旅する美容師の僕は、インドで自閉症の女の子の髪を切った

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(ええことできたな)

一つ行動を自分から起こせば、必ず何かを得られるんだ。そう分かった。

 

お礼にくれた、手づくりのキーホルダー

バイクに乗って帰ろうとすると彼女が追いかけてきて、「お礼に」と、手づくりのキーホルダーをくれた。

(この人たちは、普段はきっとタダで髪を切っているはず。俺のカットに価値を感じてくれたんや…)

その女性の気持ちが嬉しくて、涙ぐんだ。

 

始まった、世界一周チョキチョキ旅

こうして始まった、俺の世界一周チョキチョキ旅。

宿に着き、ビールやワインを片手に積もる話で盛り上がる。それから、旅人と情報を交換し、髪を切る。夜は宿のスタッフたちの髪をぶった切る。その繰り返し。

 

髪を切りながら、いろいろな話をする。人間に対する接し方、人生観、生き方、刺激たっぷり…。

まだ会って一日なのに、髪を触っているからなのか、なんだか心の奥まで通い合えたような出逢いもあった。「美容師でよかった」と何度も思わせてもらった。

 

中国の元陽という街。「ニーシャーリーファーマー?(髪切りませんかー?)」カタコトで言うと、そこら中の子どもが珍しそうに寄ってきた。

カットの後は折り紙教室。飛行機、鶴、覚えたてのパクパクパックン。

 

走る美容室でアメリカ横断

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photo by Blake Verdoorn

アメリカでは、キャンピングカーを借りて横断した。「ワンピース号」と名づけたその車が、俺の美容室になった。

ロサンゼルスの近くの海の街、サンタモニカ。

ワンピース号をビーチ沿いのパーキングに、ドンと停める。それから、でっかい日本の旗を掲げ、張り紙を貼る。
ビーチで遊んでいる人が食いつく!食いつく!

警察に怒られるかも…と心配したけど、 LA のポリスマン、近くに来て、なんとなんと親指立てて「グー!」のサイン。

 

ワンピース号の背中に乗って、髪を切る。目の前には真っ青なビーチ。聞こえるのは、ウクレレの音、波の音、そしてハサミの音。

ニューヨークの美容師が二人、カットしにきてくれた。

「You guys fuck’n cool !(お前ら、最高だ!)」
「最高にかっこいいことやってるよ!!」

(あ〜、俺、間違ったことしてないな)それからも、世界中で髪を切り続けた。

 

ハサミだけは盗られなくてよかった

グランドキャニオンの絶景を見下ろしながら髪を切った。イースター島では、モアイの視線を熱く浴びながら切った。

夕日に包まれながら、サハラ砂漠の真ん中でも切った。けど、日が沈んで見えなくなって、途中で終わっちゃった。

 

コロンビアで、あり金を全部盗られた。誕生日にもらったウイスキーも、買ったばかりのタンブラーも。でも、ハサミだけはあった。盗られなくて本当に良かった。

その夜も、いつものように宿で旅人の髪を切った。そして、俺の人生を変えたのは、旅に出て5ヵ月目のこと、インドのコルコタという街だった。

ここには、マザー・テレサがその身を捧げた施設として有名な「マザーハウス」がある。みんなそこにボランティアに行くらしい。

 

(あんまりボランティア精神のない俺やけど、髪も切れるらしいから行ってみるか)軽い気持ちでハサミを持って、ボランティアに参加した。

俺が行ったのは「ハンディキャップを持つ子どもの家」だった。

その日は誕生日会らしく、子どもたちの笑い声でいっぱい。一人ずつ廊下の踊り場に呼んで、髪を切る。暴れる子、泣く子、…子どものあやし方が分からん俺にはめちゃくちゃ難しいカットやった。

ふと、群がる子どもたちの間から、机に伏せたまま動かない、女の子の姿が目に入ってきた。誕生日会の間ずっと…、3時間くらいは伏せていたのか?

 

自閉症の女の子の髪を切る

俺「あの女の子はどないしたん ??」
スタッフ「あの女の子は重い自閉症で、一人で立つことも、歩くこともできない。話すこともできない」

俺は、なぜかすぐさまこう答えていた。

「あの女の子の髪、切りたい!」

スタッフの女性に思いを伝え、二人がかりでその子の肩を支えて、踊り場まで連れてくる。イスに座っても、彼女はずっと下を向いたまま。

目も合わせようとしない。話しかけても無反応だ。スタッフに女の子の肩を押さえてもらう。

 

もらえたのは、声にならない thank you.

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photo by Joanna Kosinska

「ズサッ!」伸びきった髪を肩ラインで一直線にカットした。肩をポンポンと叩き、鏡を見せる。

 

笑った。そんで俺の顔を見て、声は出ていないけど「サンキュ」って。

それだけじゃない!自分の足で、立った!今まで立つこともできなかった子が、俺の手を取って、「手をつないで散歩しよう」って!

…さすがに泣けた。(髪を切ることって、その人の人生変えられるんちゃうか?)そう気づけた出来事だった。

 

「ありがとう!乾杯!」と4回叫んだ

旅の終わりは韓国。そこから日本行きのフェリーに乗り、荷物だけ置いて甲板へ。最後の夜は一人でいたい。誰もいない。日本の方から吹いてくる風が気持ちいい。

 

ビールを買い、空に向かって「乾杯!」東西南北、向き直し、世界中で出会った人たちに4回叫んだ。

涙くらい出るんかな?とか思っていたけど、出てきたのは、足の裏から頭の先にうじ虫が湧くようなこれからの自分へのゾクゾクだった。

 

帰国後、俺はある美容室の店長を2年半務め、30 歳で自分の美容室「Broccoli Playhair」を立ち上げた。コンセプトは「お客様と美容師という距離のない場所」。

俺の店にお客様はいない、接客はしない。どうせなら一円も落とさなくても来れる美容室にしたかった。髪を切らない時でも、コーヒーだけ飲みにきてくれてもいい。

ハンモックに揺られながら、漫画を読むだけでもいい。初めて来た人も帰る時には、一歩近づいて、仲間になって、その人の人生に少しでも触れられるように。

 

美容師は、髪を切ることで人の人生を変えられる。技術はあって当たり前、その上で何ができるかだと思う。

世界一周なんて、まったく興味なかった。でも、それでもよかった。海外の楽しさ、世界の大きさに気づけた。自分のことが、ちょっとだけ分かった。

マザーハウスでの経験、世界中の人たちが喜んでくれた顔。ハサミを持っているだけで英語が話せるようになり、人見知りがなくなり…、ハサミがあればなんでもできた。

 

俺が世界一周に出た意味って

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photo by Danka & Peter

この旅で、自分がどう成長したかなんてわからない。

「世界一周って何?」って聞かれたら、「遊び」って答えるし。ただ、旅に出る前にあんなに不完全燃焼だった自分が、「美容師」というこの仕事が好きで好きで仕方ないってこと。

髪を切ることは、人生を変えること。そんなふうにまで、思えていること。それだけで、世界一周に出た意味があったと思うんだ。

 

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TABIPPO.NET編集部
若者が旅する文化を創る!
全員が世界一周を経験したメンバーが学⽣時代に作った組織がTABIPPOです。設立して4年半、2014年4⽉に株式会社になりました。とにかく旅が好きで、たくさんの人に旅を広めたいと思っ…

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