ライター
吉川 大智 ソムリエライター

世界40ヶ国200都市の酒場とワイナリーを旅した元バーテンダー。 ワインバーのマネージャーを経て、現在多数のメディアにてコラムやエッセイを執筆するライターとして活動中。JSA認定ソムリエ。 日光浴と散歩が生きがい。

こんにちは。「旅×酒」をテーマに、おいしいお酒を求めて40ヶ国200都市を巡ったソムリエの吉川大智です。今回は、日本ではマイナーだけどローカルに愛されている地酒を紹介するシリーズ第1弾をお届けします。

記念すべき1回目はボリビアの蒸留酒「シンガニ」です。ウユニ塩湖やワイナポトシなど、旅人の間では有名な観光スポットであるボリビアですが、ボリビアの地元民に愛される地酒「シンガニ」を知っている方はまだまだ少ないのでは……!?

ボリビアの蒸留酒、「シンガニ」のつくり方やおいしい飲み方を解説していきます。

ボリビアの蒸留酒「シンガニ」ってどんなお酒?


photo by unsplush
シンガニはボリビアで生産された「マスカット・オブ・アレキサンドリア」というぶどうを使ってつくられる蒸留酒です。マスカット・オブ・アレキサンドリアはマスカット特有の甘い香りが強いぶどうで、アロマティックな芳香が特徴。

収穫したあとすぐに圧搾・発酵させて蒸留します。一度は70%前後のアルコール度数になりますが、その後加水して40%の度数に調整します。

味わいは無味に近く、ぶどうの絞りカスでつくられるイタリアのグラッパやフランスのマールに似ています。しかしシンガニはぶどうの絞りカスではなく、ぶどうの実から直接発酵・蒸留させているので、他の蒸留酒に比べて香りが抜群に良いです。

ボリビアの、特にアンデス地域の庶民に古くから親しまれている地酒で、ローカルの居酒屋で出てくるサワーなどは、シンガニがベースになっていることが多くなっています。

「シンガニ」のおいしい飲み方


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シンガニは基本的には無味なので、ローカルの居酒屋や屋台では、レモンやライムを搾った炭酸割りが主流です。香りを楽しむならロックでいくのもいいですが、シンガニベースのカクテルも簡単につくれるのでおすすめです。

シンガニベースのカクテル

・チュフライ
シンガニとジンジャエールを混ぜて作るロングカクテル。地元の人に最も愛されているカクテルです。ジンジャエールだけでなく、場所によってはスプライトやセブンアップを混ぜることもあります。シンガニの割合を少なくすれば、お酒が苦手な人でも非常に飲みやすいカクテルになります。

・ユンゲニョ
シンガニとオレンジジュースを混ぜたカクテル。バーではシェイクで提供されることも。度数は高めですが、シンガニの甘い香りとオレンジジュースのさわやかな飲み口でスイスイ飲めてしまうカクテルです。

・テコンテ
温かい紅茶にシンガニを入れたホットカクテル。ボリビアの冬の寒さは厳しいですが、テコンテを飲むと体の中から温まります。ぼくが現地で飲んだときは、シナモンスティックがささっていて香りが最高でした。

「シンガニ」は日本で楽しめる?


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あまり日本では流通していない印象のシンガニですが、実はシンガニを提供するバーが少しずつ増えているんです。日本で飲めるお店は「BAR TIMES(バータイムズ)」さんで紹介されているのでぜひチェックしてみてください。

また、Amazonや楽天といった大手のECサイトでもシンガニを扱っているので、ボリビアに思いを馳せながら自宅で飲むのもいいかもしれませんね。

「シンガニ」と旅。冷え切った身体に染みる「テコンテ」

ぼくがはじめてシンガニと出会ったのは、ボリビアのラパスに滞在していたときのこと。

当時2月。夜の気温は3℃くらいに下がっていて、ぶるぶると震えながら近くの食堂に入りました。震えた手でメニューを取り、注文するごはんを迷っていたら、無愛想なおばちゃんがホットティーを出してくれました。ドンッと音がなるくらいテーブルに叩きつけられたホットティーは、既に4分の1くらいこぼれていました。

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(頼んでないけど……う、うれしい……)と思い「グラシアス(ありがとう)!」と伝えましたが、おばちゃんは気にせず、無言でテレビを見ています。まぁ、長旅ではよくあるシーンです。

さっそく一口飲むと、ただの紅茶ではありませんでした。お酒がしっかり入っていて、胃の中がじんわりと温かくなっていくのを感じます。アルコール度数は強く、多分半分くらいはシンガニが入っていたのでしょう。それがシンガニベースのホットカクテル「テコンテ」だと知ったのはだいぶ後のことでした。

テコンテで手と体を温めながら、すきま風が吹きつける席でご飯が出てくるのを待っている時間は、忘れられません。そしててっきりおばちゃんの好意でいただいたと思っていたテコンテは、しっかりお会計に入っていました。(200円ほど)

でもホットカクテルでほろ酔いになったこともあり、気持ちよくお金を払って食堂を後にしました。

次の日の晩もその食堂へいくと、おばちゃんはまた無言でテコンテを出してくれました。昨晩よりもさらにアルコール度数を強く感じましたが、これまた冷え切った身体に五臓六腑に染み渡り、くせになる感覚です。

おばちゃんはぼくを見て少しニヤついています。テコンテでおばちゃんとの距離がちょっと縮まった、ラパスの夜でした。

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吉川 大智 ソムリエライター

世界40ヶ国200都市の酒場とワイナリーを旅した元バーテンダー。 ワインバーのマネージャーを経て、現在多数のメディアにてコラムやエッセイを執筆するライターとして活動中。JSA認定ソムリエ。 日光浴と散歩が生きがい。

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