリ市内にいくつかのロケーションがあるが、私はショッピングも楽しみたかったため、お洒落ショップが集まるマレ地区にあるホステルを選んだ。
私は女性4人用ドミトリーに3泊、快適に過ごせた。水回りも含め清潔度が高く、周辺の治安も悪くなかったので女子ひとり旅にもおすすめ。
・名称:The People Paris Marais
・住所:17 Bd Morland, 75004 Paris, France
・地図:
・電話番号:+33 1 81 22 40 88
・料金:40-90€/人
・公式サイトURL:https://www.thepeoplehostel.com/en/destinations/paris-marais/
パリの魅力と美食に心満たされる旅
念願のパリ旅は、素敵なレストランとの出会いのおかげで大満足のものになった。
パン屋巡りからカフェ、ビストロ、モダンインド料理まで、美味しいもの尽くしの日々だった。
料理一皿一皿やレストランの空間から一流の精神を感じられるのもパリの魅力。
パリは私にとって、感性を刺激し五感を満たしてくれる特別な街になった。
All photos by Yurie Shiba