スペイン。失業率50%の国。
だけど、人々はBARで生ハムとお酒を嗜み、談笑している。
日本の就職難とは比較にならないくらい悪い状況なのに、皆明るく、毎日が楽しそうだ。
イスラエル。首都エルサレムには、ユダヤ教正統派が住む地域がある。
そこにはなんと、一生働かなくても 税金のみで生きていけるという制度があるらしい。
一方、パレスチナ自治区。
西岸地区で、現地の大学生に町を案内してもらった。銃を持ったイスラエル兵が自分たちを目で追っている。大きな鉄製の検問所をくぐる。
私は素通りできたのに、パレスチナ人の彼は、まるで日常であるかのように嫌がらせを受けていた。
なんと声をかけていいのか、私には分からなかった。
人の生きる環境は、 どこまでも多様で不平等であることを思い知らされた。
砂漠の宿で数えた流れ星
「砂漠の宿で泊まらないか?」
インドの砂漠の街で、そう言ってきた客引きと仲良くなり、気づけば、お誘いの言葉は、「砂漠の宿で働かないか?」に変わっていた。
約2週間、毎日ラクダに乗って、砂丘で夕日を拝む。
夜は宿泊者と話したり、スタッフとお酒を飲んで語り明かす。「また停電か」と言いつつも、天の川を見上げ、流れ星を数える。
宿の人は真面目で努力家で、度が過ぎるほどのお人好し。
みんな貧しくて学校に通えずとも、自分の村を豊かにしたいという気持ちで、宿を経営していた。そんな彼らが大好きだった。
行動を起こすことは、奇跡を起こすこと
別れ際、寂しい気持ちと出逢えた奇跡への感謝が入り交じる。
(絶対、もう一度戻ってくるから)
今、この世界には約80億もの人間がいて、その大半が生まれてから死ぬまで、同じ場所に居続けるしかない人たち。
それでも、私のことを大切にしてくれる彼らと出逢えたのは、私が世界一周すると決めたから。
「行動を起こすことは、奇跡を起こすことなんじゃないかな」
何か新しいことを始める度に、今も意識する。
線路沿いのバングラデシュのスラム街
インドから、お隣にあるバングラデシュへ。
アジア最貧国と呼ばれる国の電車の車窓から見えるのは、立ち並ぶボロボロの家屋と、そこに暮らす人たち。
それは、窓から手を伸ばせば届いてしまう距離にある。
多くの国に、スラムは存在した。けれど、線路沿いにここまで広がるスラムを見たのは、 バングラデシュが初めてだった。
電車が来ると、人々はひとまず脇に逸れ、通り過ぎると、何事もなかったかのように人の動きが再開する。
子どもにとっても、線路が遊び場。平均台みたいにレールを渡り歩き、クリケットをして遊ぶ。
外国人がカメラを持っていれば、子どもが集まり、「撮って撮って」とねだってくる。
遊んでいる子どものはしゃぎっぷりは、世界共通だと思う。
だけど、客観的にここの子どもたちの未来を考えると どうしても行く末が明るいとは思えなかった。
(学校に通っているのかな。病気になったらどうするのかな。将来、この子たちは、どうやって食べていくのかな)
しかし私は、ただの大学生で、ただの旅人で、 ただの傍観者にしかなり得なかった。
上手に消化できない気持ちを抱えたまま、私はある場所へと向かった。
ノーベル平和賞を受賞した銀行
グラミン銀行。
首都ダッカにある、ノーベル平和賞を受賞した銀行。
貧困をなくすことを目的に設立されたこの銀行は、世界でも珍しい、貧困層を対象にした無担保融資を行っている。
お金を貸すだけではなく、教育や保健などの社会サービス、農村の女性の自立支援まで。
3週間と短期間だったけど、 私はグラミン銀行が主催するプログラムに参加した。
本部や村の支部を見て回ったり、融資を受けている農村の女性と話すことができた。
私も、「希望」そのものをつくりたい
ボロボロのサリーを着て、わらの家に住む女性が、目にしわを寄せて大きく笑う。
「今は貧しいけどね、いつか日本も追い越してみせるんだから」
その言葉に、私のもやもやは消化された。
その女性の光が宿った目を見て、思った。
(人は未来への希望をエネルギーに変えて、生きられる。希望の有無が、人を大きく左右するんじゃないか)
そして、その「希望」そのものをつくり、国や人を変え、世界中に影響を与えた銀行に直に触れてみて、自分も社会を良くする一部になりたいと、強く思った。
何も変わらない毎日の中で、変われたのは、私
9ヵ月間の世界一周。
一生に一度見れるかどうか分からない光景を巡る日が、300日も続く日々。
その旅を終え、帰ったら、住所は固定され、身分も戻る。帰国の夜、私はひどく緊張した。
だけど、大丈夫だった。
「明るくなったね」。
帰国後、たくさんの知人にそう言われるようになった。自分の居場所が、社会が、心地いいなって感じている。
自分の居場所が、自分の国が、すごく好き。
(日本は何も変わっていないのに。変われたのは、私だ)
日本の愚痴ばかりこぼしてきた自分。
青い鳥を捕まえるみたいに、幸せになれる場所を探しにいった。
だけど結局、日本より良い場所はどこにもなかった。マクドナルドの店員が、あんなに笑っている。
ジーンズの後ろポケットに無造作に財布を入れていたって、誰かに盗まれることはない。
義理深いサラリーマンが、日々会社に向かっている。
信頼のある日本円とパスポートを持って、海を越えられる。
病気で苦しんだとしても、治療できる環境が整っている。大切な家族と、友達がいる。
(今在るものを大切に抱きしめていたいし、守っていきたい。もし欠けてきたとしても、文句を言うのではなく、私自身が誰かの希望になれるように、補っていきたい)
大好きな場所で、今の私にできること
現在、私は、日本の社会問題を解決したくて、とある NPO でインターンをしている。
日本では、2週間に1人、0歳の赤ちゃんが虐待によって命を落としている。
その現状を解決し、すべての赤ちゃんが適切な養育環境の下に置かれるための事業の立ち上げに携わっている。
世界一周に出たい!でも勇気が出せない。そんなあなたへ
いかがでしたか?
今回の世界一周ストーリーを掲載している書籍では、15名の感動ストーリーだけではなく、一緒に本を作成した世界一周者50名のお土産話やアンケート、世界の瞬間PHOTOなど世界一周経験者の想いが詰めこまれています。
「世界一周して人生が変わる?」
これは、あなたが本当に実感できるかどうか分からないかもしれません。ただ、少なからず私たち50名の人生は、世界一周がきっかけで変わりました。
この想いをあなたにも感じて欲しい。そしてこの本をきっかけに、旅に出てくれたらもっと嬉しいです。
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