「最近、忙しいってしか言ってない気がする」
「頭のなかはずっといっぱいで、本当に大事なことがわからなくなってる」
忙しい現代を生きる私たちは、日常のなかで気づいたら時間に追われている。そんな人も多いのではないでしょうか。私は、そんな風に日常に埋もれてしまったと感じたときこそ、旅へ出かけるサインなのだと思っています。
そんな旅好きの私が、「忙しくて、自分と向き合えていない」と感じている方におすすめしたい旅のスタイルが、近年注目されている「リトリート」。
今回の記事では、韓国・ソウルでのリトリート旅のプランをご紹介します。
見出し
- 1そもそもリトリートとは?
- 2なぜ、ソウルでリトリートを?
- 3ソウル・リトリート1日プラン
- 3.18:00 人気のベーカリーでパンをかって、ソウルの森へ
- 3.2ソウルの森〜漢江につながる道を散歩
- 3.312:00 文房具店「POINT OF VIEW」でお気に入りのノートを見つけよう
- 3.413:00 人が多くなる前に聖水洞を離れ、乗り換え駅の往十里で立ち食いキンパの昼ごはんを
- 3.55号線に乗って望遠洞へ。地下鉄の移動も、リトリートの一部。
- 3.614:30 市場で、ローカル体験
- 3.716:00 ブックカフェで一休み
- 3.819:00 夕方漢江に移動。漢江からの夕日は旅のハイライト
- 4おわりに:自分に、静かに戻る旅
そもそもリトリートとは?
最近、「リトリート」という言葉を耳にする機会が増えてきました。ストレス社会に生きる私たちにとって、新たなリフレッシュの方法として注目されている過ごし方です。
本来「リトリート=Retreat」とは、隠れ家や引きこもりを意味する言葉です。「リトリートメント(Retreatment)=再生」に由来していると言われています。欧米では「日常から一歩引いて、心身をリセットする時間」として使われています。
つまり、リトリートとは、観光が目的の旅行とは違い、心身のリフレッシュや自己成長を意味する旅のスタイルのこと。私はリトリートを、非日常のなかで、普段の生活とは一歩置き、自分自身と向き合う。本来の自分に出会う旅のことだと思っています。
なぜ、ソウルでリトリートを?
リトリートというと、自然に囲まれた静かな場所をイメージする方が多いかもしれません。もちろん、そうした自然とのふれあいもリトリートの大切な要素ですが、私が考えるリトリートとは「非日常のなかで、本来の自分と出会うこと」「自分の気持ちに丁寧に向き合うこと」です。
だからこそ、私はソウルという都市が、リトリートにぴったりの場所だと考えています。ソウルは日本ではありません。でも、遠すぎない・怖すぎない。だけど日常とは違う。そんな絶妙なバランスが、ソウルにはあります。
海外が初めてでも、治安は比較的よく、言語の壁も翻訳アプリを使えば、大きな問題にはなりません。むしろ「ちょっとの不自由さ」こそが、自分の感情と向き合う良いきっかけになるはず。だから私はリトリート旅にはソウルをおすすめしたいと思っています。
次に、私が11年暮らしながら、実際に歩いて感じた “自分と出会うための” ソウル・リトリート1日プランをご紹介します。
ソウル・リトリート1日プラン
ソウルはひとことで言うと、にぎやかでエネルギーに満ちた大都会。高層ビルとおしゃれなカフェが立ち並び、日本とはまた違った空気感に、思わず背筋がシャキッとするような瞬間がある、そんな街です。
ふと目に入る看板の文字、聞きなれない言葉、色づかい、人々の距離感。
日本にはない景色に、小さな違和感を覚えることもあるでしょう。でも、そんなひとつひとつの“違い”を受けとめていくうちに、自分が大切にしている価値観や、今の気持ちが、少しずつ見えてくる。そういう内面の感情に意識を向けながら、ぜひ次のプランを試してみてくださいね。では早速、朝からのプランを紹介いたします。
8:00 人気のベーカリーでパンをかって、ソウルの森へ
1日のはじまりは、聖水エリアの人気ベーカリー「聖水ベイキングスタジオ」でパンを調達し、サンドイッチやクロワッサンをテイクアウトして、そのまま「ソウルの森」へと向かいましょう。
ソウルの森は、ソウルのセントラルパークと呼ばれる大きな公園。朝の静けさのなかで、緑を感じながら歩いていると、自然と心が整ってくる。ソウル市民を優しく包み込む小さな工夫で溢れている場所でもあります。
