喜多桜子さんは、世界一周を二度経験されたトラベルブロガーです。一周目はおひとりで、二周目を夫のほっささんと旅に出られました。おふたりの旅の様子をつづったインスタグラムは、2万人超のフォロワーを抱えているほどの人気アカウントです。
そんな桜子さんは今、campfireでのクラウドファンディングに挑戦中です。クラウドファンディングによって実現されたいのは、世界二周70か国分の幸せの形を集めた旅の本を出版すること。
今回は桜子さんに、出版のテーマや出版に込める想い、桜子さんが「幸せ」をテーマに旅をする理由についてうかがいました。
トラベルブロガーとして、世界のおもしろさを発信する活動をしながら、看護師時代の経験を生かし、介護ベンチャーで創業メンバーとして会社を運営しています。介護ベンチャーの会社を立ち上げ、人が最後まで自分らしく生きるきっかけを生み出している。 これまでに世界2周を達成。24歳で行った1周目の旅の経験は、4刷2万4千部を突破した『僕らの人生を変えた世界一周』編:TABIPPO(いろは出版)に寄稿。2周目は、30歳で夫と運命の出会いをして新婚旅行で達成。また、この旅をきっかけにインスタグラムをスタート。2人旅の様子を発信し続け、フォロワーは2万人になる。
Twitter: @hossakuraworld
Instagram: @hossakuraworld
――まず、桜子さんの自己紹介をお願いします。
喜多桜子と申します。世界一周を2回経験し、70か国200都市を旅してきました。
初めての世界一周は、24歳のときにひとりで。二周目は、30歳のときの新婚旅行でした。
看護師を経て、今は介護ベンチャーで創業メンバーとして会社を運営しています。そこで達成したいのは、おじいちゃんやおばあちゃんが介護施設に入っても最後まで自分らしく生きるきっかけをつくること。VRで世界中の絶景を見ていただいたり、お寿司屋さんに出張してもらってみんなで握りたてのお寿司をいただいたりと、みなさんが楽しめるレクレーションを企画しています。
――桜子さんの旅には、テーマがあるとお聞きしました。
私の旅のテーマは「幸せ」。きっかけは、世界幸福度ランキングの日本の順位の低さに驚いたことでした。
当時の私は、「日本は豊かだし、当然トップ10ぐらいには入ってるでしょ!」と思っていたんですが、日本より貧しい国がどんどんランクインする中で、 日本はまさかの90位。お気楽な生活を送っていた私にとって、あまりにもショックな結果でした。
そしてなにより、私たち日本人よりも貧しいはずなのに、私たちよりも幸せを実感している人たちがいるんだ!ということに驚きました。そんな世界をもっとリアルに見たくて、世界一周の旅に出ることを決めたんです。
そして、70か国200都市を訪れる中で気づいたのは、いろいろな幸せの形があるということでした。
――実際に旅してみないとわからないことってありますよね。
その通り。たとえば現地に行くまで、「モロッコの砂漠=灼熱」というイメージを抱いていました。ですが実際に旅してみると、「砂漠の夜は寒いんだ!」と気づけます。
インターネットが発達したことで、世界中の情報に簡単にアクセスできるようになりました。それでも、まだまだ知らないことはたくさんあります。学生さんから「タイって、街中にゾウが歩いてるんでしょ?」と言われたことも(笑)。
先日、私の家族と夫の家族でハワイに行ったんです。83歳の義祖母は初めての海外旅行で、パスポートの取得も初めての経験でした。
正直、不安もかなり大きかったと思います。でも最終日に「長生きしてよかった」と言ってもらえたときは、私までうれしくて泣いてしまいました。
帰国後は、自分の体力に自信がついたようで、今まで以上に生き生きとして若返った様子でした。「もっといろんな国に行ってみたい」「世界中を旅したくなる気持ちがわかった」「次はオーストラリアに行ってみたい」と次の夢もできて、旅が生きる活力になっている様子です。やっぱり、行ってみないとわからないものですよね。
たまたま旅ができる日本人に生まれて、仕事を辞めても復職しやすい看護師という職業についた私。幸いにも、健康な体とすこしの勇気と決断力があり、二周目においては旅を共にしてくれるパートナーもいました。そんな、旅に出るハードルが低い私が旅をして、旅に出られない方にも情報をお届けしたいと思っています。
――幸せに関して、二度の世界一周を通して気づいたのはどんなことですか。
写真提供:桜子さん
「自分にとっての幸せ」は、いろいろな経験をしない限りわからないということです。
「自分にとっての幸せ」を選び取るには、たくさんの価値観(=選択肢)に触れて、比較対象をもつ必要があります。「自分の理想の生き方」がメキシコの田舎町で景色のいい海辺のツリーハウスに暮らすことだったとしたら、その場所のことを知らなければ、一生その答えにたどり着くことはできません。
私は世界を二周して、70か国200都市分の幸せの形、暮らし方、価値観に出会ってきました。その経験がなければ、自信を持って「私は幸せだ」と言い切れなかったでしょう。
