都市の喧騒のなかで暮らしていると、仕事や日々の生活に追われて、自分自身を見失いそうになることがある。
そんなときには、ぜひ福井県に足を伸ばしてみてほしい。
北陸三県のひとつ、福井県。観光地としての派手さこそないかもしれないが、そこには美しい海と山、人々が受け継いできた文化、そして深い歴史が息づいている。
そんな風景のなかを、本を一冊携えて歩く旅はいかがだろうか。大自然と人の営みが織りなす静かな世界を、歩き、見て、感じ、そしてページをめくる。
今回は、そんな時間を味わえる2泊3日の旅プランを、僕自身の体験を交えて綴っていこうと思う。
喧騒から少し離れて歩くその旅は、きっと自分自身の心を見つめなおすきっかけになるはず。
お気に入りの一冊を携えて
見出し
- 1【1日目】小浜で海と文化にふれる
- 1.1ローカル線で小浜へ
- 1.2遊覧船で「蘇洞門めぐり」
- 1.3工芸体験で心を整える
- 1.4町歩きと海岸散歩
- 1.5おすすめグルメ「おろし蕎麦」&「ソースカツ丼」
- 1.61日目の読書案内
- 2【2日目】神の島「雄島」と断崖絶壁「東尋坊」、そして癒しの「あわら温泉」へ
- 2.1神の島「雄島」に上陸
- 2.2名勝・「東尋坊」へ
- 2.3「あわら温泉」でほっとひと息
- 2.4おすすめグルメ「やきとりの名門 秋吉」
- 2.52日目の読書案内
- 3【3日目】「恐竜博物館」と「白山神社」で、深い時間の流れを感じる。
- 3.1恐竜王国・福井が誇る「恐竜博物館」
- 3.2「平泉寺白山神社」で悠久の時を想う
- 3.3おすすめグルメ「ボルガライス」&「へしこ」
- 3.43日目の読書案内
- 4時間をかけるからこそ見えてくるもの
【1日目】小浜で海と文化にふれる
ローカル線で小浜へ
東京方面から福井へは、2024年3月に延伸した北陸新幹線が便利。関西圏からは、大阪や京都発の特急「サンダーバード」で行くことができる。
どちらも終着は、福井の主要都市・敦賀。しかし今回のプランではあえて一旦通過し、ローカル線に乗り換えて小浜駅を目指す。
小浜までの電車の本数は少なく、待ち時間が発生することも多い。また、乗車してからも到着まで約1時間かかる。
少々不便に感じるかもしれないが、これこそこの旅の醍醐味。
車窓を流れる田舎の風景を眺めたり、本を読んだり、待ち時間には町を少し歩いたり。
そうしてのんびりと過ごしながら小浜へと向かい、徐々に心をほどいていこう。
JR小浜線でのんびりとした旅を
遊覧船で「蘇洞門めぐり」
小浜に着いたら、まずは小浜港にある「若狭フィッシャーマンズ・ワーフ」へ。ここで遊覧船に申し込めば、蘇洞門(そとも)をめぐることができる。
遊覧船
「蘇洞門」とは、日本海の荒波が長い年月をかけて岩を削り出した、約6キロにわたる海蝕洞のこと。奇岩や洞門が続く景観は壮観で、大自然の強大な力を目の当たりにできる。
蘇洞門①
蘇洞門②
「大門・小門」と呼ばれる、洞門の裏側には船着場が用意されており、海が穏やかな日には上陸することができる。
条件は厳しく、年間で2割ほどしか上陸できる日がないとのことだが、僕が訪れたときには、幸運なことに上陸することができた。
間近で見る自然のアートには、ただただ息を飲むばかり。夏の方が海が穏やかで上陸できる確率が高いので、ぜひトライしてみてほしい。
裏側から見える大門・小門
・名称:若狭フィッシャーマンズ・ワーフ
・住所:〒917-0081 福井県小浜市川崎1丁目3-2
・地図:
・営業時間:9時00分~17時00分
・公式サイトURL:https://www.wakasa-fishermans.com/
工芸体験で心を整える
フィッシャーマンズ・ワーフから徒歩5分ほどの「おばま食文化館」の2階には、工芸体験ができる「若狭工房」がある。
ここでは、めのう細工、若狭塗の箸研ぎ、和紙の紙漉き、食品サンプルづくりなど、さまざまな体験ができる。僕は「紙漉き」を選び、はがきを作らせてもらった。
紙を器具で漉き、絵の具や金箔、型紙などで飾りつけをしているうちに、無心で手を動かしている自分に気がつく。手仕事に没頭するその時間は、不思議と心を整えてくれるはず。
紙漉き体験
完成したはがきはお土産に
・名称:若狭工房
・住所:〒917-0081 福井県小浜市川崎3丁目4-4 御食国若狭おばま食文化館 2階
・地図:
・営業時間:9時00分~18時00分
・公式サイトURL:http://wakasa-koubou.com/
町歩きと海岸散歩
夕暮れ時には、西部エリアの「小浜西組重要伝統的建造物群保存地区」を歩くのがおすすめ。
ここには、江戸時代に京都と小浜を結んだ鯖街道の起点として栄えた町並みが、今も残っている。
格子戸の町屋が並ぶ通りに夕陽が差し込む風景は、なんともノスタルジックで、歴史の中を歩いているような気分になれる。
西組の町並み
通りを抜けて「人魚の浜」に出れば、目の前には白い砂浜と若狭湾が広がる。夕陽の絶景スポットとして、地元の人々にも人気のある場所だ。
日本海に沈む夕陽を眺めながら、この地の文化と歴史に思いを馳せ、海岸で本をぱらりとめくる。そんなふうに、一日を締めてみてはいかがだろうか。
日本海に沈む夕陽
・名称:小浜西組重要伝統的建造物群保存地区
・住所:〒917-0056 福井県小浜市小浜大原8
・地図:
・公式サイトURL:http://obama-nishigumi.sakura.ne.jp/
おすすめグルメ「おろし蕎麦」&「ソースカツ丼」
初日にはぜひ、福井名物「おろし蕎麦」と「ソースカツ丼」を。
薄くスライスしたカツを乗せたガッツリ丼か。さっぱりとした味わいが楽しめるおろし蕎麦か。どちらを食べようか悩んだ時には、両方が食べられるセットを注文してみよう。
こってりしたカツ丼を、蕎麦の大根おろしと出汁が中和してくれる。食べ終わった後の満足感は抜群だ。今回は「おばま食文化館」内のレストランで。
おろし蕎麦とソースカツ丼
1日目の読書案内
・角田光代『平凡』
選ばなかった別の人生を思い、心が揺れる人々を描いた短編集。
彼らの物語に身を浸しながら、自分が選んだ生き方を見つめ、そしてこの旅路に思いを馳せてみてほしい。
小浜への長い道中で、ぜひ。
・津村節子『絹扇』
福井出身の作家・津村節子による、明治期の福井の織物産業を支えた女性の物語。
工芸体験と街歩きで文化と歴史を感じた後に、海辺でぱらりとページをめくれば、そこにはきっと深い味わいがあるはず。