ライター

福島県出身で1990年生まれ。70カ国以上を旅するほどの旅好き。コロナ禍では国内を巡り、世界遺産検定マイスターに合格しNPO法人世界遺産アカデミー認定講師に就任。IT系広告代理店で広告運用コンサルタントとして働きながら、小笠原諸島のアンバサダーとしての活動も行う。

夏は好きだが、昨今の都心は暑すぎる。

海外へ飛んでも良かったが、夏旅で選んだ先は、北海道にある利尻島。

北海道の北部、日本海に存在する島のため、冬の時期が長く、行くならベストシーズンの夏だと昔から思っていた。

そこで今回は蒸し暑い都心を抜け出して、心地よい島旅を求めて7月中旬に行くことが決まった。

海を越え、利尻富士が旅のはじまりを告げる

稚内港から利尻島へはフェリーで約1時間40分ほど。

利尻島のシンボルである利尻山が顔を出してきた時は、訪れるものを歓迎しているかのような凛とした佇まいで、さすが日本百名山の1番目に数えられている名峰だなと思った。

フェリーから見えた利尻山。明日私はこの頂上を目指す。
この地での一番の目的は別名「利尻富士」とも呼ばれる利尻山へ登山すること。

翌日の天候は晴れのため、ベストコンディションでの登山となった。

北の大地、標高1,721mへ。利尻山がくれた夏の冒険

日本のほぼ最北限であるこの地での、早朝からの登山は7月中旬とはいえ寒いと感じるほどだった。すぐに脱ぎ着ができるように何枚も服を着込み、鴛泊コース登山口の約200m地点から登山スタートとなった。

登山することを伝えたら、宿のスタッフがメッセージを残してくれていた。
3合目付近には利尻山の雪解け水が湧き出す甘露泉水があり、名前のとおりほのかに「甘い」。

ここから先の水くみ場はないため、念の為に持ち込んだペットボトルに水を補給して、上へ上へと登っていった。

日本百名水にもなっているようだ
雪解け水は冷たくて美味しかった
5〜6合目付近までくると高い背丈の木々はなくなり、低木地帯に入る。そこには地上では見たことがない高山植物がたくさん自生しており、自然のおもしろさを直に感じることができる。

この利尻山のアングルは某CMにも登場していた
そして8合目の長官山で姿を見せてきた利尻山の頂きは、7月ではあるものの多少雪が残っており、最北の地であることを改めて感じた。

更に登っていくと鮮やかな植物が増え、まわりに目を向けながらの登山も非常に楽しかったのも覚えている。これが登山の面白さのひとつでもあるだろう。

景色がよく最高な登山日和だ
そして9合目地点からはまさに正念場。足場が悪く急勾配の道が続くため、細心の注意を払いながら登り続け、到達したのが1,721mの山頂。

天気が味方してくれたため、晴天が広がる中での360度海に囲まれた景色はまさに絶景だったし、頂上に到達した達成感にも溢れていて最高な気分だった。

雲ひとつなく最高な景色を拝めた
頂上で見たローソク岩と高山植物たち
とはいえここは最北限の高地。ゆっくりしているとどんどん寒くなってくるため、この絶景を目に焼き付けて下山を開始した。

全く同じルートを通り、行きは5時間、帰りは4時間の往復9時間の登山は、天気が味方してくれたおかげで最高な形で終えられた。

利尻山(利尻富士)
住所:北海道利尻郡利尻富士町鬼脇

昨日登ったあの頂を、今日は下から見上げる旅

登山翌日は全身筋肉痛に見舞われながらもレンタカーで島を散策。利尻島は利尻山を真ん中にまわりに集落や観光スポットが点在しているため、どこからでもいろんな角度で利尻山を拝めるのが面白い。「昨日はあの山を登ったのか」という充実感もありながらの島内観光だった。