――私も旅をする中で、まさに同じようなことを感じていました。桜子さんは、そのご経験をなぜ、本という形でまとめることにされたのですか。
写真提供/桜子さん
もともと、一人でも多くの方にハッピーをシェアしたいという思いがあったんです。インスタグラムを始めたのも、そのためです。そしてもっと多くの方に広くシェアしたいと考えたとき、自然と本という手段が思い浮かびました。
というのも、私はずっと、本を通して「人の人生」を読み、自分の人生が変わるきっかけをもらってきたからです。看護師になったのはマザーテレサの伝記に感銘を受けたからですし、世界を旅してみたいというワクワク感や世界一周という夢を抱いたのは高橋歩さんの著書からです。本田直之さんと四角大輔さんの共著『モバイルボヘミアン』からは、デュアルライフという生き方の選択肢を知りました。
本は、いつだって私の人生に一歩踏み出すきっかけを与えてくれました。もし、かつての私と同じように幸せが何かわからなくなっている人がいて、私の旅の経験が役に立つのなら、それは今まで私を支え続けてくれた本に対する恩返しにもなると思っています。
本を通して、マザーテレサのように、誰かに幸せを与えられる人になりたい。高橋歩さんや本田直之さん、四角大輔さんのように、誰かの背中を押すことができたら――そう思っています。
――本への恩返し……素敵ですね。詳細はまだこれからだと思うのですが、どんな本になる予定ですか。
世界を二周して見つけたさまざまな幸せの形や暮らし、価値観の全てを詰め込んだ本にしたいと思っています。後悔のない人生を送るヒントがたくさん詰まっていて、読んだ後に思わず「自分にとっての幸せって?」と問いかけたくなる本。
世界を旅する中で、価値観を揺さぶられた出来事がたくさんありました。だから単なる旅行記ではなく、私たちの旅の過程を追体験してもらえるようにしたいと思います。そして旅をする中で生まれた気づきを、世界中で撮影した写真と一緒に掲載します。
幸せの形をシェアするだけでなく、「世界はこんなにも美しいんだ」ということを知ってもらいたい、まるで自分も旅をしているかのような気分になってもらいたいという気持ちもあります。
――桜子さんが価値観を揺さぶられた出来事、気になります!たとえばどんなエピソードを掲載される予定ですか。
写真提供/桜子さん
世界一周中に数か月滞在した、大好きなラオスに行ったときのこと。田んぼと青空しかないような昔話みたいな村で、ある男の子がこんなことを言いました。
「ラオスは便利です」
ラオスは農業大国です。自給自足ができる豊かな自然があるから便利だという意味でしょう。ただ普通に見れば、日本のほうが便利なのは明らかですよね。でも、そういうことじゃないんです。このとき私は「豊かな自然の中で暮らす=幸せ」という新しい選択肢を知りました。
世界を見渡すといろいろな生き方があります。そんな生き方を知ることが、自分の人生を考えるヒントになるのではないでしょうか。
――今回桜子さんは、桜子さん(著者)×ライツ社さん(出版社)×TABIPPO(ウェブメディア)という新たな出版の形に挑戦されます。意気込みや期待、第二弾以降の著者へのメッセージをお願いします。
今回のプロジェクトは「自分の体験を本にしたい旅人」×「旅の本を得意とする出版社(ライツ社)」×「旅人のコミュニティを持つウェブメディア(TABIPPO)」という新しい出版体制の先駆けとなるプロジェクトです。このプロジェクトが成功すれば「旅の本に特化したクラウドファンディング出版」として、出版に挑戦する旅人が増えるでしょう。
私が「幸せ」をテーマにしているように、旅人はみんなそれぞれの想いを持って旅しているはず。このプロジェクトを成功させて次の著者にバトンをつなげ、日本でなかなか学べないような経験や考え方をシェアする旅人が増えればうれしいです。
――この本を、どんな方に届けたいですか。
自分の幸せを考えたいけれどどうしたらいいかわからない方、旅に出たいけど一歩踏み出せない方に読んでほしい。
すこしでも多くの人にとって、「自分にとっての幸せはどんなものだろう」と考えるきっかけになればと願っています。
――では最後に、そんな方々にメッセージをお願いします。
今の時代、人の生き方は多様化するいっぽうです。一生懸命勉強して、いい大学に入って、いい会社で働くことが幸せだとは限りません。だから一人ひとりが「私はどう生きたいんだろう?」と考えなければならなくなったんですよね。
看護師時代、多くの患者さんがおっしゃっていたのは「もっと自分らしい人生を生きればよかった」ということでした。では、自分らしい人生って何でしょう。まずそれをじっくりと考えなければなりません。
その点、旅は人生を考えられる絶好のチャンスだと思います。日本では、本を読んだりイベントに行ったりと、意識的にインプットしないと、ほとんど何も考えることなく生活できてしまいます。でも旅に出ていると、何があるか予測不能。常にインプットの連続なんですよね。旅って実は、「考える」うえでめちゃくちゃコスパがいいということをお伝えしたいです!
――桜子さん、ありがとうございました!プロジェクトの成功をお祈りしています。
Text:西嶋結
Photo:青木良祐