旅が好きで、これまで20カ国以上、60都市をめぐってきました。
異国の風に触れ、知らない街を歩くたびに、自分のなかの「何か」が動き出す感覚が好きです。
それほどに、旅は私にとって欠かせない人生の一部なのですが、今まで行ったすべての旅が「満足!」と思えたわけではありません。
楽しかったはずなのに、どこか物足りなさが残った旅もあれば、特別な出来事があったわけじゃないのに、心がじんわり満たされた旅もありました。
「私にとって、旅の満足度を決めるのは何だろう?」
そんな問いに向き合ったとき、気づいたことがありました。心から満たされる旅には、共通点があるということ。今回は、そんな旅のなかで見えてきた「私を満たしてくれる5つの条件」をまとめてみました。
見出し
私の、満たされた旅にする5つの条件
人それぞれ、旅に求めるものも、旅のスタイルも違います。だからこそ、旅について語り合う時間はとても楽しく、そして奥深いものだと感じます。
私自身、これまで多くの旅を重ねてきて気づいたのが、「満足度の高い旅」には共通するキーワードがあるということ。それは、「余白」「偶然の出会い」「非日常」 という3つです。
そして、私が導き出した“旅を満たされたものにする5つの条件”がこちらです。
2.余白のあるスケジュールであること
3.偶然に出会える「自分とのつながり」があること
4.その土地に生きる人とつながること
5.旅を日常に持ち帰ることができること
この5つの要素がすべてがそろった旅は、時間が経っても色褪せず、心に残り続けていることに気づきました。それぞれの条件がどんな意味を持っているのか、私自身の体験を交えながらご紹介していきますね。
過ごしやすい気候であること
10月の沖縄の気候は、私にとってベストだった
大都会・ソウルで暮らし、寒がりな私にとって、「気候がいいこと」は旅の満足度を大きく左右する、とても大切なポイントです。
子どもが二人いて、守るべき生活リズムがある今の私にとって、旅に出ることは決して気軽なことではありません。
だからこそ、たまに訪れる旅先では、ただ「気持ちよく過ごせる」ことが、私にとって旅の最大の目的でもあります。
空が広くて、青くて、心地よい風が吹いている。そんな場所に立つと、不思議と呼吸が深くなり、心の奥の緊張がゆるんでいきます。
旅先の空気感が、日常では気づかない「今ここ」の感覚を思い出させてくれ、五感から私をやさしく解きほぐしてくれる。
まずはその空気に触れること。そこから、心に少しずつ余白が生まれていきます。
余白のあるスケジュールであること
ゆっくりとお店の人とおしゃべりを楽しむ時間こそ、旅の醍醐味
旅に出るとき、私はいつも「余白」を意識してスケジュールを立てます。その余白こそが、感性を豊かに働かせてくれて、旅の一瞬一瞬を、自分のなかにじんわり染み込ませる時間になるからです。
旅先には、普段とは違う景色、美味しそうな食べ物、行ってみたい場所。
たくさんの「やりたいこと」が溢れています。だからこそ、つい予定を詰め込みたくなってしまう。けれど私はそこをぐっとこらえて、予定をあえて空けておく。
地図も見ずにふらりと歩いていて、たまたま見つけた素敵なカフェに入ったり、ふと立ち寄ったお店でおしゃべりが弾んだり。そんな偶然の出会いや寄り道こそが、私の旅を豊かにしてくれる。
「詰め込まないことで、深く味わえる旅」
それが、私の好きな旅のかたちです。
偶然に出会える「自分とのつながり」を見つけられること
小豆島のエンジェルロードは「八日目の蝉」の舞台となった場所だった
なんの計画も立てずに訪れた旅先で、ふと目にした風景が、小説の一節に描かれていた場所だったとき。友人との何気ない会話に出てきた地名だったとき。あるいは、大好きな映画の舞台だったと気づいたとき。
そんな瞬間に、私は「この場所に導かれてきたのかもしれない」と感じます。偶然出会ったその場所が、自分の大切にしている価値観や、心の奥にしまっていた好きなものと重なったとき、不思議なくらい自分の輪郭がくっきりと見えてくるのです。
「やっぱり、私はこういうものが好きなんだな」
「私にとって大事なのは、こういう時間なんだな」
そんなふうに、自分自身と静かに出会える旅は、何よりも心を満たしてくれます。だから私は、あえて「偶然が入り込む余地」を旅のなかに残しておくようにしています。予定通りにいかない時間が、思いがけず「自分とのつながり」を教えてくれる。そんな旅こそが、私にとって一番豊かな時間の過ごし方でもあります。
その土地に生きる人とつながること
沖縄を「ただいま」といえる場所にしてくれた、沖縄の家族
私にとって、旅先を「知る」ことは、ただ観光する以上に満足感をぐっと高めてくれる大切なポイントです。ガイドブックやネットの情報では感じられない、その土地で暮らす人たちの日常や価値観、普段の食事、彼らの暮らしに触れることが、旅の深みを作ってくれます。
対話を通して心がつながった瞬間、その場所が単なる「観光地」ではなく、自分にとっての特別な「場所」に。そんな体験がある旅は、帰ってからもずっと胸の奥に温かく残り、また訪れたいという気持ちを育ててくれます。
人と人とのつながりが、旅を一生の宝物に変えてくれるのです。
旅を日常に持ち帰ることができること
この形もこの色もきっとどこにもない貝殻
旅が終わっても、心のどこかに余韻が残っている。そんな旅を、私は大切にしています。
買ってきたお土産、旅先で出会った価値観や心の変化。それらは、旅のあともそっと日常に寄り添って、小さな変化をもたらしてくれます。いつもそこにある日常は、旅に行く前となんら変わりがないのかもしれない。それでも心のなかに変化が訪れていたら、その日常さえも見え方が変わっていく。
旅は、私の“今”を少しだけやさしく変えてくれる存在。だからきっと、何度でも出かけたくなる。私にとっての旅は、非日常を楽しむためだけでなく、日常をもっと愛おしく感じるためのものでもあります。
◆参考記事「家庭の殻を破り、9年ぶりに一人旅へ出たママの物語」
旅は十人十色。感じ方も捉え方も人それぞれ
同じ場所に行っても、同じ旅にはならない。だからこそ旅は何度でも新しいし、そのときの自分自身を映す鏡のようでもあります。
そんな自分の心の状態に触れて、新しいものを吸収し、日常に戻ってくる。私にとってはそういうものが「旅」の価値だと捉えています。
あなたが「いい旅だったなあ」と思える瞬間には、どんな要素があるでしょうか?ぜひ、あなたなりの“満たされた旅の条件”も、探してみてくださいね。
All photos by Nodoka Kainuma