ベンチに書かれる言葉に目を向けてみて
園内に点在するベンチには、有名人の格言や、優しいメッセージが書かれています。韓国語がわからなくても、翻訳アプリを使えば大丈夫。きっと今のあなたの心の状態にふさわしい、素敵な言葉を持ち帰ることができるでしょう。
お気に入りのベンチに腰かけて、韓国文学を読んだり、行き交う人や、犬の散歩をする人たちをぼんやり眺めたり。ただ静かにそこにいるだけで、ソウルという街に溶け込んでいくような、不思議な心地よさがあります。ソウルの森で過ごす朝は、ただの散歩以上に、自分自身の内側に静かに耳を澄ませる、とても贅沢な時間になるでしょう。
・名称:聖水ベイキングスタジオ
・住所:ソウル特別市 城東区 聖水洞1街 668-123
・地図:
・アクセス:地下鉄2号線トゥクソム駅から徒歩5分
・営業時間:8:00~19:00
・定休日:年中無休
・公式サイトURL:www.instagram.com/seongsu_baking_studio
ソウルの森〜漢江につながる道を散歩
ソウルの森の遊歩道は、ソウルを流れる大きな川、漢江(ハンガン)へとつながっています。 静かな木立から、だんだんと広がる空と水辺の景色へ。
右手には、緑の山の上にソウルタワー。対岸には、高層ビルが立ち並ぶソウルの高級エリア「カンナム」の街並み。自然と都市が共存するダイナミックな景色に、今自分が「ソウルの真ん中」にいるという感覚が広がっていきます。
この場所は、ただの観光地ではありません。朝の空気を感じながら、自分のペースで歩いたり立ち止まったりすることで、自分の呼吸と心の動きに静かに気づく時間が持てる場所です。
ランニングを楽しむ人、サイクリングをしている人たちも行き交います。そんなソウル市民の日常にそっと混ざりながら、あなたも“自分にとって心地いい朝の過ごし方”を見つけてみてください。
12:00 文房具店「POINT OF VIEW」でお気に入りのノートを見つけよう
漢江からゆっくり川沿いを歩いて、昼前には聖水洞のメインストリートに移動してみましょう。ソウルで今一番ホットな街だと言われる聖水洞は、若者が集まる街で、韓国の最新クリエイティブや、個性的な建築が並ぶ感性が刺激される街。歩いているだけでも、新しいインスピレーションに溢れてくる場所です。
そのなかでも、私がリトリートとしておすすめしたい場所は、文房具店「POINT OF VIEW」。ここは韓国ブランドの文具や本が並び、ディスプレイもとにかく美しい。旅の記録を書き留めるためのノートや、これからの自分に贈る1冊を探すのにぴったりです。
人気店なので、12:00オープンの直後を狙うのがおすすめ。この時間帯なら、並ぶ必要もなくスムーズに入ることができます。
・名称:POINT OF VIEW
・住所:18 Yeonmujang-gil, Seongdong-gu, Seoul,
・地図:
・アクセス:地下鉄2号線聖水(ソンス、Seongsu)駅 4番出口 徒歩7分
・営業時間:12時00分~20時00分
・定休日:年中無休
・電話番号:+8224690077
・公式サイトURL:https://pointofview.kr/
13:00 人が多くなる前に聖水洞を離れ、乗り換え駅の往十里で立ち食いキンパの昼ごはんを
往十里で立ち食いキンパ屋さん
午後になると、混雑してくる聖水洞。午前中に用を足して、別のエリアに移動しましょう。この後は、ローカルが集まる望遠洞(マンウォンドン)がリトリートのおすすめです。
その途中、乗り換え地点である往十里(ワンシムニ)駅に立ち寄ります。駅は複数路線が交わる駅で、まるでソウルのハブのような場所。
往十里駅の構内には、地元の人たちに愛される立ち食いキンパのお店があります。観光客向けではないその雰囲気に、ちょっとドキドキするかもしれません。でも言葉が通じなくても、たどたどしい韓国語や翻訳アプリを駆使して挑戦してみる。なんとか注文できたら、ちょっとした達成感が味わえるはずです。
ひとりで海外でごはんを食べるって、最初は緊張するかもしれない。でも少しだけ勇気を出してやってみる、その経験こそが自信になり、旅の忘れられない思い出になります。
一口サイズの小さいキンパ。これで5000ウォン以下は嬉しい!
