旅に出ると、旅のカケラとして必ず持ち帰るものがあります。それは、旅先で出会ったポストカードです。
街中の本屋や美術館、観光地のお土産屋などでよくみかけ、旅の気持ちをおすそ分けしたい相手に送ることができる幸せのペーパーギフト。カードの種類は訪れる場所ごとに無限の数だけあり、土地特有の素敵なポストカードに出会うことができます。
旅の途中で出会った1枚のポストカードをきっかけに、いつしか私の旅のマイルールになりました。
1枚のポストカードとの出会い
きっかけは、マルタ語学留学中でした。友人とたまたま立ち寄ったアートギャラリーのお店で見かけた1枚のポストカード。マルタ島の青く美しいビーチとそこでのんびりと日光浴をしながらビーチタイムを楽しむ人々が写っている何気ない日常の風景。

チェキで撮った写真のように切り取られていて、初めて見るコンパクトな形に胸が高まったのを覚えています。ポストカードは、旅先で手紙を出す人が買うものだと思っていました。だけど、それ以来、その土地の雰囲気が詰まった素敵なポストカードを見つけては、「旅の証」として集めるようになりました。
ポストカードの魅力

旅を重ねて行くうちにポストカードの魅力をさらに感じるようになりました。
軽くてかさばらないことです。旅先ではできるだけ荷物を最小限に抑えたい私にとってお土産はできるだけコンパクトのものがいい。ポストカードだどかさばることなく、場所をとりません。どれだけ荷物が多い時でも少しの隙間に入り込んでくれます。
もうひとつは、価格がお手頃。1枚のポストカードの価格は、約100円〜500円程度。ヨーロッパやどこの国に行ってもこの価格帯は大体一緒で美術館で販売しているものでも1,000円を超えるものになかなか出会ったことがありません。だから、気に入った1枚があれば気軽に手に入れやすいのです。
ユニークで旅心を揺さぶるカードたち
ポストカードはその土地のオリジナルがぎっしり詰め込まれており、個性豊かで、私の中にある旅心を全力で揺さぶってきます。
ギリシャのアテネで出会ったポストカードは、パルテノン神殿を目指す道中のお土産やさんで販売されていました。ギリシャの日常を切り取った温かみのあるユニークなデザイン。街中を歩いてるとふと見かけそうな床屋さんでの日常の1枚。他のお土産やさんでも販売されてなくてつい心が奪われました。

マレーシアに行くための乗り継ぎで降りたウズベキスタンの空港。次の飛行機を待っている時間に空港内のお土産やさんで見つけたカード。時間が足りずに行くことのできなかったウズベキスタン市内が切り取られた美しいポストカード。次訪れた時に行こうと心に決めて購入。

上海では、中国の作家・巴金さんの作品が展示されれている巴金博物館でポストカードを手作りしました。色ごとに分けられたスタンプを重ねて行くと博物館の外観のデザインが浮かび上がってきます。
作り方がよくわらずに戸惑っていると、通りすがりの女性が中国語で手順を教えてくれてました。何を言っているのかはよくわからなかったけど、出来上がったポストカードと見て上海旅行の印象深いひとときになりました。

旅の記憶が日常に溶け込む
旅が終わり、持ち帰ったポストカードの使い方は自由自在。お部屋の壁に飾ったり、本の栞代わりとして持ち歩いたり、自分のトラベルノートに貼り付けて世界マップを作ってみたり、友人の誕生日カードとしてメッセージを添えてプレゼントしたり。
日常に戻り、持ち帰ったポストカードを再び目にするたびに旅の記憶を鮮明に呼び起こしてくれます。旅先で見た景色、食べたもの、感じたもの。
時間が経つにつれ、どれだけ鮮烈だった旅の思い出も少しづつ記憶から色褪せて行くもの。だからこそ、旅のカケラとして日常に落とし込むこと。何度も旅の中にタイムスリップし、思い返す分だけ訪れた場所が愛おしくなります。
そして、ポストカードは今までの旅の思い出だけではなく、次の旅にも出たいという気持ちにさせてくれます。
「次の旅はどこに行こう?」
私は次の1枚を探しに、また旅にでます。

All photos by Yuko Kawahara