現地の食材のみで作る魂をこめたラーメン
後日、ラーメンの仕入れから仕込み、そして営業まで密着させていただきました。
── 普段はどこで仕入れされてるんですか?
クニさん: 地元の市場で、肉や野菜、調味料などすべて仕入れています。麺についてはプノンペンに製麺所があって、そこから最高の麺を入れてもらっていますね。
── クニさんってめっちゃ挨拶されますね。
クニさん: 挨拶は大事ですからね。現地の言葉で完璧なコミュニケーションとまではいかなくても、挨拶はできますから。ご近所さんからしたら、突然言語の分からない外国人の家族が引っ越してきたわけじゃないですか。笑顔で挨拶してくれたら、「この人は悪い人ではなさそうだな」って思うじゃない。そうやっていい関係をお店の人や近所の人と築けたら気持ちいいよね。でも、カンボジアの人は優しくて、僕らが来て1週間くらいでお金貸してくれたりするんだよ。ビックリだよね(笑)。
── 1週間で借金?!それはビックリですね!それだけ信頼されている証拠だと思います。
クニさん: そうだと嬉しいな(笑)。でも、そうやって現地の人や土地をリスペクトしてるから、ラーメンにも思いを込めたいんだよね。だから、僕のラーメンのこだわりは、「現地で手に入る食材のみで作る」こと。やっぱり国によって水も違えば、肉の味も野菜の香りも全然違う。だから国を変えるたびに、レシピを全部1から作り直さないといけない。大変なんだけど……これが楽しいんだよね。
── 全部1から!具体的にどうやって味を決めるんですか?
クニさん: とりあえず、市場にある全部の肉の種類と部位を買って、ひたすら試していくんですよ。豚・牛・鶏の全部の部位をね。豚の頭を数十個買ってスープ作ったりとか(笑)。例えば、ジョージアではお肉自体の旨味がすごかったから、あえて野菜を減らして肉を前面に出した。ここカンボジアでは、豚の「拳骨(げんこつ)」がいい味を出すから、それをベースにした豚骨家系ラーメンにしたり。ひたすら自分の舌を信じて、妻にも味見してもらいながら、お客様に提供できるラーメンができるって感じですね。カンボジアでは、到着して3日目にラーメンが完成したんで、その日の夜にオープンしたんですよ。そしたら30名くらい来てくださって、すぐに完売しました(笑)。
── たった3日で?!モロッコでは2年かかったのに、凄まじい進化ですね。
クニさん: あはは、確かに(笑)。もちろん「完成」と言っても正解はないから、今も醤油の種類を変えてみたり改良を重ねています。ただ、ド素人から独学でやってきた分、独自のノウハウが確立されてきたんだと思います。実は海外にある日本食レストランのラーメン・コンサルもしていて、それも含めるとラーメン作りは5ヵ国目。これまでの旅の経験すべてが、この一杯に活きてますね。ありがたいことに、カンボジアに来てからすでにいくつかオファーもいただいてるので、新しく多拠点展開も挑戦できたらって考えてます。
── 常に新しい形に挑戦し続ける。その原動力はどこから来るのでしょうか?
クニさん:僕ら家族は「地球RPG家族」って名乗ってるんですけど、まさに人生をRPGゲーム感覚で生きているんですよ。新しい拠点に移動し、新たなクエストを見つけて、家族で挑戦してクリアする。この生き方が楽しいから、旅もラーメン作りも続けているんだと思います。
── 人生が冒険ということですね。素敵なお話をありがとうございました!
クニさん: こちらこそ、ありがとうございました!
【編集後記】旅とラーメン好きには至高の体験
僕も実際にラーメンをいただきました。
正直、日本で食べるラーメンと遜色ない……いや、それ以上の衝撃でした。
海外で食べるラーメンは、どうしても「どこか違うな」だったり、美味しくても値段が高いということが多いのですが、Kuni’s ramenは違いました。
何より驚きなのは、この味がすべてカンボジアの現地の食材だけで作られているということ。
ラーメンができるまでの背景、食材への執念、仕入れから仕込みまでの一連の流れを教えてもらってからスープを啜ると、また違った美味しさが込み上げてきました。
それは、「優秀なガイドさんの解説を聞きながら観光地を巡ると、理解度と感動がグッと増す感覚」に近いかもしれません。
プロのラーメン作りを間近で見られたのも、ラーメン好きとしてたまらない経験でした。
19年間旅を続ける家族が経営している、4大陸を股にかける世界で唯一のラーメン屋「Kuni’s ramen」。
僕がアンコールワットよりも優先した理由が少しでも伝われば嬉しいです。
カンボジアのシェムリアップへ行く際は、このアツい一杯を体験しに行ってみてください。
最後にインタビューを受けて下さったクニさん、エツコさん、そして、ルリさん、リナさん、レナンさん。本当にありがとうございました!
・名称:Kuni’s Ramen
・都市:シェムリアップ
・地図:
All photos by Takanori Muneishi