5号線に乗って望遠洞へ。地下鉄の移動も、リトリートの一部。
昼ごはんをサクッと済ませたら、地下鉄2号線から5号線に乗り換えて望遠駅へ。少し距離はあるけれど、この移動時間もまた、旅の大切な一部です。ソウルの地下鉄に揺られながら、ふと考えてみてください。
「この椅子、何人がけだろう?」
「韓国の人たちは、地下鉄の中でどんなふうに過ごしているんだろう?」
「日本との違いって、何があるだろう?」
ただスマホを眺めるのではなく、今いる場所を“観察する時間”に変えてみると、不思議といろんな気づきが訪れます。移動中のこの静かな時間こそ、リトリートの真骨頂。 “旅先の地下鉄”という日常のようで非日常な空間が、思いもよらない感情やアイデアを引き出してくれるかもしれません。
14:30 市場で、ローカル体験
市場入り口の八百屋さん
望遠洞についたら、ローカルの集まる望遠市場へ。食べ歩きやお土産探しにもぴったりな場所です
ローカルフードの食べ歩きやお土産探しを楽しむのはもちろん、せっかく市場にきたら、日本との違いも存分に楽しんでみてください。
韓国の野菜の売られ方、価格の違い、野菜の形や色など、日本とどう違うのか?そんなところに目を向けて、日本との違いにどう感じるのか、その時に出てくる感情をしっかりキャッチしてみてください。
もしかしたら違和感を覚えるかもしれません。でもそれでも大丈夫。それこそが、あなたが日常で大切にしている価値観そのものです。
16:00 ブックカフェで一休み
「文学・コーヒー・音楽」が共存するカフェ
望遠市場を少し離れると、おしゃれなカフェや雑貨店などが並ぶのが、望遠洞の魅力のひとつ。
ブックカフェや独立系書店も多いので、リトリートにふさわしい、本に触れられる時間も存分に作ることができます。
私のおすすめはブックカフェ「진부책방스튜디오(Book and Studio Jinbu)」で、旅での気づきを振り返る時間を持つこと。
「一番印象に残った景色は?」
「ソウルの街並みに違和感を持った場所はあった?」
「日常に取り入れたいものは?」
そんな問いを立てながら、ブックカフェでぜひゆっくり旅の振り返りを行ってみてくださいね。
・名称:진부책방스튜디오(Book and Studio Jinbu)
・住所:Seoul, Mapo-gu, Jandari-ro, 112 F2
・地図:
・アクセス:地下鉄6号線の望遠駅1番出口徒歩5分
・営業時間:12:00~20:00
・公式サイトURL:https://www.instagram.com/jinbubooks
※必ずSNSで最新情報をチェックしてください
19:00 夕方漢江に移動。漢江からの夕日は旅のハイライト
最後に立ち寄ってほしいのは、朝に訪れた聖水洞の漢江とは別の魅力を持つ「望遠漢江公園(マンウォンハンガンコンウォン)」。ソウル市内には全部で11ヶ所の漢江公園がありますが、望遠駅から歩いて約15分のこの公園は、観光客も少なく、穏やかでゆったりとした空気が流れています。
季節の良い夕方には、川沿いでのんびりする市民の姿があります。そんな穏やかな光景のなかで、自分だけの時間を過ごしてみてください。
公園近くには、歴史を感じさせる「望遠亭址(マンウォンジョンジ)」という文化遺跡があり、美しい韓屋を楽しめるスポットもあります。さらに、漢江の水面に浮かぶように建つスターバックスもあり、ここで川を眺めながら一息つくのも◎。
夜が近づいたら、公園内のコンビニでインスタントラーメンと韓国のクラフトビールを買って川沿いのベンチでひとり夜ごはん。観光を詰め込むのではなく、自分のペースで、心が動くままに歩いて、感じて、過ごす。そんな時間こそ、リトリートの本質なのかもしれません。
おわりに:自分に、静かに戻る旅
リトリートは、特別な場所や高級な施設に行くことだけが目的ではありません。いつもと違う街を歩き、知らない景色に触れ、慣れない空気のなかでちょっと緊張してみる。そんな小さな“非日常”のなかに、心がふっとゆるむ瞬間や、本当の気持ちに気づく時間が潜んでいます。
ソウルは、にぎやかで刺激にあふれた大都会。でも、そのなかに、ちゃんと静けさややさしさがある。日本から少しだけ距離をおいた場所で、自分と向き合う時間を過ごすには、ちょうどいい街です。
ひとりでベンチに座ってパンをかじったこと、勇気を出して注文したキンパ、漢江の夕暮れをただ眺めていた時間。そんなすべての小さな経験が、今のあなたを癒し、満たしてくれるはず。
“旅をする”というより、“自分に戻る”ために。そんなソウルの1日リトリート、ぜひ体験してみてくださいね。
All photos by Nodoka Kainuma