角度が違うと見え方が変わってくる利尻山

湖面に映る利尻富士と自然散策が楽しめる姫沼

姫沼は周囲約800mの人工湖で、湖面に映る利尻山が「逆さ利尻富士」といわれる絶景のポイントでもある。特に綺麗に見られるのは早朝のため、朝一で訪れるのがおすすめ。

「姫沼」の名はヒメマスが放流されていたことに由来しているようだ
周囲は約1kmの遊歩道が整備されているため、登山をしない場合はここでも利尻島の自然を感じることができるため観光客にとっては必見の場所だ。

美しい逆さ利尻富士が拝めた

姫沼
住所:北海道利尻郡利尻富士町鴛泊湾内
アクセス:利尻島鴛泊港から宗谷バス鬼脇行きで約5分、バス停:姫沼入口下車、徒歩約20分

利尻島の表玄関に立つ、眺望の岩山・ペシ岬

標高約93mの岩山の岬は鴛泊港のすぐ隣にある。そのためここでは発着するフェリーをバックに利尻山を見ることができるし、天気が良い日は、隣の礼文島や北海道本土の稚内も見ることができる。夜はここで見る星空も絶景なんだとか。

全身筋肉痛だったため、岩山を登るのは正直しんどかったがいい思い出。
利尻山とフェリーと。鴛泊港を一望できる場所だ。

ペシ岬
住所:北海道利尻郡利尻富士町鴛泊港町
アクセス:鴛泊フェリーターミナルから徒歩10分

誰もが知ってる“あの山”の撮影地、白い恋人の丘

北海道土産の鉄板である白い恋人は食べたことがある人も多いのではないだろうか?あのパッケージに描かれている山はこの利尻山。そして、この付近から見た利尻山が描かれていると言われている。

生憎雲っていたが、これもご愛顧
そのこともあり、ここでプロポーズをし、その際の写真を利尻富士町観光協会へ持参すると、「プロポーズ証明書」がもらえるようで、なんともロマンチックな場所。

白い恋人の丘
住所:北海道利尻郡利尻富士町
アクセス:鴛泊フェリーターミナルから車で35分

見送られる旅の終わり、また来たくなる島のやさしさ

私的に島旅の醍醐味と言ってもいいのではと思うのがこの「お見送り」。

宿泊者も見送りにきてくれた
またの訪れを願い、宿のオーナーや宿泊者が大声をあげながらずっと手を降り続けてくれる姿は、最後の最後まで島の温かさを感じ、またいずれ戻ってこようと心底思えてくる。

なんか寂しいが、次は冬の時期に来たいなと思いを馳せるタイミングでもある。

南国とは違う、利尻島が見せる北の静寂と美しさ

「島」と聞くと、青い海と白い砂浜が広がる南国の風景を思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし、日本最北端に位置する利尻島には、それとはまったく異なる、静かで凛とした美しさが広がっている。

標高1,721メートルの利尻山を中心に、島全体が豊かな高山植物に包まれており、四季の移ろいとともにその表情を変える自然が訪れる人を魅了しているのだ。

高山植物のイブキトラノオ
観光シーズンは初夏から秋口までと短めではあるものの、その間は涼しく爽やかな気候が続き、登山やハイキング、サイクリングなどアウトドアに最適な環境が整っている。

また、島民たちは温かく、訪れた人々に親身に接してくれるので、心からリラックスできる時間が過ごせるだろう。地元の海産物や温泉も楽しみのひとつだ。

「利尻昆布」は有名な名産品だ
普段とは少し違う、静けさと自然の力強さを感じられる島旅。喧騒を離れ、自分と向き合う時間を持つには最適の場所だと思っている。

この夏、あなたも利尻島を旅の目的地に選んでみてはいかがだろうか?

All photos by Tamami Mizunoya

ライター

福島県出身で1990年生まれ。70カ国以上を旅するほどの旅好き。コロナ禍では国内を巡り、世界遺産検定マイスターに合格しNPO法人世界遺産アカデミー認定講師に就任。IT系広告代理店で広告運用コンサルタントとして働きながら、小笠原諸島のアンバサダーとしての活動も行う。

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